マガジンのカバー画像

【掌編物語】ごく短い物語集

21
掌編サイズ(大体800-2000文字程度)の物語を載せています。
運営しているクリエイター

#創作掌編

やらずに後悔する方がマシ

HMさんとは、知り合いの社長さんが主催した懇親会の会場で出会った。懇親会は主催者である社長さんの弟が経営するレストランを貸し切った上で開催されたのだが、レストランの広さに比べ参加者が少ない何だか寂しげな懇親会だった。(昨年は会場を埋め尽くすくらいの人が居た) 受付で参加費の支払いを済ませると、渡された名刺サイズの案内に従い指定された席に座った。先に隣に座っていたのがHMさんで着席するや否や俺の方から話しかけたのだが、見知らぬ人同士の会話が始まる前の微妙な間や、「これから話し

紹介

幼馴染みからの電話 看板の取り付け作業が終わり、作業用の工具箱を手に車に戻ると、ダッシュボードの上の携帯がカタカタと音を立てフロントガラス沿いに移動していた。手に取り液晶を見ると、幼馴染みの秋子からの電話だった。 「もしもし秋子」 「翔太、今大丈夫?」 「大丈夫、丁度、今仕事終わったところだよ」 工具箱を地面に置く。 「ホント。……。あのさ~、例のT川君の件だけどさ……」 「あ~。OK。今日はもう帰るから、ええと、じゃあ、喫茶店シカゴで待っててよ」 「分かった。何分くらい

二巡目の無い整体院の謎。

私は新卒で中堅の製薬会社のMRに入社、その後、病院やクリニックの開業支援・経営支援を行うN社に転職し2年前に独立。独立後は、前職の経験を活かし、主に治療院、美容サロン、個人経営のクリニックの経営支援をしている。 独立後は、古巣のN社から流れてくる案件のお陰もあり、収入も安定しており、そろそろ、個人事業主からの法人成りを検討している頃に、ちょっと特殊な案件に関わる事になった。 その特殊な案件は古巣N社のA先輩からの紹介だった。A先輩は、在職中はもちろんだが、独立後も、古巣N