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30.朝活と美姉さんと制服が劇似合わない愛でる系なおばちゃん。

早速、翌日から朝活に挑戦してみた。

5時半を起床時間にし、6時半から出勤時間の8時迄を自分の時間とするべく実践。それまでは8時頃に目覚めて、握り飯とカップ味噌汁と珈琲を飲んだら、着替えを済ませてスグに出掛けるという毎日だった。

最寄りのT駅から横浜駅に出てJR線で関内駅に出るのだが、大体、横浜駅でJR線に乗り換える頃から便意に襲われ、間に合う時は会計事務所のビルのトイレ。間に合わない時は関内駅、または途中のオフィスビルのトイレで、いつもギリギリで大便をする。こんな状態が毎日続いていた。

朝型生活に挑戦し始めてから、ギリギリ目覚める事は無くなったものの、5時半に起きても、2度寝してしまう事が多く、自分の時間を作る挑戦は苦戦した。

本多さんからは、「失敗は無いですからね。何度も挑戦する内に次第に出来るようになりますから、挑戦を辞めさえしなければOKですからね。あと、その何度も挑戦するという事自体に意味がある。挑戦が得意になるんです。だから、いい感じで苦戦してますよ」という巧みな乗せ言葉に励まされながら、とにかく挑戦し続けた。

でも、何度挑戦しても、やっぱり上手くいかない。就寝時間を早めるなどの工夫もしたものの、結局、朝ダラダラするだけ。大便だけは家で済むようになったものの、とてもじゃないが自分の時間を有意義に過ごす所までは行かない。

その後も本多先生のアドバイスを元に工夫を重ねた。まず、朝近くのカフェへと出掛ける事にして、そこで本を読むようにした。最初は、本を読むと5分で眠くなり、結局カフェの机で突っ伏して寝てしまい首が痛くなる日が続いた。

それでも繰り返している内に、初めて、6時半~8時をフルに活用する事が出来た。ただし、4回に1回程度。夏の暑さが厳しくなると、カフェに行くのもしんどいと思うようになってしまい、結局、2度寝の段階に逆戻り。

でも、本多さんに励まされ、何度も何度も挑戦し続けた。が、やっぱり段々面倒になってしまい、再び2度寝に逆戻り。だから、朝カフェそのものを楽しむという要素を加えてみた。

6時半過ぎに家を出て、空いている時間に事務所のある関内駅へと行き、7時過ぎに朝からやってるカフェに寄る。幾つかカフェを巡っている内に、朝活中の美姉さんに、朝カフェバイトの癒やし系スタッフ姉さんのダブルご褒美のカフェを発見。

外から見て、何かこのカフェ、朝活男子多いな~と思って見ていたのだが……。いや大事よ。こういうのってね。

それ以来、朝カフェが楽しみになり、全く苦では無くなった。それも、俺特有の図々しさを発揮し、美姉さんとは「おはようございます」と声掛けする関係に。最初は俺から一方通行だったが、変にナンパしたりせず、挨拶だけを繰り返していたら、その内向こうからも声掛け。

そして名刺交換。名刺を見てビックリ! 何と弁護士さんだった。

何か困った時は姉さんを頼ろうと思う。っていうか姉さんを頼りたい……。何か民事くらいの問題起こすか? いやダメか。

最初は姉さん達をモチベーションにしていたものの、姉さん目当ての朝活朝カフェを繰り返している内に、段々自分に適したリズムみたいなのが分かってくる。丁度良い睡眠時間。起きるタイミング。起きる方法。意識の持ち方などなど。

夏前から始まった挑戦は秋の終わりには習慣になっていた。

積み重ね=習慣の効果は凄いモノで、ただ朝早く起きるというだけではなく、主体的に自分の時間を作る、拵える、配置するという、内面的な変化が、もう俺の中では革命的だった。

時間が濃くなるというのも変だが、認識とか意識が変わったからだと思うが、それまでは大抵仕事では時間に追われるか、ただ過ぎていくに過ぎなかった時間が、自分で時間を制するというと言い過ぎかもしれんが、時間をマネジメントしているという感覚になっていった。

サッカーで、ディフェンスながらも、受け身じゃなく、コチラから意図して仕掛けているあの感覚。って言ってもサッカー経験者じゃないと分からんと思うが、要は、追われてない。追い込まれてない。振り回されてないのだ。

カフェの癒やし系スタッフ姉さんは、大学生だったのか? しばらくすると辞めてしまった。その後、新しくシフトに入った制服が激似合わない、恐らく子育てを終えたくらいであろう母ちゃん系スタッフさんになったら、目に見えて朝活男子の数が減った。男って……。しょうもねえ。

ただ、この母ちゃん系スタッフさん、居るだけで場を明るくするような凄い人で、しばらくすると、朝活女子の数が増えて、それに釣られるようにして朝活男子の数も増え、やがて白髪交じりの朝活壮年紳士の数も増えた。

お陰で、朝なのにメッチャ混むカフェになった。

面白いよね。俺はこの制服が激似合わないって所が肝だと思う。通えば通うほど愛着が湧く。それってこのズレ具合にあると思う。愛でるって能動性を引き出してくれる。母ちゃん系スタッフさんが、あんまりに良い人だから、見いだそうって意識になるんだよね。

だから、白髪交じりの壮年紳士にも好まれるんだと思う。花鳥風月を愛でたくなるお年頃(老眼もあるしね)って何でも見い出したがるからね。 月なんて望遠鏡で見たら凸凹でしか無いんだから。あの凸凹、どう考えても兎じゃねーけど、それを兎だって言い張るって、愛でる精神でしょ!

そういうのを引き出す凄い人なんだよね。


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