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弱さに心を傾ける

 今となっては四半世紀程前の昔のことになるが、国際会議と研修会への出席のために東南アジアの国を訪れたことがある。会議のテーマは「アジアの諸問題を考える」だった。
 二週間にも及ぶ国際会議での提供される食事は、すべて給食。
給食が出るとは知らずに、日本を出発前にグルメ食のガイドブックを幾度も読んで心弾ませて何を食べようかと期待していた。それなのでプラスティック容器に盛られた給食というのは侘しく感じ、しかも、お世辞にも美味しいとは言えなかった。けれども、それはその国の平均的国民の食事であり、それを食するのもひとつの研修という意味なのであった。
 ガイド本のものなどは、あくまでも、その国では経済的に豊かな人たちが食べる物であって、土地の人たちが必ずしもグルメ食を口にしているわけではないのだと知らされ、20代の私は頭を殴られたようなショックを味わうこととなった。
 さらに衝撃を受けたのは、この旅で、ボート・ピープルと出逢ったのだ。
戦争・紛争・人種理由や政治的、宗教的理由などで故郷の住むところを失い国外へ逃げるボート・ピープルたち。
 ボート・ピープルである難民の方々との出逢いと、世界にはグルメ食などとは無縁な人たちが居るという衝撃は、私の人生に大きな影響を及ぼした。
 社会的弱者が居ることに心を寄り添わせる必要があるのだと、あの旅で身を持って知った。
 弱者が居るという現実は、何も東南アジアに限ったことではない。この日本国内に於いても不条理の中で生きざるを得ない多くの人たちが、どれほど居ることか!
 私は難民の受け入れの是非を議論したいわけではない。寄付することを積極的に促そうとも思っていない。
「弱さ」に、静かに心を傾け寄り添わせて生きていく者で在り続けたい。

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