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床拭けば吾を馬にする君知るやいつか背負へぬ時のくること/斎藤君

2022年4月24日(日)のうたの日15時部屋の題「する」で次席となった短歌。

作中主体は床の拭き掃除をしている。家の床なら、「吾を馬にする君」は子どもかパートナーだろう。子どもであれば、幼児か就学児ぐらいの年齢だろう。学校の床なら、「吾を馬にする君」は友人だろう。

「知るや」は「知っているだろうか」という疑問形。下句で、「吾を馬にする」ということは、作中主体が「君」を背負うことだとわかる。

「背負へぬ時のくる」のは、いつだろうか。「君」が子どもならば、作中主体をお馬に見立てて遊ぶようなことをしなくなるときだろう。あるいは、作中主体の身体が思うように動かなくなるときかもしれない。「君」がパートナーならば、互いに年老いてじゃれ合う関係でなくなるときだろう。「君」が友人ならば、学校を卒業し別の道を進むことになったときだろう。

いずれにせよ、「君」は先々のことは考えていないようである。一方、作中主体は、時の流れに思いを馳せており、「吾を馬にする君」との今を束の間の幸福であると実感している。楽しさを詠みつつ、そこにある切なさに焦点をあてている一首。

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