ネタバレ読書コーナー6

 今回は倉橋耀子さんの『いちご フロムイチゴ1』。
 都会の生活と田舎というか、地方での暮らしは別世界に暮らすような感覚があり、誰でも戸惑いを覚えるもの。一人っ子の小学5年生の大木一木ちゃんは、都会で暮らす少女で顔に湿疹ができるアトピー性皮膚炎で悩んでいる。
 自然に囲まれてストレスを感じない生活をすれば、アトピーも治るかも知れない。確かに原因のひとつは精神的なストレスにあるという。

 じつはこれを記すわたしも、中学に上がるまでアトピー性皮膚炎に苦しんでいたのだ。顔のあちらこちらが痒みに支配されて、つい掻きむしってしまうのだ。搔くとその跡が赤くなったり、かさぶただらけになってしまったり・・・
 その時代も男性用美容品はあったし、歌番組ではジャニーズタレントが注目されてから、わたしの顔を鏡で見ると恐ろしくもあるし、かっこ悪さもあった。
 
 どうして完治に至ったのかは覚えていないが、ステロイドを使った薬を塗ったり、なるべく掻かないように意識することを心がけた。でもこの物語のヒロイン一子ちゃんはちょっと違った。学校に行ったら同級生にからかわれるのがいやだから、移住先の学校にも通うことを躊躇ったのだ。わたしはアトピー性皮膚炎そのものが嫌だった。でも現実として受け入れりしかなかった。

 一子ちゃんもその現実を受け入れる為に、自分のことを「つぶつぶいちご」と揶揄して、気持ちを和らげようとしていた。でも女の子らしくて、読んだわたしは可愛らしさを感じたのだが。
 山の中の生活はそれまでと一変した。歩いて1時間以上かかる通学路、通らざるを得ない坂道、街頭以外明かりもコンビニもない景色、こんなところで学校に通うなんて・・・
 目の前が真っ暗になった一子ちゃんだが、新学期になり1日だけ登校したが、やっぱり登校だけでも辛いし、からかってくる生徒もいた。「もう学校は嫌!」
 そう思ったいちご(一子)だったが、森の中で出会った犬のゴローに亡くなったおじいちゃんを重ね合わせたり、年齢が近い少年、光(ひかる)は動物たちと会話する能力を持っていて、薬草についても詳しかった。

 アトピーにも効果があるというのでヨモギを巡って、いちごと光は森に行くようになる。そしてゴロー(いちごが勝手につけた名前)は、いちごにヨモギを持っていってあげようと、雨の中ヨモギを集めた結果、帰らぬ犬となり・・・

 細かないきさつがあまり描かれていないが、素直に読みたい物語である。感動すら覚える小説。おすすめの一冊である。さべあのまさんのイラストもOK。

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