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日本にあってタイにないもの【ジビエ料理編】

 日本だとジビエ料理を売りにした飲食店がある。当たり前の話、そういう店はジビエを提供する店だ。タイにも野生肉を売りにした店があるものの、実はジビエ料理店はひとつも存在していない。日本語でタイ国内にある飲食店を検索するとジビエ料理店がいくつか出てくるが、法的にタイではジビエを提供することができないからだ。その点で言えば、ジビエもタイにあってないものであると言える。

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 日本は山が多く、野生動物もたくさんいる。タイも北部などは山岳地帯になるので、そこに野生動物がいる。珍しいところではゾウなんかもタイには野生でいたりする

 また、タイは銃社会でもあるので、日本より容易に猟銃を手にすることができる。北部には猟師もいて、野生動物を狩って食している世帯もある。タイは魚釣りもそうだが、スポーツの延長で楽しむ人がまだそれほど多くなく、猟(漁)は基本的には食べるために行われる

 国民の94%が仏教徒のタイでは殺生は基本よくないとされる。一般的なタイ人は地獄界と餓鬼界が同じように語られてしまう中で、タイの餓鬼には狩猟で地獄に落ちるタイプも存在する。だが、ほかの餓鬼とは違い、生前に猟師だった場合はちょっと待遇がよかったりするなど、ある程度必要悪として認められた職業(あるいは趣味)でもある。

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 タイのジビエは主にイノシシ、シカだ。これらは基本的には流通に乗ることがない。というのは、タイには「仏歴2559年食肉処理および食肉流通法」というのがあり、そこでは屠畜に関することや食肉の販売経路などに関する法令がある。

 これによれば、屠畜は許可を得た場所であること、食肉とはウシ、ブタ、鶏、その他の鳥、ヤギなどの肉を指す。その他の肉も認められるが基本的にはこれだけなので、狩猟で捕獲した肉は個人消費以外で、つまり売買することが禁じられている

 そのため、タイではジビエ料理自体が一般家庭ならともかく、外国人が行くような飲食店ではありえないことなのだ。

 ちなみに、「ジビエ」の定義をご存知だろうか。ジビエは『狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉』という意味なのだそうだ。ボク自身は地場料理のような「地」に、心停止して冷たくなった死体を表現した「冷」で地冷=ジビエなのかなくらいに思っていたら、「ジビエ」はフランス語なのだそうだ。

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 とはいえ、バンコクや近郊に野生肉を売りにした飲食店が数軒ある。タイでは野生動物を「サット・パー」という。サットは動物で、パーは林や森という意味だ。ブタはムー、ムー・パーと言えばイノシシだし、食べるわけではないが、オオカミは犬のマーにパーを合わせてマー・パーと呼ぶ。

 ただ、前述のようにタイにはジビエは存在しない。そもそも、ジビエの定義に合った肉自体がないのだから、ジビエ料理を出せる店がない。それでも野生動物と銘打っている店がある。

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 こういった店で食べられる肉は、シカ、イノシシが中心で、ほかにはカエル、鳥などになる。つまりは、法令で指定される食肉主要メンバー以外の肉とイメージするといい。中にはワニなどを置いている店もある。

 これらは結局のところ、「野生」ではない。先の法令でその他の肉も許可を得た屠畜場で処理されていれば問題ない。あくまでも狩猟で獲った肉が違法なので、シカもイノシシも指定屠畜場で食肉になっていればいい。だから、こういった店で提供されるイノシシやシカは牧場で育てられた肉なのである。こういった店では珍しい肉を「野生肉」としているだけなのだ。

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 最近、ボクは日本に行くと日本橋で飲むようになっているのだが、一昨年行った居酒屋はジビエ料理を売りにしていた。ただ、日本では狩猟期間が決められているし、あくまでも狩猟によって得られた肉がジビエなので、ないときもある。行ったけどなかったということもあった。

 そんな中でその店は安くておいしかったので、滞在中に2回も行った。だが、全然店名を思い出せない・・・・・・。

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 そこは豚刺し(若干ボイルしているが)とか、馬刺し、馬のレバ刺しがあった。正直、ジビエよりもそっちの方の印象が強かった。

 馬肉がタイにはない。いや、あるにはあるけれども和食店にしかなく、しかも凍っていることが多いため、日本で食べた方がずっと安くておいしいから、馬刺しがあるとどうしてもそっちの印象が強くなる。

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