初売り中学生
恵介は中学一年の男の子。
毎日野球に勤しむ普通の男の子。
中学に入り身長もかなり伸びた。
その高さは電話ボックスの半分ぐらいである。
夏には声変わりを終え
大人の毛もうっすらではあるが生えてきた。
異性を意識する年頃。
恵介の所属している野球部は平日の
放課後はもちろん、土日にも
学校のグラウンドで練習の日々が続いた。
野球部の練習は学校が冬休みに入ると
オフシーズンに入る。
怪我をしやすい冬にはよくあることだ。
恵介は冬休みに入り楽しみにしていることがある。
家族や親戚から貰えるお年玉である。
毎年お年玉でオモチャを買ったり
ゲーム機を買ったりしていたが、
今年は違った。
お年玉で服を買いたいと決めていた。
今までは母が買ってきた服を着ていたが
中学にもなると自分好みの服が欲しく
なったのである。
恵介は今年もらったお年玉を握りしめ
同じ野球部の友達の山本と服屋へと向かった。
恵介が出かけて1時間もたたずに
家のインターホンが鳴った。
母は手ぶらで帰ってきた恵介と
恵介の悲しそうな表情を見て
不思議に思った。
どうしたの?
母が尋ねると恵介は悔しそうな声色で答えた。
だって店内はお客さんで賑わっているのにさ
外の看板にはこう書いてあったんだ。
去れ。って
完
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