見出し画像

まだ家に残されているものさしの裏に書かれた母の旧姓/春ひより

2022年5月12日(木)のうたの日15時部屋の題「もの」でバラを取った短歌。

ものさしは、小学校などで使っていたものだろうか。長さは、三十センチメートルのものさしだろうか。竹で出来ていて、五センチメートルごとの目盛のところに赤い点が付いているものか。

小学校なら算数や家庭科の授業で使用したはずだ。学校で使うものには必ず名前を書いたものだ。学校で使わなくなったものさしは、家で使うことになる。その長さのものはなかなかないから、重宝する。段々と竹製のものさしというのも貴重なものとなり、捨てがたくなってくる。

ものさしは作中主体の母の実家にあったのだろうか。それとも、母が愛用していて、(母の実家とは別と仮定して)作中主体の家にあるのだろうか。前者であれば、作中主体の祖父母が捨てずに取っておいていたということになる。後者であれば、母自身が旧姓の書いたものさしを大事に使っているということになる。

いずれにしても書いてある名前が旧姓であるからこそ、愛着のわく「もの」になっているわけだ。「もの」という題で「ものさし」という思い出の「もの」を持ってきたというのが秀逸である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?