海賊とよばれた男(ネタバレします)

 映画「海賊とよばれた男」を観ました。原作を読んだのがもう3年前、その時レビューを書いたら、「映画もいいよ」と勧められたのに、結構時間が経ってしまいました。既に原作の記憶もそぞろです。


 原作に忠実に始まってくれましたが、流石に原作のボリュームをすべて盛り込めるはずもなく、特に後半は大雑把に仕上げた感じがしました。そうした中で、旧海軍のタンクの底に溜まった石油を汲みだす仕事の描写がものすごくいい感じでした。


 国岡商店は出光興産がモデルですから、もちろん石油製品の販売をしています。しかしながら、戦時中は統制会社が石油を仕切っており、戦後になるとさらにその上にGHQが出て来て、石油に関わる仕事はありません。仕方なく、ラジオの修理で食いつなぐ国岡商店ですが、石油統制会社がGHQに石油輸入を懇願すると、GHQは「旧海軍のタンクの底にまだたくさんあるだろう」と言い、それらを全部くみ上げて使ってからなら石油を輸入しても良いと吹っ掛けます。


 統制会社の担当者が「国岡商店なら」と依頼すると、国岡店主(国岡商店では社長のことを店主と呼ぶ)だけではなく、社員も「石油の仕事ができる」と大喜びです。しかし実際に旧海軍タンクの底に入ってみると、ヘドロや雨水の混ざった石油でタンク内は大変な悪臭でした。雇った人足も逃げ出し、従業員も値を上げますが、この事業が完了しないと日本に石油が入ってこないので、国岡店主はそれでもやれと命じます。社員は奮起し、人足をあてにすることなく自らタンクに入って作業を始めることになりますが、最終的にはやっぱり石油の仕事が出来ることに喜びを感じているようでした。


 このシーンで自分の仕事に対する姿勢を反省させられました。とてつもない悪条件でも、仕事ができる喜びを感じている社員がいるなんてすばらしいですね。我々はと言えば、仕事に取り組むにしても、アレがないコレがない、コンプライアンスやらいろいろ持ち出してやらない言い訳を並べてしまいがちです。経営者としては、「やっても儲からない」が錦の御旗になってしまうこともあります。もちろん、儲からないのは良くないのですが、それ以上に大義があるかどうかという所は、もっと考えないといけません。


 何より、悪条件にめげず、働くことに喜びを見出した戦後の日本人は凄いなと思わされました。

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