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風雲急を告げる年金改革

皆さん、こんにちは。年金界の野次馬こと公的年金保険のミカタです。先日、田村厚労大臣が発表した、国民年金と厚生年金の財政調整によって給付水準の改善を図る改革案が、それを報道したメディアの拙さのために誤解を招き、ネットでは厚生年金に加入している会社員と思われる方を中心に、不満が噴出していました。

そのような誤解を解くために、私の方で下のような投稿をした次第です。

田村大臣の改革案を正しく報道すれば、ネットでの誤解は解消され、騒ぎは落ち着くか、あるいは、基礎年金部分の給付水準の改善は、適用拡大によっても実現は可能なので、そちらの方へ議論が向かうことを期待していました、、、、、が、どうも雲行きが怪しくなってきたようです。

まずは、9月10日の記者会見で田村大臣が改革案を発表した後、9月14日の会見でも、それについて記者から質問が出て、次のような報道がされています。

この報道は、田村大臣の改革案に対する誤解を解くというよりも、年金制度に対する不満と不安を煽る酷いものとなっています。

この中でコメントしている専門家の方は、「基礎年金が現在の6.5万円から4万円に減額される見通し」といっていますが、これも誤解を招きます。

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基礎年金が4割も減るというのは、経済前提がかなり悪い状況における所得代替率の低下率をそのまま年金額に当てはめているものですが、これは間違った解釈です。

そもそも、専門家が手にしているフリップで使われている図は、私の投稿で指摘した通り間違っているものです。

さらに、この方のツイッターを見ると、田村大臣の改革案が、昨年12月の年金数理部会に提出された追加試算に基づいたものであることも知らずに、SNSやこのニュースでコメントしていたようなのです。

そして、こんないい加減なニュースや専門家によって人々の不満と不安が煽られている状況に乗じて(?)「税による最低保障年金」という年金制度の抜本的改革案(笑)を出してきたのが、自民党総裁選に出馬した河野太郎氏という訳です。

昨日の公開討論会では、河野氏の案に対して、岸田氏が、この案は旧民主党が政権を取った時に公約したものだが、結局財源の目処が立たずにお蔵入りとなったもので、低年金者対策としては、より多くの労働者が厚生年金に加入できるようにする適用拡大を進めるべきだと、正論で向かっていたのは良かったのですが、その後の党員調査によると、河野氏が40%の支持を得ているという、何とも先行きが案じられる状態に.....

田村大臣が自らの在任中に何かしらの実績を残したいがために、企業側の抵抗が強い適用拡大よりも、比較的容易に実現できそうな財政調整案を打ち上げたことが発端となり、河野氏の抜本的改革案(笑)が注目されるハメになるという思わぬ展開に、これからしばらくは目が離せません。

河野氏は、マイナンバーカードを使って高所得者や資産家を把握し、そのような人たちに対して最低保障年金は給付しないようにすれば、財源確保のための消費増税も抑えられるようなことを言っています。

しかし、人は最初から高所得者や資産家となるとは分からないので、将来のリスクに対して保険という仕組みで国民が支え合う、今の年金制度の枠組みは維持するべきだと思いますし、それに対して適用拡大やマクロ経済スライドのフル適用など、必要な制度改革行っていくべきだと思います。

社会保険である以上は「負担は能力に応じて、給付はニーズに応じて」という原則に従うべきで、高所得者や資産家に対しては、マイナンバーを活用した課税の強化という形で対応すれば良いのではないでしょうか。

公的年金保険のミカタとしては、岸田氏に頑張って欲しいところです。

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