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祝福が届くようにと空たかく紅白でありつづける鉄塔/夢路ミナ

2022年4月12日(火)のうたの日19時部屋の題「鉄」の短歌。

紅白の鉄塔と言ったら一番に東京タワー(日本電波塔)が思い浮かぶ。1959(昭和34)年にテレビ放送が本格的に開始されるのを前に、1958(昭和33)年末には開業することが決定していた。関東一円(半径100km)に電波を送るためには、鉄塔の高さが333m必要だったという。三並びというのも縁起がいい。

そもそもなぜ紅白なのかというと、航空法では高さ60mを越える建造物は紅白に塗装しなければならないと定められているからだという。この塗装を昼間障害標識という。

これを踏まえるとこの歌の対象は東京タワーに限らず、そこかしこにある鉄塔とも取れる。

法で定められているのだから、「空たかく紅白でありつづける」というのは当然のことなのである。しかし、そこに意味を見出して「祝福が届くようにと」、あたかもその鉄塔自体がそうしているかのように、表現したところにこの歌のおもしろさがある。祝福という宗教的な雰囲気の漂う語の選定が厳粛さを添えてなお一首を際立たせている。

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