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洗濯を終えた洗濯機が夢想してる永劫、宇宙、輪廻など/ゆき

2022年4月28日(木)のうたの日11時部屋の題「洗濯」の短歌。

洗濯機にとって、回っているときが目の覚めているときで、止まっているときは眠っているときなのだろうか。

「夢想」には、夢の中で思うことという意味と、空想することという意味とがある。前者であるとすれば、「洗濯を終えた洗濯機」は眠っているということになる。後者であるとすれば、「洗濯を終えた洗濯機」は目を覚ましているということになる。

夢想する内容は、「永劫、宇宙、輪廻など」である。洗濯機として回っているときは、縦型洗濯機にしろドラム式洗濯機にしろ、円が回転するという点で「永劫、宇宙、輪廻など」に通じる。つまり、洗濯機として回っているときのことを夢想しているのである。

静と動という単純な捉え方をして、止まっているときが眠りで、回っているときが活動時と捉えよう。すると、ここでの「夢想」は、夢の中で思うことという意味である。

活動時すなわち回っているときは、回転ということ自体に思いを馳せることなく、ただひたすらに回っている。洗濯機は止まったときに、円が回転するということ自体に思いを馳せることになる。

「永劫」とは、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが言うところの永劫回帰に通じるだろうか。「永劫」単独であれば、「ようごう」とも「えいごう」とも読み、未来にわたる長い時間という意味である。永劫回帰は、永遠回帰とも言うが、ewige Wiederkunftの訳で、ニーチェの根本思想。「宇宙は特定の目標に向かって進んでいくものではなく、全体として同一の状態が円環的に繰り返すことを説き、未来に救いを求めるより現在の一瞬を充実させて生きることをすすめる思想」である。そのため、「永劫」から「宇宙」へと夢想が移行するのは自然なことである。

宇宙の実際としては、地球を例に取れば、ほぼ球に近い楕円形の立体が自転と公転(太陽の周りを巡ること)を繰り返しているという点で、洗濯機の槽の回転に通じる。

さらに、「輪廻(りんね)」とは、仏教用語で、「生ある者が迷妄に満ちた生死を絶え間なく繰り返すこと」。輪廻転生(りんねてんしょう)と言ったら、「人が生まれ変わり、死に変わりし続けること」を指す。車輪がぐるぐると回転し続けることに関わる言葉である。やはり洗濯機の槽の回転にも通ずるものがあろう。

静止して眠りについた洗濯機が夢想で抽象的な思考を巡らせているという発想に驚かされると同時に、洗濯機という機械も宇宙に存在する物質の集合体であるということからすれば、的を射た考えなのではと納得させられた。

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