総領事館主催ラウンド・テーブル講演(2017年8月25日~9月1日)

 私は戦争プロパガンダを中心に、米英加などの国立公文書館所蔵の第一次史料を長年にわたって研究してきました。それぞれの国の歴史には光と陰の両面があり、曇りのない眼で虚心坦懐に歴史の事実を客観的に見つめ、実証的に研究することが重要だと考えております。
この観点からユネスコ「世界の記憶」遺産として一昨年登録された「南京大虐殺」資料や昨年9カ国によって共同申請された「日本軍『慰安婦』の声」資料には、「世界記憶遺産保護のための一般指針」に照らして、明らかに不当な資料が含まれております。
 歴史的事実やその評価については諸説があり、客観的検証が必要不可欠です。そもそも「世界の記憶」遺産は世界中の誰もがいつでも資料が見れるような「普遍的なアクセス」を目的として作られた事業ですが、2年前に登録された「南京大虐殺」資料の閲覧を日本政府は中国政府に求めてきましたが、未だに公開されておらず、世界中で誰も見ることができないのです。
 昨年9カ国が共同申請した「日本軍『慰安婦』の声」文書は、日本軍の慰安婦制度は「ホロコースト」に匹敵すると強調し、「平和のシンボル」として、全米各地に設置された慰安婦像の世界的意義を強調しています。しかし実際には、慰安婦像が設置された全米各地で平穏な地域社会を分断し、無用の混乱と軋轢をもたらし、在外邦人が原告となった複数の訴訟が起き、加盟国間の友好と相互理解の促進というユネスコ本来の目的を阻害する「紛争のシンボル」と化しています。
 具体例を挙げると、「慰安婦は天皇からの贈り物」と書かれたマグロウヒル社の歴史教科書で学んだ高校生(NJ/LA在住)などが級友から「強姦魔」「テロリスト」などと呼ばれて唾をかけられるいじめ事件が起き、ショックで「引きこもり」になったケースもあります。安倍総理はこのマグロウヒル社の教科書は「日本への誹謗中傷」と批判しました。
 子供たちは慰安婦像・碑への遠足を強いられ、碑文に書かれた「慰安婦20万人」「日本軍の強制連行」「性奴隷」「少女」説をすり込まれて、「日本人として恥ずかしくないのか」と責められる嫌がらせを受けました。学校で韓国系生徒に「謝れ」コールが起き、泣いて謝るまでコールが続きました。
 南カリフォルニアの複数の公立中学校では、韓国人による寸劇「日本軍による慰安婦の強制連行」が上演されました。私はNYとLAで各2回こうしたいじめを受けた複数の親子などから十時間以上に及ぶ詳細なヒアリングを致しました。 
 しかし、慰安婦碑に明記されている「慰安婦20万人」「日本軍の強制連行」「性奴隷」「少女」はいずれも歴史的事実に反することを、慰安婦問題研究の権威である西岡力教授が8月25日にグレンデール市長及び市議会議員に説明しましたが、そのポイントを列記すると、

①    慰安婦問題研究の日韓の権威である秦郁彦氏と李栄薫市は朝鮮人慰安婦は4000人との推計で一致しているマグロウヒル社の歴史教科書は慰安婦20万人が毎日20~30人の軍人の相手をさせられたと書いていますが、事実なら毎日400万人から600万人の日本の軍人が慰安所に通ったことになります。当時の日本陸軍の兵力は約100万であり、この教科書に記述された数字は荒唐無稽です。
②    日本軍による慰安婦狩りのような強制連行はなかったことは、日本の学会でも認められており、日本の朝日新聞が吉田清治が済州島で慰安婦狩りをしたという虚偽の証言を軍による強制連行が事実としてあったように大きく報道したことが米国はじめ世界に拡散されてしまったのです。しかし、2014年朝日新聞はこれが誤報であったことを認め謝罪しましたが、アメリカでは知られておりません。そこで、慰安婦像の設置によって被害を受けた在米日本人が原告となり、朝日新聞に対して、アメリカの大手新聞への謝罪広告などを求めた訴訟が起きており、日本政府も2月22日付で米国連邦裁判所に意見書(資料参照)を提出し、「グレンデール市の慰安婦像は確立した外交方針への妨害であり、逸脱である」と主張し、慰安婦碑文に「20万人の女性が強制的に連行され、性奴隷となることを強制した」などの歴史的事実に反する文言が明記されたことに厳重に抗議しました。
③    日本軍が戦地に設置した慰安所は、当時合法だった「公娼」制度を戦地に移したもので、「性奴隷」ではありません。日本の学界や言論界でも慰安婦を性奴隷とする説は今では少数説であり、ソウル大学の李栄薫名誉教授も慰安婦は軍が管理した「公娼」で奴隷ではないと主張しています。
④    「慰安婦少女像」は10代前半の朝鮮人少女をモデルとしていますが、朝鮮では17歳にならなければ、いくら本人が希望しても公娼としての営業が許可されませんでした。それは戦地の慰安所も同じで、戦地では軍が本人との面談と戸籍などを通じて年齢を確認していました。17歳未満で慰安婦として働かされたと証言している元被害者らは、記憶違いなど出ないなら、犯罪組織が警察や軍の目を離れて運営していた私娼館で働かされていた可能性があります

 慰安婦碑文の根拠となった2007年の米下院の「慰安婦問題に関する対日非難決議」は、「その残酷さと規模において前例を見ないものとされるものであるが、集団強姦、強制中絶、屈従、又やがて身体切除、死や結果的自殺に至る性暴力を含む、20世紀における最大に人身売買事件の一つ」であるとして、日本政府を非難しました。
本年4月1日に日本で開催された第一回日本軍「慰安婦」博物館会議で発表したカリフォルニア州韓米フォーラムのフィリス・キム代表によれば、米下院決議はNY/LA/ワシントンDCの在米韓国人による草の根運動によって167人の共同提案者となった議員に働きかけた成果であった。彼らは「歴史戦」の主戦場をアメリカだと狙いを定め、日韓の国家間の論争ではなく、慰安婦問題をアメリカが重視する国際的な女性の人権侵害問題として捉え、ユダヤ系米人の共通認識である「ホロコースト」と同一視するプロパガンダ戦略で訴え、同非難決議は蘭・比・加・欧州議会に広がり、国際世論に決定的役割を果たしました。

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