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仕事を程よく切り分けて渡す【公務員の仕事】

 「生きた牛一頭」と「生きた鶏一匹」のどちらかを渡されて、「全部使って、何か料理を作ってちょうだい」と言われたとき、調理が難しいのは「生きた牛一頭」だろう。鶏ならば何とか殺せるだろうが、牛ってどうやって殺せばいいのか検討もつかない。

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 「牛一頭分の肉を部位ごとに切り分けたもの」と「生きた鶏一匹」のどちらかを渡されて、「全部使って、何か料理を作ってちょうだい」と言われたとき、調理が難しいのは「生きた鶏一匹」だろう。「牛一頭分の肉」を渡されると大量の肉を扱うことになるため、調理が大変にはなるものの、「とりあえず焼いて塩かければええんやろ?」くらいのノリでいける。しかし、「生きた鶏一匹」だと、殺して、血を抜いて……、というところから始めなければならない。鶏の血の抜き方とか知らんのだが。というか、血抜きは必要なのか?

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 「牛一頭分の肉を部位ごとに切り分けたもの」と「牛一頭分の肉を全部使ったひき肉」を渡されて、「全部使って、何か料理を作ってちょうだい」と言われたとき、調理が難しいのは「牛一頭分の肉を全部使ったひき肉」だろう。どんだけハンバーグをこねればええねん。逆に細かくしすぎて、調理しにくくなってしまっている。

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 人事異動が定期的に行われる公務員にとって、ある事業の立ち上げから終わりまでをすべて担当することはまずない。ほとんどの場合、事業は途中段階のものを前任から引継ぐし、あるいは途中段階のものを後任に引継ぐ。こうした公務員の定期人事異動・引継ぎという特性から考えると、優秀な公務員とは「しっかりと事業を引継げる人」であると定義することができる。

 牛と鶏のように、事業の重い/軽いはたしかにある。しかし、事業が重い=難しいではないし、軽い=簡単ではない。どんなに重い業務であっても、前任者がしっかりと業務を体系的に整理し、ToDoを切り分け、手を付けやすいようにしてくれていた場合、それは難しい業務ではない。逆に、どんなに軽い業務であっても、前任者がろくに業務を整理せず、いつ・何をすればいいのか分からない状態で引継ぐと、それは難しい業務となる。

 もう1歩踏み込むと、業務が切り分けられすぎているのも問題である。具体的なToDoは整理されているのだけれど、細かすぎて全体像が見えない。あるいは、何をすればいいのか(what)は分かるのだけれど、なぜこれをするのか(why)が分からない。こうなると、大量のひき肉を渡されて延々とハンバーグをこねるしかなくなるのと同じように、新しい職員の異なる見方が業務に反映されなくなってしまう。このことは「前例主義」を生む一因となる。

 結論として、業務は体系的に整理しToDoを明確化しておく必要がある。一方で、後任者が業務を工夫しやすいように、ToDoは細かくしすぎず、目的を明確にする必要がある。その「塩梅」が上手な人を目指したいものである。

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