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女性の政治参画は、沈みゆく日本のゲームチェンジャーとなるか

ゲームチェンジャーとは・・・

物事の状況や流れを一変させる個人や企業、プロダクト、アイデアのこと。
もともとは、野球などのスポーツの試合(ゲーム)で、途中出場して勝負の流れを変えてしまう選手のことを指した。

ビジネスの世界においては、新たなアプローチ、新たなアイデア、新たな技術といった、今までになかった強みを持ち、ひとたびゲームチェンジャーが現れると、業界全体に大きな変化がもたらされ、既存企業は窮地に追い込まれ、参入を阻止することもよくあるが、その壁を突破した先に与える社会全体へのインパクトは計り知れない

近年では、インターネットの普及、AIやビッグデータなどの技術革新がゲームチェンジャーになることが多いが、より原始的な話をすれば、言葉や文字の発明や、狩猟から耕作への変化も一つのゲームチェンジャーであり、気候変動などの要因が関係することも少なくない。

転じて、政治の世界に目を移すと、旧来型の個人や勢力、考え方や手法がどんどん力を高め、新規参集を許す余地はほぼ無い。先日、イェール大学助教授の成田悠輔さんの「22世紀の民主主義」を読んだが、日本の、いや世界的にも選挙を通じた民主主義が機能していないことを改めて感じた。成田さんは無意識民主主義を提唱され、「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」という、さすがデータ科学者としての視点から興味深いゲームチェンジの方法を示唆してくれる内容だった。※今回の本題ではないので、詳しく知りたい方は著書をお読みください。

成田さんの考えにハッと気づかされたのは確かだが、著書のタイトルにもあるように、22世紀つまり100年後には実現しているかもしれないけれど・・・という長期的な視点での民主主義の再構築の可能性を示しているものの、日本の近い将来に対する強い危機感を持つ私としては、今すぐに日本の民主主義や政治そのものを変化させうるゲームチェンジャーの必要性を感じている

女性の政治参画は、日本のゲームチェンジャーとなるか

さて、ここからが本題です。
私もほんの少しだけ関っている「村上財団パブリックリーダー塾」が募集を開始しました。その目的に、

世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数2022によれば、日本のジェンダー平等は146か国中116位と先進国最低レベルです。多様化する社会には多様なリーダーが必要であり、ジェンダー平等において大きく遅れを取っている日本には、今こそ女性のパブリックリーダーが求められています
村上財団では、日本の社会課題に正面から取り組む志をもった女性たちに対し、経済的支援、実践的な学習機会、そして志を同じくする女性参加者同士のコミュニティを構築することで、次世代を担う女性政治家を輩出し、日本の社会的課題の解決とジェンダーギャップ解消を目指して参ります。

として、10代、20代、30代の女性が政治参画すること後押しするメニューとなっています。豪華な講師陣に加え、優秀な成績を収めた方には資金面での支援もあるとのこと。また、講師陣は超党派で編成されており、これまでの政治塾とは一線を画す超本気のプログラムであることが分かります。

https://murakamizaidan.jp/public-leaders-academy/

女性活躍が叫ばれて久しい日本ですが、その日本の法律(ルール)を決める政治分野における女性の政治参画はあまりにも遅れていることは皆さんご承知の通りです。
では、女性の能力が政治に向いていないのでしょうか。
答えはNOです。

私は、都議会において女性2人と一緒に会派を組んでいましたが、私には気付かないような視点からの政策提言や(無駄な)政治闘争を避けるコミュニケーションなど、男性の私よりも政治に向いていると感じる場面も多々ありました。
また、都議会では、小池百合子知事の登場とともに議会の女性比率がぐっと引きあがり、それによって子育て施策が強力に推進されたり、あるいは子育てと両立できる議会ルールや慣習の見直しが進むなど、社会にとって良い影響がいくつもありました。

こうしたエピソード一つをとっても女性が政治を変えるゲームチェンジャーになりえることは明らかですが、村上財団パブリックリーダー塾では、女性が政治参画するポジティブインパクトについて、多面的に分析をしているので、是非ご覧ください。

https://murakamizaidan.jp/wp-content/uploads/2022/08/guideline.pdf

なぜ女性の政治参画が進まないのか

「選挙権も被選挙権も男女平等じゃないか。ルールの上では平等なのにこれ以上何をしろというのか。」
そんな意見も聞こえてきますが、ルールが整えば社会が変わるというものではありません。ルールは社会を構成する一つの要因でしかなく、成熟してきた現代日本においては、ルールがもたらす影響力は相対的に低下しています。

では、一体なぜ女性の政治参画が進まないのでしょうか。これについても、調査結果がまとめられています。

日本社会全体で、固定的な性別による役割分担のバイアスが存在しており、それに伴い、政治分野においても、制度や処遇において男女均衡となっていない風潮があると思われる。実際、立候補の契機において、男性は「自らの意思」で立候補するケースが多い。一方、女性は自らの意思で立候補するよりも、外部からの働きかけが強い要因となっている。

まさに、これが日本の政治において女性参画を進めるゲームチェンジャーなのだと気づかされる結果でした。

これまたエピソードの紹介で申し訳ないのですが、ご縁があって女性の候補者をサポートすることも何度もありました。都議の森沢きょうこさんや品川区議のせお麻里さんをはじめ、女性候補者のサポートにおいては、男性と同じようにはいかない場面がいくつもありました。

例えば、子育てとの両立。あるいは生理や更年期障害などの女性特有の健康課題。限られた時間の中で一人でも多くの人と握手をすることを求められる今の選挙を戦ううえでは、大きな制約となります。(一方で、こうした課題は今の日本における最重要テーマでもあり、選挙と政治が乖離していることを端的に表しているとも言えます)
さらに、「女性は家を守るもの。子育て中に選挙なんて…」といった心無い言葉をぶつけられることも珍しくありません。セクハラが取りざたされることも増えてきましたが、女性候補者に対して高圧的な態度で接する有権者は少なくありません。女性候補者に高圧的に詰め寄り、一方で、男性の私が介入すると逃げ出すように離れていく方も多いのが選挙の実情です。

言い出したらきりがありませんが、国民民主党の伊藤たかえさんを密着取材した動画をみていただくとイメージがわくかもしれませんので、よろしければご覧ください。

女性の政治参画を進めるためには

✔日本の民主主義は機能しておらず、ゲームチェンジャーが必要である。
✔女性の政治参画が生み出すポジティブインパクトに鑑みれば、女性の政治参画は日本の民主主義におけるゲームチェンジャーになりえる。
✔しかし、女性の政治参画を阻む壁が日本には立ちはだかっている。

というのが、これまで述べてきたことですが、最後は「では、どうすれば女性の政治参画が進むのだろうか」という話をしたいと思います。

村上財団の調査で分かった、もう一つの大きな壁にメンタリティがあると思います。それは、女性特有というよりも、日本においてはそのように育てられてきたと言った方がいいかもしれないメンタリティです。

立候補の契機において、男性は「自らの意思」で立候補するケースが多い。一方、女性は自らの意思で立候補するよりも、外部からの働きかけが強い要因となっている。

の部分に集約されています。
つまり、女性は一歩引いて存在することが美徳とされる日本特有のメンタリティです。

選挙は、我先にと人を押しのけてでも前に出る、ある意味で強者の生存競争でもあります。(そんな世界に自ら足を踏み入れる奇特な人ばかりの政治だから日本の政治は根本的に優しくないと私は思っているのですが、その話はまた今度)
少し話を変えると、日本では女性活躍という言葉が浸透しました。しかし、これは、もともとは、女性を勇気づける、女性が自分らしく生きていく背中を押すという意味の「woman empowerment」という社会政策を、経済政策に利用したい政治家が意図的に歪曲して翻訳したとも言われています。
つまり、男性中心の社会は変えないぞ。その社会で生き残ることのできる男性的女性として、政治や経済の世界で活躍する存在になれ。という旧来の日本社会が色濃く反映された言葉だということです。

これが、日本における女性の社会進出の機運と相まって、予算も大きくついたこともあり、皮肉なことに日本社会の変化に貢献したことは否定しません。一方で、女性活躍の裏側に、男性と女性の性別役割分担意識や選択的夫婦別姓などの肝心なルールは温存され、女性活躍推進法の成立から5年強が経過した今、世界の変化に追いつけず、問題点が噴出しているのが現状だと思うわけです。

2021年、森会長の女性蔑視発言があった直後に、私の所属していた会派「無所属東京みらい」では、幹事長を私から森沢きょうこさんに変更しました。それまで、時間の融通が利き、政治経験も長い、男性の私が幹事長を、ということで女性2人は、まさに一歩引いていたようですが、社会を変えるためには森沢さんが幹事長をやるべきだという議論になり、私も背中を押したことを覚えています。
女性の大臣や知事等のリーダーが誕生すると、その能力や資質を疑問視する声があがりますが、まったく問題はありませんでした。経験不足から不安を抱えていたようですが、経験と共に解決されていくことばかりで、私とはまた異なる方法で会派間交渉をまとめている姿は印象的でした。
(そもそも、日本では女性リーダーにだけ能力や資質を問う声が出るのがおかしい話で、男女問わずに、えっと耳を疑う内閣改造がなされることもしばしばありますよね。)

✔「自らの意志で立候補する男性」と「背中を押されて一歩踏み出す女性」
この違いを理解すること。
✔「女性活躍」ではなく「woman empowerment」な社会を目指すこと。

これが、今の日本にとって最も大切な要素だと私は思っています。

ここまで読んできた男性こそがゲームチェンジャーになる

では、この変化を起こすことのできるゲームチェンジャーはどこにいるのでしょうか。お気づきの方もいるかもしれませんが、それは、これまでの日本における意思決定を担ってきたとされる「男性」に他なりません

男性も一家の大黒柱としての役割を担わされ、企業や組織等における競争に組み込まれ、歯を食いしばってきたのも事実です。男性も「あるべき論」にとらわれてきたのです。

女性活躍の世界観においては、男女は対立する概念となることがしばしばあります。しかし、woman empowermentの世界観では、男女は対立する概念になりません男性が女性の背中を押すことで、男性も自分らしく生きていくことに繋がるわけです。

長くなりましたが、今日言いたかったのは、
男性の皆さん、背負ってきた荷物を一旦おろしてみませんか。
女性の皆さん、一歩踏み出して、あたらしい日本の未来を描きませんか。
ということです。

日本の民主主義のゲームチェンジャーはあなたになるかもしれません。

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