日経による「負担の誇大広告」には気をつけようpart2
みなさん、こんにちは!公的年金界のやじ馬こと、公的年金のミカタです。
前回の投稿では、子ども・子育て支援金の収入別負担額が出せない理由について考察しましたが、昨日政府がこれを公表しました。
メディアや政治家は、待ってましたとばかりに「最初に聞いていた500円から大幅に増えているじゃないか」と批判していますが、支援金が公的医療保険と同様に応能負担となることは分かっていたわけですから、収入によって金額が増えることは、「あたり前田のクラッカー」ではないでしょうか。
しかも、年収600万円で月1000円(年12000円)って、0.2%ですよ。事業主負担分を入れても0.4%です。ヤマノイ先生は「事業主が1万2000円給料を上げようと思っていたのに、支援金のせいで上げられなくなった」とおっしゃいますが、今の時代、そんなちっぽけな賃上げしかできない会社は生き延びていくことは難しいでしょう。
世の中の賃上げは5%というレベルで、そのうち0.4%を子どもと子育てを支えるために使おう、ということに誰が不満をもつのでしょうか?
大体、この支援金に反対しているのは、一部のメディア、学者、政治家です。拠出を求められている経済界からは何の反対も出ていません。むしろ、大企業を母体とする健保組合からは、機関誌「健康保険」の2024年1月号において、支援金制度について述べたコラムを以下のような文章で締めくくっています。
支援金制度を批判している人たちは、それが目的となっているのですね。それは何故なのか?制度・規制改革学会が4月5日に公表した声明「『子育て支援金』制度の撤回を求める」の賛同者に名を連ねている面々を見ると、年金不安を煽り、最低保障年金、積立方式、支給開始年齢の引上げなど、実現可能性が低く、そもそも必要のない年金改革案を唱えて負け続けている人々です。
大林、小黒、島澤、鈴木、西沢、、、、
そして、やっと本題ですが、またもや日経でこんな記事がありました。
記事の主旨は、住民税非課税という基準だけで低所得者向けの給付を行う非効率さを指摘し、所得と資産を把握する必要性を唱えているものですが、何故か最後に、支援金への批判もおまけでついていて、下のようなグラフで社会保険料の逆進性を訴えていました。
社会保険料は、報酬に比例して算出されるので、逆進性というのは当てはまらないと思うのですが、保険料の賦課基準である標準報酬月額には、厚生年金で65万円、健康保険で139万円という上限が設定されています。賞与にも同様に上限があります。
したがって、年収が一定以上となると、年収に対する保険料の比率は低下していくので、社会保険制度に反対の人たちは、それを逆進的であるといって、制度を批判するネタにしています。
確かに、上のグラフの社会保険料部分だけを取り出してみると、下のグラフのようになります。これを見ると、所得250万円をピークに負担割合が低下していて、所得の低い段階から負担割合が低下していく、すなわち逆進性がみてとれます。
しかーし、ここで注意が必要です。この元データである「申告所得税標本調査」は、確定申告のデータからサンプルを取ったもので、事業所得や不動産所得が主たる所得となっている人の割合が多くなっています。
納税者の大半を占める給与所得者の多くは年末調整で納税を済ませているので、日経のグラフは、世の中の納税者の平均的な姿ではないのです。
そこで、所得の種別に社会保険料の所得に対する割合を並べてみると下のようになります。
この3つのグラフで、事業所得者と不動産所得書のものは、所得250万円から負担割合が低下し始めていて、逆進性を示しています。これは、事業所得者と不動産所得者が加入している国民年金の保険料が定額であることと、国民健康保険の保険料にも定額の均等割の部分があるためだと思われます。
新聞記事のグラフもこれらの影響を受けたため、所得250万円から負担割合が低下したのです。
一方、給与所得者の負担割合は、所得700万円程まではほぼ横ばいで、所得800万円位(年収で1000万円程)から低下していますが、報酬比例による応能負担がある程度維持されています。
まとめると、新聞記事のグラフは、元データのサンプルが偏っていて、給与所得者が大半を占める国民全体の社会保険料の負担率を正確に表していなかったということになります。そのような、偏ったデータを用いて「社会保険料負担は低所得者にとって重く、逆進性がある」というのは、ミスリードではないでしょうか。
この前の投稿で指摘した、「若者ほど社会保険料負担が重い」に続いて、今回は「低所得者ほど社会保険料負担が重い」と立て続けにデータを誤用して、社会保険料に関する誤ったイメージを読者に与えているのは問題だと思います。
ということで、今回はおしまい。皆さん、ごきげんよう!
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