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日本酒を思いっきり飲みたい

 基本ビール党を気取っているが、日本酒も好きだ。あとは紹興酒も。ウィスキーも嫌いではない。焼酎、赤ワイン、白酒(中国のパイチューという酒)は苦手だ。赤ワインはグラス1杯で泥酔レベルになるし、白酒は上海で死ぬ思いをしたことが理由だ。焼酎はだいぶ克服できた。というのは、バンコクの会社員は焼酎しか飲まない時代があった。前職で働いていたときは今ほど和食店も多くなくて選択肢が少なかったのもあるが、焼酎しか置いていない店ばかりだった。ボクは本当は日本酒を飲みたいのだ。

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 2010年ごろから急激に日本人や日本人向けサービスが増加した。2013年ごろにタイ航空が札幌直行便を開設し、タイで雪まつりがトレンドになった。それを受けて、同年7月くらいから日本政府はタイ人への短期査証を免除した。そうして、日本観光が大ブームになって、タイ人の和食好きも加速し、いよいよタイ国内の和食店における日本酒の需要が高まった気がする。

 そんなときに、この「折原商店」がタイに進出してきた。日本酒の専門店ということで、なぜか巡り巡ってオープニングセレモニーに招待いただいて、取材を兼ねて足を運んだ。この日はバンコクに来て以来、初めて日本酒を心行くまで堪能した日になった。

 ボクは20代に入ってからずっとタイばかりなので、日本のことをあまりよく知らない。大戸屋も幸楽苑も、そのほかの有名ラーメン店も、タイに進出が公になると日本語メディアやブロガーが喜んでいたものだが、そもそも知らないので、ボクはなんの感動もない。

 この折原商店も日本では「角打ち」で有名な店らしく。角打ちって言葉を知らなかった。聞けば聞くほど、それって酒屋での立ち飲みじゃなくて? と思うのだが、みんな角打ち角打ちって言う。

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 セレモニーが始まるちょっと前にお伺いして、挨拶をして、店内も人がいない間に見せてもらった。衝撃的だったね。この品揃えは。バンコクでこれだけ日本酒がずらりと並んでいるところを眺められるなんて、それまでは思いもしなかった。

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 しかも、徳利やお猪口なんかもお洒落なものを売っている。立ち飲みってレベルじゃなくて、高級店のような雰囲気だった。焼肉チェーンの牛角は確かタイより先にシンガポールに進出していたと記憶している。そのときに高級路線で出店してヒットした。だから、日本のスタイルを踏襲する必要はなく、ガラッと変えた方がいい場合もある。

 とにかく、感動した。日本酒が楽しめる時代が来た。オレの時代が来た! とさえ思ったものだ。

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 店にはヤキトリ店も併設していて、食事もいちいちおいしい。素晴らしい店だと思ったよ、ホント。でも、実はそれ以来ここに行っていない。

 気持ちは本当に行きたい。けれども、日本酒を独りで飲むのはまだちょっとボクにはハードルが高い。長きに渡って日本酒に接して来なかったので、日本酒そのものが神聖な気がしてきている部分もある。

 値段も、今でこそ日タイの協定のひとつであるJTEPAだったかによって、日本産の日本酒や焼酎は輸入関税がゼロになっているはず。しかし、国内の税金諸々だとか、輸入業者が免税を価格に反映していないからか、結局日本産の酒は値段が今も高い。だから、日本酒の格がより高い気がしてしまう。

 とはいえ、このように日本酒を飲む機会が増えたのだから、今後は日本酒をどんどん消費していきたい。しかし、身分不相応な気がしてひとりではなかなか行きづらい。だから誰かと一緒に、と思うのだが、かといって日本酒好きがボクの周りにいないのも現実だ。

 以前会社員に焼酎が人気だったのは、蒸留酒だからというのも大きいと聞く。ビールや日本酒の醸造酒はプリン体が多いとメディアが煽ったのか、好まれなくなったようで。

 そして、不幸にも周囲の人は多くが痛風だとか、ちょっと酒で身体を壊したような人ばかりだ。ボクなんかが一番なりそうな体型をしているが、普段飲まないので意外とそうはならない。だいたい独身の人かな、痛風になったりするのは。毎日、最低でも缶ビール1本は飲んでいるらしいから、そういう人は。

 おかげで誘っても日本酒を飲みに行く人がいない。残念である。鳥波多゛の日本酒も好きなのでよく行くが、こっちならハイボールもあるし、誘いやすい。誰か折原商店に一緒に行ってくれないかな。

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