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1年前にこんな世界になると誰が思っていた?

 2020年の春節(中国旧正月)の元旦は1月25日だった。たまたまこの日、同じ日程でテト(ベトナム旧正月)に入った知人がハノイから休暇で来ていたので都心に出ていたが、マスクをして歩いている人はほとんどいなかった。もちろんニュースではすでに新型コロナウィルスだったか、そんな名称は出ていたが、誰も重要に受け止めていなかったでしょう。

 タイだと、2003年ごろのSARS(重症急性呼吸器症候群)に始まり、鳥インフルエンザだとか、中国方面からのいろいろな新病原体が取り沙汰され、そのたびに大して自身を脅かすものではなかったから、慣れていたこともあったと思う。2010年ごろにもなんだったか病気が流行して、当時勤めていた会社からマスクが支給され、ボクも日本出張時に大量にマスクを買ってきたこともあった。でも、結局はその程度で、実際、マスクはすべて使わずに余ってしまったほど。

 2020年で言えば、確か1月頭にムアントンタニーで国際旅行博が開催された。日本観光が最も注目されることから日本政府観光局がブースを大量に押さえるので、ほとんど日本旅行博というイベントだ。去年もたくさんの企業や団体が日本からわざわざ参加していた。あの時点で誰がこんな事態になるなんて予測できていたか。

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 数々の新病によってタイ人だけでなく、在住外国人はみな慣れてきてしまっていた。タイの場合、2020年1月2月は凶悪犯罪多発で、注目度はそっちが高かったくらいだ。ナコンラチャシマー県のターミナル21で発生した兵士による大量殺人は春節もとっくに終わった2月8日に発生している。

 バンコクでは春節の25日前後にマスクをしている人はごく一部。100人にひとりいるかいないかレベルだったほどで、誰にも危機感はなかった。むしろ、マスクしている人は警戒しすぎでしょうという見方もあったくらい。2月に入ってタイ国内で感染者が発見されてからは少し増えたが、その数も落ち着いてしまうとまたマスクをする人が減った。

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 ボク自身もSARSを台湾で目の当たりにしていたこともあって、「いつものこと」となんら気にしていなかった。もし周囲がマスクをするなら、逆に自分はしなくていいのではないかくらいに思っていた。

 ボクがいよいよコロナ禍が洒落では済まされないと感じるようになってきたのは、3月に入ってからだ。ベトナムから危うく帰ってこられなくなりそうになってからである。あのときは、1年後どころか、5日後すら予測できていなかった。その顛末は下記で書いた。

 帰りの飛行機のチェックイン時にはちょっともめごとも起こって、こういうときに限ってタイ人スタッフ、あるいはタイ語ができるスタッフがいない。英語でしか抗議できなくてどうしたものかと思ったものの、こういうときは案外スラスラと出てくるものだね、英語。

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 春節のときはタイも真っ赤に街が染まる。中華系タイ人だけでなく、タイ族系のタイ人も急に赤い服を着だしたり。中国からもたくさんの観光客がやってくる。日本人の何倍もの数が通常時に来るので、春節はさらにたくさんの観光客がやってくる。それが今やほぼゼロにまで落ち込んでいるくらい、タイの様子が変わってしまった。

 あの時点で誰もこうなるとは予測できなかったわけだ。ということは、これから先も誰も予測できない。ボクはベトナムから帰れなくなりそうだったトラウマから、楽観視してダメになるより、強く警戒して「思ったほどではなかったな」と思いたい。だから、予想としては年内中に元にも戻ることはないだろうと思う。普通に世界を行き来できるようになるのは2023年以降かな。なんとなくそう思うことにしている。

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