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ばんこくの居酒屋「いもや」はもっと見直されていい

 ここ10年くらいのタイしか知らない人には信じられないかもしれないが、それ以前のバンコクは和食店がそれほど多くなくて、在住者はわりと和食に飢えていた。今だと日本の有名店や、日本で実績のある経営者や料理人が和食店をやっていて、だいぶおいしい和食にありつけるようになった。

 一時期は香港やシンガポールの駐在員がバンコクの和食バラエティーの豊富さとおいしさを羨ましがっていたほどだった。それ以前は和食店が少なく、どんなにまずくても客が入った。それだけ優良店は貴重だった。だから、2000年代初頭以前から営業している和食店は数えるほど残っていない。時代が変わって、まずい店はどんどん消えていった結果だ。

 そんなずっと前からやっている店の中では「いもや」はもうちょっと評価されていいのではないかと思う。ずば抜けておいしいとは言えないが、それなりのクオリティーを維持していて、日本のチェーン居酒屋のような無難さがある。ずっと前のバンコクの和食店をそのまま残している感じがして、タイが長い人には落ち着ける店だと思う。

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 いもやは知っている限りではバンコクに2軒、シーラチャーとチェンマイに1軒ずつあるはず。他県の店は入ったことがないが、バンコクはわりと立地がよく入りやすい。一番都心にあるのが、スクムビット通りソイ24だ。エンポリアムの出入り口のすぐ横のビルにある。

 店内の構造がよりいいのはスクムビット通りソイ53の方。ここは奥に個室があり、タバコも吸える(今も吸えるかは不明)。出版関係者で飲み会を開くときによく利用した。

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 いもやの名称の由来はこのメニューにある。って、全然知らなかった。これを知っている人なんてバンコク在住でもかなり少ないと思う。

 いもやのやは安く。実際に安いのはありがたい。タイ料理に比べればそれなりの値段だが、近年進出してきた和食店と比較すると安い。確かドリンクが安いという印象。

 タイの和食店がわりと高いのは意外とアルコールの値段設定にあることも。たとえば生ビールが90バーツと110バーツではだいぶインパクトが違ってくる。5人でひとり5杯飲んだとして、前者だと2250バーツ、後者では2750バーツとかなり違う。

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 いもやのメニューは基本的には無難なものばかり。これといった特色はないけれど、ここの女将さんに話を聞いたら、女将さん自ら日本に買い出しに行って、食材を仕入れてきているとか。最近は商社が増えてきて、日本のいいものを輸入代行してくれるわけで、このおかげでバンコクの和食がだいぶ向上した。ところがここは自前で仕入れをしているということで、昔ながらの営業スタイルを貫いているらしく。

 そんな自前食材を使った料理の中でおすすめしたいのが、イカの沖漬け。日本の漁師に頼んで、獲れたてを生きたまま醤油ダレに漬け込んで持ってきているのだとか。こういう時世なので今はどうなっているのかわからないが、これは結構おいしいし、おすすめだ。

 昔ながらの安っぽい居酒屋というイメージがややあるが、いもやはわりといい店だと思う。ほかに残っている昔からの飲食店の中ではかなり優れている。

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