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「山田太郎」の場合

「山田太郎」の場合

 山田太郎は、地方の進学校に通う高校生だった。しかし、彼の心は常に落ち着かず、学校のカリキュラムに対する不満が募っていた。教師たちの指導は、彼の求める知識と興味に応えられるものではなかった。ある日、彼は物理の授業中に内職をしていた。それは、次の単元の勉強を先取りして進めるという、彼なりの学びの方法だった。

 しかし、それを見た教師は激怒し、太郎を厳しく叱責した。「今ここで学ぶことが大事なんだ!」と、教師は力強く言い放ったが、太郎の心には響かなかった。彼は自分のペースで、自分の興味に従って学びたいと強く感じていた。

 その日の放課後、太郎は学校の事務室に行き、卒業に必要な出席日数を確認した。そして、冷静に考えた末、太郎は登校を控える決意をした。彼は自宅での学習に専念し、医学部受験に向けた準備を本格的に始めたのだ。

 最初は学校から何度も連絡が来た。「学校に戻って来なさい」という催促の電話や手紙が、矢のように届いた。しかし、太郎はすべて無視した。彼は自分が信じる道を歩み続けた。

 数ヶ月後、太郎の努力は実を結んだ。彼は国立医学部に合格したのだ。合格通知を手にしたとき、太郎は心からの達成感を味わった。

 卒業式の日、太郎は久しぶりに学校に顔を出した。彼を見た教師たちは驚き、そして一様に黙り込んだ。太郎は教師たちに向かって、静かに頭を下げた。彼は感謝の気持ちを伝えたかったが、それよりも自分の選択が正しかったことを確信していた。

 そして、太郎は誰にも振り返らず、自分の道を進み続けた。彼の心には、新たな挑戦への意欲と、独自の学びの道を選んだ誇りが満ちていた。

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