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無言とは静かな会話 その視線黙って追えば春のほころび/庄野 酢飯

3月23日(水)の11時部屋の題「言」の短歌。

唯一「無言」で「言」を詠み込んだ歌。「静かな会話」であるから、ここでの「無言」は複数人でいるのに黙っていることを表している。

当該歌は二人でのひとときだろうか。恋愛関係にあるか、パートナー関係にあるか。それとも友人どうしや家族どうしか。

作中主体は相手の視線を追う。主体も無言なので「黙って」追う。「どうしたの?」などといったやぼな言葉は発しない。

相手の無言の視線が教えてくれたのは、「春のほころび」であった。梅や桜だろうか。「ほころぶ」という動詞には、花のつぼみが少し開くという意味がある。

この他に「笑顔になる」「鳥が鳴く」という意味もある。相手の視線の先には、幼い子どもの笑顔があったかもしれないし、ウグイスなどの鳥のさえずる姿があったかもしれない。

「春の」と季節のみの提示で曖昧に言って、「ほころび」と仮名表記にする(ひらく)ことで、解釈の幅を持たせてくれている。

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