見出し画像

大津市いじめ自殺事件と曽野綾子氏の問題提起

平成23年9月29日にいじめ自殺事件が起きた大津市立皇子山中学校は、平成21・22年度文部科学省「道徳教育実践研究事業」推進校で、事件が起きた約半年前に同事業の「研究のまとめ」を発表し、「学校、地域、家庭の連携で、大きな成果を上げた」と報告している。

同報告によれば、校内研究テーマは「自ら光り輝く生徒を求めて一心に響く道徳教育の実践」で、道徳教育の目標は「豊かな心、思いやりの心を育てる」「規範意識を高め、正しい判断力を培う」ことにあった。

皇子山中環境宣言には「いじめのない学級づくり」と明記され、「わが校のストップいじめアクションプラン」には、「いじめをしない、させない、見逃さない」と書かれ、生徒のアンケート調査には、「先生もいじめのことを知っていた」「いじめを見て一緒に笑っていた」等の記述が15件あったが、このことを取り上げなかった理由について、学校側は「記載を見落としていた」と釈明した。

教育長の当初の表明は「自殺の原因は家庭環境が問題であり、いじめが原因ではない」というもので、「いじめた側にも人権がある」として、「教育的配慮」により加害者の生徒に聞き取り調査を実施しなかった大津市教委に非難が殺到した。

道徳公開授業では、「命の大切さ」など多くの「感動」と「勇気」を与えたと書かれ、平成23年1月31日に行われた教師の意識調査によれば、「2年間の研究は活発に行われていましたか」という質問に対して、「はい」が22人、「やや行われていた」が11人、「あまり行われていなかった」が1人、「いいえ」は皆無であった。

「研究のまとめ一成果と課題」には、「『クラスの思い出ベスト3』の中に『道徳』をあげた生徒が3人もいたという驚くべき成果…役割演技や話し合い活動の積み重ねにより、道徳的心情を言語化できるようになり、互いの感想や意見を交流することで、協同的な学びを深められるようにもなった。」と書かれていた。

しかし、「いじめのない学級づくり」の具体策が欠落し、研究実践の成果と課題が不明確で、子供の内面の本質に迫ることなく、教師自身の変容が見られない。

ここから先は

562字

①歴史教育、②家庭教育、③道徳教育、④日本的Well-Being教育の観点から、研究の最新情報や、課…

理論コース塾生

¥990 / 月

実践コース

¥2,000 / 月

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?