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公的年金財政検証に「追加試算」が!

みなさん、明けましておめでとうございます。年金界の野次馬こと、公的年金保険のミカタです。

財政検証に追加試算が

今回は、今年の一発目を飾る特ダネをお送りしたいと思います。それは、昨年12月25日の年金数理部会に提出された、財政検証の追加試算です。下のサイト「2019(令和元)年財政検証の資料」の中にある「年金数理部会に提出した資料」というところをご覧ください。

資料の冒頭では、この追加試算を行った目的について以下のように述べられています。

本追加試算は、社会保障審議会年金数理部会における2019(令和元)年財政検証に基づくピアレビューの審議のなかで、将来の基礎年金水準の低下に関するお尋ねがあったことから、年金数理部会における検討に資するため、2019(令和元)年財政検証をベースとして行ったもの。

年金数理部会が行っている「ピアレビュー」とは、財政検証の実施方法や内容を「検証」するもので、財政検証のダブルチェック機能のようなものです。

そのピアレビューの審議のなかで、基礎年金水準の低下に関するお尋ねがあり、それに対する検討資料として「追加試算」が実施されたとのことです。

マクロ経済スライドによる年金給付水準の調整によって、基礎年金の目減りが、厚生年金(報酬比例部分)よりも大きくなってしまい、それが特に低所得者の年金にとって問題であるということは、私も繰り返し述べてきました。

そして、その対策として、オプション試算で示された「適用拡大」と「拠出期間の延長」を着実に実行していくことが、基礎年金の目減りを抑え、給付水準を改善するために重要であるということも、繰り返しお伝えしてきました。

下が、オプション試算をフルに実施した場合の所得代替率の改善の示したものです。

オプション試算全部入り

これに対して、追加試算で示されたものは以下のようなものです。上のオプション試算と比較できるのは、追加試算②です(赤枠で囲った部分)。オプション試算と追加試算②における所得代替率を比較すると、経済前提のケースⅢだとほぼ同じで、ケースⅤだと追加試算②の方が1.3ポイント高くなっています。また、基礎年金の水準も、追加試算②の方が高くなっています。

追加試算

このように、単純に比較すると、追加試算②の方が、オプション試算よりもちょっとよく見えますね。それでは、追加試算②はどのような条件で試算されたものでしょう。

以下が、追加試算に関する簡単な説明です。追加試算②は、追加試算①(基礎・比例のマクロ経済スライドの調整期間を一致)に、基礎年金の加入期間を40年から45年に延長した場合を加えたものです。

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オプション試算と追加試算②の内容を整理すると以下のようになります。

オプション試算=「適用拡大(1050万人)」+ 「基礎年金拠出期間45年」
追加試算②=「調整期間の一致」+「基礎年金拠出期間45年」

オプション試算と追加試算②の違いは、「適用拡大」と「調整期間の一致」の部分です。それでは、追加試算②における「調整期間の一致」とはどのようなことでしょう。以下に説明したいと思います。

「調整期間の一致」の意味

下の図は、平成30年度の公的年金の財政収支をおおまかにまとめたものです。ここで重要なことは、公的年金は国民年金と厚生年金で別々の勘定になっているということです。基礎年金拠出金は、基礎年金の給付額を、それぞれの勘定の被保険者数(国民年金勘定は1号被保険者、厚生年金勘定は2号および3号被保険者)で按分した金額で、これが基礎年金勘定を通して、受給者に基礎年金として支給されています。

厚生年金勘定からは、基礎年金拠出金に加えて、報酬比例部分(厚生年金給付)が受給者に支給されています。また、各勘定に入っている収入は、左側の矢印で示された保険料と国庫負担だけで、積立金からの運用収入は実質的にゼロとなっています。

公的年金財政

財政検証においては、次の2つのステップで将来の年金水準を計算しています。

1.まず国民年金勘定で将来100年にわたる収支が均衡するまで、基礎年金にマクロ経済スライドによる調整を適用します。

2.そして、1で計算したマクロ経済スライド適用後の基礎年金給付に基づいて、厚生年金勘定の基礎年金拠出金が定まり、あとは、厚生年金勘定の収支が均衡するまで報酬比例部分(上の図中の厚生年金給付に相当)にマクロ経済スライドによる調整を適用します。

このようにマクロ経済スライドによる調整は、基礎年金部分と報酬比例部分別々に適用されています。そして、財政状況が厚生年金勘定と比べて相対的に悪い国民年金勘定の調整期間が長期化し、基礎年金の方が報酬比例と比べて大きく目減りしてしまうということになってしまうのです。

オプション試算で示された適用拡大は、国民年金勘定の下にいる1号被保険者が、厚生年金勘定に移ることによって、国民年金勘定に残る被保険者1人あたりの積立金が増えるので、国民年金勘定の財政状況が改善し、基礎年金の水準が上がるという効果を生むのです。

一方、追加試算で示された「調整期間の一致」とは、実質的に「国民年金勘定と厚生年金勘定の統合」を意味します。そして、統合された勘定の収支が均衡するまで、基礎年金部分と報酬比例部分に、同じようにマクロ経済スライドによる調整を適用することになります。厚生年金勘定は、国民年金勘定と比べて潤沢な積立金を有するので、それを活用して基礎年金の目減りを抑えようということです。

適用拡大か、勘定統合か?

それでは、基礎年金の目減りを抑え、給付水準の改善を図る策として、適用拡大と勘定統合はどちらがよいのでしょうか。

給付水準(特に基礎年金部分)に着目すると、先に比較した通り、勘定統合の方がやや優っているようです。

しかし、一方で適用拡大には、基礎年金の所得代替率の改善のほかにも、下のイラストのように一石七鳥、あるいは一粒で七度おいしい効果があるのです。勘定統合では、下の②~⑥の効果は得られず、また被用者保険によるセーフティネットをすべての被用者にという「勤労者皆保険」も実現できなくなるかもしれません。

適用拡大一石七鳥

年金数理部会の議事録がまだ公表されていないので、追加試算が示された詳しい経緯や、試算結果に対する部会の反応などは分かりませんが、もしかしたら、さらなる適用拡大による保険料負担を避けたい方面からの圧力があるのかもしれません。

追加試算については、まだメディアを通じて報道されていないようですが、今後の議論の行方に注目していきたいと思います。

今年も公的年金に関する様々なことを皆さんにお伝えしていきますので、よろしくお願いします!



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