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ユネスコ「世界の記憶」の制度改善とラムザイヤー論文


●ユネスコ「世界の記憶」プログラムの制度改善の経緯

中国がユネスコ「世界の記憶」プログラムとして登録申請した「南京大虐殺」資料が、2015年10月4日からアラブ首長国連邦の首都アブダビで開催されたユネスコ「世界の記憶」国際諮問委員会(IAC)で登録されてしまったことを覚えている人も多いであろう。

この日本外交の大失態の教訓を踏まえて、9か国が申請した「慰安婦」資料の登録を阻止するために、制度改善をユネスコに働きかけてきた。

拙著『WGIPと「歴史戦」』(モラロジー研究所)に詳述したが、私は外務省幹部とともに日本を代表する立場で同会議のオブザーバーとして参加し、共同申請資料の問題点を「世界の記憶」の倫理規定や一般指針の登録選考基準の真正性、法の支配、資料の完全性などの技術的問題点の視点から指摘した意見書を全IAC委員とユネスコ事務局に提出した。

アブダビから帰国後、自民党外交部会・国際情報検討委員会・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同会議に招聘され、制度改善の必要性を訴えた。

ユネスコは加盟国からの拠出金で運営されているにもかかわらず、加盟国政府の立場から独立して審議が行われ、「中立性」「公開性」が担保されていない。

この点を踏まえて、「世界の記憶」プログラムの「一般指針」と「登録の手引き」を抜本的包括的に改革する必要がある。
そのための働きかけに早急に着手するとともに、首相官邸主導の官民一体となった特命チームを発足させ、登録された「南京大虐殺」文書の検証とユネスコ共同申請を奨励された「慰安婦」申請資料の検証、反論文書の作成に取り組む必要があると訴えた。

この提言は直ちに実行に移され、まず同年11月に開催された第38回ユネスコ総会に出席する馳浩文科相に面会して、ユネスコ事務局長に制度改善を強く働きかけていただくよう要請した。

日本政府が強く働きかけた結果、2016年4月に開催されたユネスコ執行委員会は「『世界の記憶』の『一般指針』と『登録の手引き』の包括的見直しの決定を『歓迎する』」ことを明らかにし、2018年10月の執行委員会で包括的見直しの「行動計画案」について審議し、Open-Ended Working Group(OEWG)を中心に制度改革の議論が進められた。

●合意された「世界の記憶」登録プロセス


1年間の審議を経て、2019年9月10日の第7回OEWG「共同議長による報告書」によれば、以下の登録プロセスが合意された。

・「世界の記憶」プログラムに誰でも登録申請できるが、各国政府機関を通して提出しなければならない。
・対立案件については「異議申し立て」ができ、非技術的異議申し立てについては「対話のプロセスに移行」する。

対話の選択肢は、

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