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とある。 episode 10 聴こえる


episode 10


窓を開けると
カラリとした優しい風が部屋へとやってきた。

秋分という文字の通り
この日吹く風は、夏と秋を分けていくようだった。


朝7時
今日もアコーディオンの音色が聴こえる。

真夏の暑い朝も
秋を迎えたこの日も

馴染みの良い音色が外から聴こえる。

家の目の前、公園の木陰の下
誰かが毎朝練習しているようだった。


誰かの奏でるという日課は
聴くという形で、私の日常の一部となっていた。

音楽のことは詳しく分からないけれど
ただ、美しいな。心地よいな。
そう思える今日があるって良いなと思った。


私の日課は
誰かの日常の一部になることがあるのなら

朝聴く音も
朝掛ける声も、言葉も
できる範囲で優しくいたいなと思う。


誰かのアコーディオンの音色は
私に優しさをくれた。

この優しさが心に残っているうちに
おはようを優しく言おう。

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