”トンデモ陰謀論”を拡散するマスコミとSNSの危険性

埼玉県虐待禁止条例案と「親学」は無関係

10月6日に埼玉県議会で自民党県議団が提出した埼玉県虐待禁止条例案は、「旧統一教会」あるいは「親学」と人脈を共有する「共同親権」推進派が自分たちの目的を達成するために提出したものだという”トンデモ陰謀論”がSNSで拡散されている。
 『宗教右派とフェミニズム』(青弓社,2023年)によれば、埼玉県は「親学」発祥の地で「先進県」であるという。同書を根拠にこの”トンデモ陰謀論”が広がっているようであるが、誤解も甚だしい。
 私はかつて埼玉県教育委員長として、家庭教育を担当する行政の関係者を集めて、私が理事長をしていた親学推進協会が提唱する狭義の「親学」ではなく、全国各地に広がっている「親としての学び」「親になるための学び」の動向を調査した上で、埼玉独自のプログラムを作成するようにお願いした。

●民主党政権下で文科省が推進した「親としての学び」「親になるための学び」


 民主党政権下で文部科学省がまとめた家庭教育に関する提言に「親としての学び」「親になるための学び」の原型が明記されており、これを広義の「親学」と捉えれば、埼玉県は「親学」発祥の地ではない。埼玉県の当時の行政関係者に取材し資料調査をすれば、全国各地の先進的事例に学んで埼玉県版を構想したことは明確に立証できる。
 私は『親学の教科書』に明記された狭義の「親学」と広義の「親学」を区別し、混同しない方針を一貫して実行し、私が狭義の「親学」を押し付けているという誤解を招かないように細心の注意を払い、今日に至るまで埼玉県教育委員会が関与する家庭教育講演をあえて引き受けてこなかった。
 ましてや、今回の埼玉県虐待禁止条例案と「親学」との関係は全くない。同案を中心的に作成し取り下げた田村琢実自民党県議団団長がまとめた埼玉県性の多様性尊重条例にも強く反対した急先鋒は私(6月16日と7月4日のnote拙稿参照)であり、「親学」と人脈を共有する「共同親権」推進派が自分たちの目的を達成するために提出したなどという根も葉もない“トンデモ陰謀論”がNewsweek日本版に取り上げられたことは笑止千万である。
 最大の問題は十分に取材することなく、トンデモ陰謀論が拡散され、アッという間に炎上している日本の現状の危険性だ。また、PHP研究所の親学研究会で1年間議論を積み重ねた共同研究の成果を集大成した『親学の教科書』=狭義の「親学」と民主党政権下の文科省内に設置された家庭教育推進研究委員会が提言した広義の「親学」を混同していることが根本的な間違いであり、このことを承知しながら”トンデモ陰謀論”を吹聴し、「親学」批判の世論形成を煽っている一部の研究者と左翼団体・マスコミの癒着の罪は極めて重い。いずれこのことを明らかにする論文を世に問いたい。


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