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【第1回】アメリカのトレーナー現場を紐解く~1年間のインターンシップを通して感じた4つのポイント~

はじめに
 2017年12月16日、私が学生トレーナーとしてインターンシップ実習をさせていただいているTexas A&M大学commerce校のアメリカンフットボールチームがNational Champion(全米1位)になるという快挙を成し遂げました。

 1年間という僅かなインターンシップ実習の中で、その快挙を成し遂げたチームに2017年8月から帯同し、幸運にもNational Championship game(全米1位決定戦)まで帯同するという貴重な経験をさせていただきました。

 今回のブログではそんな経験の中で感じたアメリカの現場の特徴、特に大学スポーツの現場についてお伝えしたいと思います。

※National Championになった時の様子

第1章 精錬された大学スポーツ制度
 まず、アメリカのトレーナー現場を紐解くにあたり、大学スポーツについて焦点を当てたいと思います。アメリカの大学スポーツにおいて、抜きにしては語れないのがNational Collegiate Athletic Association(全米大学体育協会:以下NCAA)です。

 NCAAはアメリカンフットボールを始め、バスケットボール、野球、バレー、テニスなど24の大学スポーツを統括している組織です。現在は1,117もの大学がNCAAに所属し、NCAAが定めた規則に従って競技を行っています。

 競技のルールはもちろん、練習期間の規制であったり、学業成績不振者の練習参加禁止などNCAAによる統括は多岐に渡り、事細かにマニュアルに記載されています。

 例えば、アメリカンフットボールの練習について取り上げてみると、レギュラーシーズンの一番最初の試合の5週間前からチームとしての練習が可能になります。

 レギュラーシーズンは9月上旬から試合が行われるので、おおよそ8月上旬からチーム練習が可能になるわけです。そして、9月上旬から11月中旬ぐらいまでほぼ毎週土曜日に試合が行われます。練習はプレイオフゲームに進出できればプレイオフゲームで敗れる、または、優勝するまで行われます。もちろん、プレイオフゲームに進出できなければその時点で練習はできなくなります。

 Spring Footballと言って2月中旬から3月中旬まで約1か月ほどシーズンとは別にチームとして練習をすることが許可されている期間がありますが、対外試合も禁止されていたり練習時間も限られているためチームとして充分に練習できるのはほぼシーズン中のみと言えます。

 練習時間についてはNCAAのマニュアルの中で下記のように定められています。

 つまり、シーズン中であっても、1日4時間まで、1週間に合計で20時間までしか練習をしてはならないわけです。これはどの競技であっても同じです。それに加え、レギュラーシーズン中は週に最低1日は競技に関わることのすべてのことを行わない完全休養日を設けなければなりません。

 これらは学業が学生の本分であるという考えに基づいたルールなのです。本当に限られた時間しか練習ができないということが分かると思います。

 他にも様々なルールが事細かに定められています。もっと詳しく知りたいという方は下記のリンクよりマニュアルを参照なさってください。https://www.ncaapublications.com/s-13-Manuals.aspx

 そして、次に特筆すべきなのがDivisionと言われる制度です。NCAAに加入している大学は、大学の競技レベルと資金力によってDivisionI,DivisionII,DivisionIIIに振り分けられています。DivisionIの大学ほど資金力、奨学金の額も多く、競技レベルも高いです。また、基本的にDivisionを跨いで試合を行うことはなく、同じDivision内の大学と対戦し順位を争います。

 つまり、DivisionI,II,IIIのそれぞれのDivisionでNational Champion(全米1位)を決めるというわけです。それぞれのNational Championが対戦することもありませんし、National ChampionになったからといってDivisionが変わることもありません。

 私の大学はその中のDivisionIIに所属しており、冒頭で述べたように私の大学のアメフトチームはDivisionIIの2017年National Championになったというわけです。同じスポーツから同じ年に3チームもNational Championが決まるというのは少し不思議のような気もしますが、これがアメリカの大学スポーツの制度なのです。

※上の表は各Divisionの統計的特徴をまとめたもの

 ここで取り上げたことはアメリカの洗練された大学スポーツ制度のごく一部に過ぎないと思います。様々な面で他の国を凌駕する制度を整えていると言っても過言ではないかもしれません。こうした仕組みづくりは大学スポーツをビジネスとして成り立たせるものとして不可欠であり、アメリカが優れている点だと思います。

To be continued...

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