見出し画像

遠くまで見える光(設問がある物語 20)

「さあがらくたは集まったかい?巣に帰るときがきた!」

僕らはもてるだけのがらくたをもって旅をする。旅には1つルールがあって、1000歩に一つ、がらくたを植えることになっている。たくさんあるうちのどれを選んでもかまわない。どれだけ悩んでもかまわない。この道はとても広いから、植える場所に困ることもない。

僕のがらくたは素敵なものもあったけれど、変わったものや、よくわからないものが多かった。小さいもの、大きいもの、中くらいのもの、とにかく色々だった。

はじめは途方に暮れたけれど、だんだん僕なりのスタイルができた。それはこうだ。まず1歩めを踏み出す前に次に植えるものを取り出す(僕は無作為に取り出すことにしている)。そして「これにふさわしい場所はどこかな?」と見当をつける。遠くても、1歩をできるだけ大きくとればわりあい行けるものだ。逆に近くにいい感じの場所があれば、小股で進んだり、少し迂回したりする。

そんなやり方で、たとえばギザギザの10円玉を、似た色の土に植えた。ちょっとかすれる青い万年筆は小川の脇に植えた。ふわふわのショートケーキは花畑に植えた。針金をぐるぐる巻きにした小さなわっか(指輪?)は、さらさらの砂に植えた。厳重に鍵がかかった謎の箱は、頼りがいのある大木の下に植えた。植えて、進んで、植えて、進んで、どれくらい繰り返しただろう。荷物は小さくなっていた。

僕はずいぶん遠くにきていた。

僕はさいごのがらくたを、小高い丘の、小さな草原にそっと植えた。そしてゆっくり振り返った。すると何かがきらきら光っているのが見えた。ああ、きっと1000歩前のがらくたが芽吹いたのだろう。遠くを見るともう1000歩前の光がある。そして、もっと前の光も。僕はその光を見て、光っているなと思った。よかったなと思った。素直な気持ちで、さよならと思った。

こうして抱えるだけ抱えたがらくたを埋葬しながら、それはきらきらと光りながら、僕たちは帰るべきところに帰る。
ただいま。

おかえり。

✂︎

ここまでで物語は終わりです。

あなたへの設問

設問1
あなたが物語の語り手だったとして、荷物に入っていそうなものを1つ以上挙げなさい。(30字程度まで)

設問2
「死」について自由に書きなさい。(1500字程度)

#物語 #エッセイ #小説

高濱です。私の小さな物語を読んでくれて どうもありがとうございます。沁みます…。 読んでくれたことがうれしい。ありがとう!