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舞子の場合

 舞子は、小さい頃から母親に支えられて育ってきた。母親は一人で彼女を育てるため、朝から晩まで働いていたが、常に娘の未来を見据えていた。
「お前は賢い子だ。医者になって、たくさんの人を助けるんだよ」
 と、母はいつも舞子に言い聞かせた。

 舞子もその言葉を胸に、国立医学部を目指して勉強に励んでいた。しかし、高校に進学してから、彼女の興味はバレーボール部に移っていった。部活での練習は厳しく、試合での勝利は何よりも嬉しかった。舞子は次第に、部活が生活の中心になっていった。

 ある日、部活の顧問からキャプテンに推薦された。舞子は嬉しさで胸がいっぱいだったが、それが彼女の受験勉強に影響を与えることを予感していた。しかし、キャプテンという責任感とチームメイトの期待に応えたい思いが強く、勉強よりも部活を優先してしまった。

 月日が経ち、受験の日が近づくにつれ、舞子は焦りを感じ始めた。部活での疲れがたまり、勉強に集中する時間も体力も残っていなかった。それでも、彼女は何とか合格できると自分に言い聞かせた。

 しかし、試験の結果は無情だった。舞子は不合格だったのだ。母親に結果を報告するとき、舞子は涙をこらえることができなかった。母親はただ静かに彼女を抱きしめ、「大丈夫、舞子。まだこれからよ」
 と優しく言った。

 その言葉は慰めにはならなかったが、舞子は母の期待を裏切ったことへの罪悪感を感じつつも、自分の選択を後悔していた。医者になる夢は遠のいたが、彼女はこれからどうすべきかを真剣に考え始めた。舞子は失敗を糧に、新たな目標を探し始めることを心に決めた。

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