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最大600万円の助成!使いやすくなった業務改善助成金の活用

【本記事のサマリ】
●厚生労働省の「業務改善助成金」の要件が緩和・拡充された
●この助成金は設備投資等による生産性向上と賃上げが要件
●条件を満たせば、パソコン・タブレット・スマホや車両なども助成対象
●対象となる取り組みは「生産性向上のヒント集」を参考にするとよい
●無理のない賃上げの設定が最重要


こんにちは。UI志援コンサルティングの池田です。
長引くコロナ禍で国や県でさまざまな企業支援策が講じられてきました。

今年度はコロナ禍での経済支援策として国の補助金政策が活発に行われており、事業再構築補助金やものづくり補助金といった、新規事業を展開するための大型設備投資用の補助金が目立っています。
これらの補助金は主に新規事業への取り組みを対象としているため、既存事業の底上げを図ろうという事業者の方には合致せず、不公平感を感じている方もいらっしゃると思います。また、それらの補助金は申請準備に長い時間をかけて事業計画を綿密に構築する必要があるうえに採択率がおよそ30~50%程度であり、狭き門でもあります。

今回ご紹介するのは厚生労働省の「助成金」です。厚生労働省の「助成金」は要件を満たせば支給に至るものであり、同省の施策によりさまざまな助成金が用意されています。特に、今注目なのが、今年8月に要件が緩和・拡充された業務改善助成金です。

申請に際してはこちらの公式HPをご覧ください。
厚生労働省「業務改善助成金のご案内」

業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、生産性向上と賃上げに取り組む企業を助成するという制度で、
①設備投資等によって生産性を向上させ、
②所定の賃上げを行った場合
に、その設備投資等にかかった費用の一部が助成される、というものです。

厚生労働省の制度なので、企業に"賃上げ"してもらいたい、特に事業所内の"最低賃金の引き上げ"をしてもらいたいというのが政策意図になります。

事業所内最低賃金の賃上げ幅や賃上げする人数に応じて助成される金額の上限が異なり、下図のように定められています。

業務改善助成金_助成金額表

図.業務改善助成金制度概要(厚生労働省 「業務改善助成金について」より)

今年8月に緩和・拡充措置

上記の図中、赤く囲われている箇所が今年8月に新たに設けられた箇所で、
・賃上げ幅が45円以上の場合の助成区分
・事業所内で10人以上の賃上げを行った場合の助成区分
が新設されました。おそらく、30円までは賃上げできても、60円までは厳しいという事業者の声が多かったのだと思います。


加えて、これまで助成対象外であった、
・パソコン、タブレット、スマホ、などの端末機器や周辺機器
・自動車(※乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車)
が、30円以上の賃上げの場合に対象となります。
図中、助成率に記載のある「生産性要件」については後述します。

どのような取り組みが対象となるのか?

生産性向上の取り組みと一口にいっても、具体的にどんな取り組みをすればよいのかイメージしにくいと思います。厚生労働省では「生産性向上のヒント集」をいう資料を公開していて、その中で生産性向上の取り組みの事例を紹介しています。申請を検討される際はぜひご一読ください。

業務改善助成金_生産性向上のヒント集

「生産性向上のヒント集」に記載されている生産性向上の取り組みはざっと以下のようなものがあります。

・業務改善コンサルティングによる生産性向上
・製造工程の効率化と新商品開発
・職人技に依存せずに生産できる設備の導入と生産量の増量
・種まきや農薬散布などの農作業効率化と収穫量の増加
・システム導入による顧客管理情報の効率化

業務改善助成金の支給要件

国内で事業を営む、個人事業主・中小企業で以下を満たすことが支給要件となります。

●賃金引上計画を策定すること 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
●引上げ後の賃金額を支払うこと
●生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
 (1) 単なる経費削減のための経費
 (2) 職場環境を改善するための経費
 (3) 通常の事業活動に伴う経費
などは除く。
●解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など

助成率割増となる「生産性要件」

以下に示す「生産性要件」を満たすと、上述の図中に記載があるように助成率が割増になります。


●助成金の申請時の直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること、またはその3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること「生産性要件」の算定の対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないこと。
●「1%以上(6%未満)」伸びている場合は金融機関から一定の「事業性評価」を得ている。

「生産性」は次の計算式で表されます。

業務改善助成金_生産性

図.生産性の計算式(厚生労働省 「生産性向上のヒント集」より)

【重要】申請の際に注意すべきこと

大がかりな事業計画書の作成などが不要なため、申請の敷居が低いように見える業務改善助成金ですが、注意が必要です。
ものづくり補助金などの経済産業省の補助金が生産性を重視するのに対し、厚生労働省の助成金が重視しているのは「賃上げ」である点です。
高い助成率が魅力な業務改善助成金ですが、特に賃上げ対象者が多い場合は慎重に検討しないと「賃上げ」が後々首を絞めかねません。

無理のない賃上げ幅の検討を行い、この制度を有効活用いただければと思います。業務改善助成金についてご相談がありましたら遠慮なくご連絡ください。

(UI志援コンサルティング 池田)

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