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ニャン太の話①

まだ家を出る前のことなので僕が10代の頃、兄と家の近くの森の道を歩いていると灰色の毛のかたまりを見つけた。

どうやら猫のようで、見ていると近づいてくる。

ぼんやりしてると家まで着いてきてしまった。

よく見ると長毛種で、灰色と白と黒がまざったようば毛並み。

でも、ものすごくごわごわだった。

毛が絡み合って、じゅうたんになっていた。

正確には、長い毛同士がからまりあってそれがかたまりになり、さらにじゅうたんのように広がり、その猫の皮膚にへばりついているようになっているのだ。

長毛種の猫はブラッシングをしてやらないとそうなってしまうことはこのときは知らず、それはすごく後になって知ることになる。

すこし匂うし、家までついてきたのになんだか懐く様子もない。

僕ら兄弟は、この猫おそらく森の向こうの坂の上のほうから迷い込んできた猫に違いないと決めて、飼い主を探すことにした。

僕らの家は谷のような、地形のくぼみみたいなところにあって、周りは自然に囲まれている。

森の中の道を抜けて見上げるとそこにも住宅地がある。

なぜここから来たと考えたのか、根拠などなかったのだけどただそう決め付けて飼い主を探すべく片っ端からインターホンを鳴らしてみた。

何件かの家を訪ねたあと、僕らは途方に暮れることになる。

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