武蔵野大学ウェルビーイング学部の創設

 2月21日、自民党本部で開催された日本ウェルビーイング計画推進委員会で、「高等教育におけるウェルビーイング」をテーマに、周南公立大学の高田隆学長と今年の4月から武蔵野大学ウェルビーイング学部長に就任予定の前野隆司慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長が発表された。

●前野隆司氏の提案
 前野隆司センター長は、具体的なウェルビーイング教育の在り方について、次のような提案を行った。
⑴ 初等・中等教育において、道徳、総合的な学習の時間、ないしは各科目の中で、ウェルビーイングのサイエンス(例えば、利他的で人の役に立つ人は幸せ、視野の広い人は幸せ、自己肯定感の高い人は幸せ、倫理観の高い人は幸せ、幸せな人は生産性・創造性が高い、などの科学的な研究成果)を教育すべき。初等・中等教育を担う教員にも、ウェルビーイングのサイエンスについての具体的な教育を行うべき。
⑵ 高等教育においても、ウェルビーイング學の教育・研究を拡充し、ウェルビーイングの専門家育成を推進すべき。つまり、2024年度からの武蔵野大学、周南公立大学のようなと取り組みを、さらに他大学にも拡充していくべき。ウェルビーイング学の研究・教育を行う大学院も拡充すべき。
⑶ 社会人教育においても、顧客のウェルビーイングを推進する製品・サービスを展開したり従業員のウェルビーイングを推進する企業・事業体に対し、企業として、あるいは個人としてウェルビーイング認定を行うといった社会人教育の拡充を行うべき(ウェルビーイング学会にて検討中)。社会人の学び直しにおいても、ウェルビーイングのサイエンスの学び直しを推進すべき。
⑷ ウェルビーイング学会のような学問分野横断的学会により、さらに幼稚園・保育園から高齢者まで、様々な者の教育・研究を共有し向上する場を広めるべき。

●「ウェルビーイング学」の4本柱
 4月から始まる武蔵野大学ウェルビーイング学部は、以下の「ウェルビーイング学」の4本柱を中心に据えたカリキュラムが組み、真にウェルビーイングな社会を実現するために、これからの社会で必要とされる人材の育成を目指している。
⑴ 科学としてのウェルビーイング学の基礎と周辺を徹底的に学ぶ一心理学、社会学、その他の科学
⑵ 思想・宗教的ウェルビーイング学を建学の精神科目で学ぶ一仏教学、真宗学、哲学
⑶ 感性的ウェルビーイング学を様々な体験から学ぶ一自然環境体験、地方体験、起業体験、国際体験
⑷ イノベーションに未来を切り開く創造的ウェルビーイング学一創造性開発、イノベーションプロジェクト、卒業研究

●ウェルビーイング教育の拡充が急務
 前野隆司氏によれば、幸せな人は生産性・創造性が高く、やる気とチャレンジ精神にあふれ、倫理的・利他的で視野が広く、他の人の役に立ちたいと思う人。このような人が増える社会こそ、産業界・学術界などが活性化し世界の諸課題を解決することによって日本と世界の閉塞感を解決する社会である。
 現在、金銭的、精神的に余裕のない若者が、子供を作る自信を失っている。統計データによれば、結婚している者は未婚の者よりも幸せ。子供のいない夫婦よりも、子供のいる夫婦の方が幸せ(子供3人の親が最も幸せ)。
 国民の幸福度の向上は、少子高齢化への抜本的対策でもある。少子高齢化の解消は、日本の活性化のために極めて重要であり、あらゆる面から見て、初等教育から社会人教育までのあらゆる場での具体的なウェルビーイング教育の拡充が急務であると前野氏は訴えている。
 では、ウェルビーイング学部を卒業した後の進路についてはどのように構想されているのであろうか。以下、前野報告より引用する。

●卒業後の進路
 生成AIの進展に伴い、仕事の半分は無くなると言われる。言い換えれば、これから、半分の仕事は今はない仕事になるということである。新たな仕事は、人類のウェルビーイングを高める仕事になるべきであろう。環境問題、格差の問題、戦争・紛争、パンデミック、少子化などの課題が山積した現代社会において、全人類のウェルビーイングを考える視点を持った人材の活躍が不可欠である。
 ウェルビーイング学科を卒業した者は、顧客のウェルビーイングを推進する製品・サービスを展開した従業員のウェルビーイングを推進する企業・事業体において、ウェルビーイングの専門家として活躍する。一部の者は大学院に進学し、ウェルビーイングの専門家としての知見をさらに深める。具体的には、企業内におけるウェルビーイングの専門家、自治体におけるウェルビーイングの専門家、起業家として新たなウェルビーイング産業を展開する者など、様々な場でのウェルビーイングの専門家のニーズに応えることとなる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?