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満月の陸蟹の群れは仔を抱へ九十九島の海へと入らむ/咲兵衛

※ 陸蟹=おかがに、九十九島=くじゅうくしま、入=い

2022年3月31日(木)の11時部屋の題「長崎」の短歌。

九十九島は、佐世保湾の外側から北へ平戸までの約25kmの海域に点在する海域のことだという。リアス海岸と島々が特徴。ほぼ全域が「西海国立公園」に指定されている。

九十九島にいる陸蟹であれば、アカテガニのことだろうか。7〜8月の大潮の夜に川や海岸へ移動し水中で産卵するのだという。

大潮というのは、満月と新月のときに起こる潮位上昇。

「陸蟹の群れ」と「九十九島」という組み合わせが数字の大きさという点で共通していて、かと言っていわゆるつき過ぎにはなっていないだろう。

ここでの「仔」というのは卵のことだろう。実際に目にしたわけではないので推量の助動詞「む」で終わるわけだが、作中主体がその自然の営みに思いを馳せているところに何とも言えぬ趣がある。

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