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手に残る鉄の匂いが冷たくて逆上がりまた冬が近づく/青井力

2022年3月30日(水)の19時部屋の題「逆」の短歌。

逆上がりは小学生にとっては練習が何回も必要な技だ。練習すればするほど手に鉄棒の鉄の匂いがつく。少し古い鉄棒ならなおさらだ。鉄棒は外で風雨にさらされたものだろうか。そうであれば錆びたような匂いも混じる。

冬の近づくころの冷たさがあるのだから、屋外の鉄棒がふさわしいだろう。「匂いが冷たくて」という嗅覚と冷覚を合わせた表現が詩的でよい。

「また」という言葉で、作中主体が鉄の匂いと冷たさで冬の到来を感じていて、練習を重ねるごとに冬らしくなってくるという時間経過が伝わって来る。

大人がちょっと久しぶりに鉄棒を触れた程度で鉄の匂いを嗅ごうとは思わない。純粋な少年像が浮かび上がってくる。

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