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車種の違いを観察するのも東南アジア旅行のおもしろさ

 タイやラオス、ベトナム、カンボジア辺りは同じ国、同じ文化のようなイメージを持つ人も少なくないかもしれない。実際タイとラオスはルーツと文化がかなり近いので、言葉や生活習慣がかなり似ている。しかし、当たり前だが細かいところに目を向ければいろいろと違う。国境を一歩跨ぐだけの距離でも、外国は外国だからだ。そんな違いのひとつに、走っている車の車種がある。

 タイは日本車が多いので日本とあまり変わらない風景に見えるが、細かなモデルあるいはスペックで分類すると日本と違う。似たような文化圏のラオスも意外とタイとは違う車が走っている。だから、車好きならそのあたりに注目しても結構東南アジア旅を楽しめるのではないかとボクは思っている。

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 タイとインドシナ各国――ラオス、ベトナム、カンボジアの大きな違いは、まずタイは日本と同じ左側通行であるのに対し、インドシナはすべて右側通行であることだ。これはタイがイギリスから車文化を輸入したからで、インドシナ3国とは事情が異なる。

 そういった事情もあってか、タイとラオスでは走っている車が違う。上記の日産キューブは、撮影時の2011年にはタイではほとんど走っていなかった。その後走るようになったとはいえ、おそらく正規販売ではなかったはずだ。ラオスもおそらく正規で輸入されていたわけではあるまい。

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 このフェアレディZもまたタイではほとんど見られない。この画像は2015年に撮影したもので、タイは基本的にスポーツカーはあまり正規輸入で入ることがない。日産GTRがタイで正規販売が始まっているが、それも2018年の半ばからのことだ。フェアレディZは富裕層向けの個人輸入代行業者が入れているくらいで、少なくともボクは1回しかタイ国内で見たことがない。

 ラオスの車種がタイと比べて豊かなのには理由がある。まずタイと同じように韓国車もあるが、ラオスはタイにはない韓国メーカー、そして車種があるし、中国車もかなり走っている。不思議とタイでは中国車はほとんど見かけない。ラオスを走るトラックやバスは中国か韓国製だし、中国製の軽自動車みたいなものも多く、タイでは見かけない車が多い。そのため、道路の風景がタイとはまったく違って見えるのだ。

 さらに、ベトナム戦争終結ごろにラオスで起こった革命時にアメリカなどに亡命した人たち、あるいはその子どもたちが2010年ごろからラオスに戻ってきたのもひとつの事情だと言った人もいる。亡命先で成功してかなりの金を持ち帰ってきたことで、一時期の首都ビエンチャンは活気づいた。そして、亡命で儲けた人、その金で起こった不動産バブルで儲けた土地成金などの金持ちラオス人たちの間で誰も乗っていない車を個人で輸入して乗り回すことがステータスになっていたという。それでタイとは雰囲気が違うのだ。

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 このランドクルーザーもタイにはない車種だ。撮影した2011年時点ではタイ国内でリフトアップ車もほとんど見ることがなかった。マニアックなオフロード車ファンが改造している事例はあったが、あまり一般的ではなかった。最近はピックアップトラックの車高を上げている人はよく見るが、10年前のタイではほとんど存在していなかったと記憶している。

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 ラオスは元フランスということもあってか、フランスの旧車もよく見かけた。また、こういったバイクもいろいろなビンテージ系が走っていた。

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 最近はタイでもトライアンフが出ているが、正規版は全部最近のモデルばかりで、こういった古いバイクはよほどのマニアしか乗っていない。

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 また、タイでビンテージバイクと言えば最近は大型車ばかりだが、こういったスモールエンジンの旧車もビエンチャンではよく見かけた。近年はバンコクだとホンダのカブのカスタムショップがビンテージっぽくしているタイプもあるが、バイクに関してはタイはいまだビンテージは一般的ではない。

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 これはどうでもいい画像だが、タイ大使館の前で拾ったタクシーとその運転手だ。ボクは彼をビエンチャンの岡田眞澄と呼んでいるのだが、うしろの彼の青いカローラはブレーキが一切効かなくて、ラオスとタイの国境に着く前にマジで死ぬかと思った。

 街と国境ゲートの間にビアラオの工場だったか、ペプシの倉庫があって、大型トレーラーが直進する我々を無視して門に入ろうと曲がってきた。こちらはそこそこのスピードで走っている中で道を塞がれ、当然ブレーキを踏むが、カスッカスッと音がするだけで止まらない。避けるにしても反対車線に飛び出すしかなく、向こうから来る車と正面衝突するかもしれない。幸い、反対車線に少しはみ出しつつ、トレーラーと対向車のギリギリのところで停車したので助かった。

 そう考えると、最近の車でさえもちゃんと整備できないのに、ラオス人が旧車なんか乗って大丈夫か? と思ってしまう。

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 初めてのラオスで、「ああ、ラオスっていい!」と思ったのが、この車だ。北米トヨタで売られているフルサイズ・ピックアップトラックのタンドラだ。とにかくでっかくて、本当にかっこいい。

 この車種はタイにはない。ビエンチャンも道路が狭いが、バンコクはこのサイズではちと厳しい。しかし、ラオスはディーラーに置いてあったので、そこそこに売れているのではないか。

 ボクが高校生のころ、そして運転免許証を取得したころはアメ車が大人気で、バンタイプだとアストロ、セダンだとカプリス、ピックアップはC-1500などが大人気だった。

 とはいえ、C-1500は高くて、若い人からは国産のいろいろなピックアップトラックが注目された。トヨタ・ハイラックスもそのひとつだったが、中古車が高騰して、だったらC-1500でもよくないか? という時代だったような。

 1998年に初めてタイに来たころは、タイ国内の売り上げ上位のメーカーはいすゞと日産だった。なぜなら、当時のタイではセダンよりもピックアップトラックが売れていたからだ。トヨタが世界戦略を打ち出す前で、タイ産のハイラックスもまだなかったのか、それほど売れていなかったはずだ。つまり、このころのタイは遊び、あるいは家族サービスで乗る車より、仕事で使う車が売れていたのだ。要するに車は実用的なものであり、ピックアップは日本のようにおしゃれで乗るものではなかった。

 だから、ピックアップにもいろいろな種類があって、ボクは初訪タイ時にむちゃくちゃ感動したことを憶えている一方で、がっかりしたのも記憶にある。実用的に使うこともまたピックアップの美しさではあるが、かっこよく改造されたピックアップが一切なくて、なんてもったいないのかと思ったものだ。

 それくらいボクの中ではピックアップは憧れだった。映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」でもマーティーが憧れていたのがハイラックスだ。その最高峰的なのがこのタンドラである。

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 ベトナムの車事情は正直おもしろくない。あれだけベトナム狂いのボクではあるが、車だけはあまり興味深いものがないというのが印象だ。フォードのマスタングなどのマッスルカーがホーチミンでは目に留まったのだけれども、タイも日産GTRが正規販売され始めた直後にマスタングが正規販売されているので、これといったアドバンテージを感じない。

 他方、それほど好きではない国のカンボジアは車のバリエーションに目を瞠るものを感じる。たとえば、上の白いトラックはビエンチャンでも見たタンドラだ。カンボジアでもディーラー販売をしていた。

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 これもいい。一応ハイラックスではあるけれど、右側通行仕様なので、おそらく北米から入れていると見られる。だから、エンブレムがハイラックスではなく、タコマになっている

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 カンボジアのこういった駐車場はある意味宝の山でもある。見たことのない車種が停まっていて、ついつい見入ってしまう。

 話が逸れるが、このカンボジアの飲食店は怪しいね。ネットで検索してもタイの「MK」との関係が見えなかったので、たぶん名前を勝手に使っているというか、似せているというか。

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 カンボジアのバイクもおもしろいなと思った。このホンダ・スティードもボクが高校生のころに大人気だった。当時、このバイクとヤマハSRが人気二大巨頭で、不良たちがどうやって金を集めてくるのか、カスタムをしまくっていた。ちなみに、ボクはホンダのGB250クラブマンに乗っていた。これもSR同様に単気筒エンジンで、振動と排気音はなかなかよかったと思う。

 タイでは最近大型バイクが増えているが、アメリカンはそのまま本場ハーレーが出回っている感じだ。SRは見たことがあるが、スティードをタイで見た記憶が全然ない。スティードもいいバイクだと思うんだけどね。サスもあえて見えないようにしてリジット感を醸したりと。

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 カンボジアで見かけた一番痺れた車はこれだ。初代ハマーである。完全に軍用のデザインをそのままにしたタイプである。これ以降は全然違うデザインになってしまったので、やっぱり溜まらないのがこの初代だ。

 タイでは2代目以降のハマーは走っていた。また、中国製の偽ハマーが走っていたのも見たことがある。タイ陸軍が運用するマジのハンヴィーはクーデター時に見たことがあるが、初代の民生ハマーはたぶん見たことがない。

 同じ陸にある国でもこんなにも走っている車が違う。逆に言えばラオスやカンボジアにはない車がタイでは正規販売されているというのもあるが、どうしてもないものの方に目が行ってしまうので、ラオスやカンボジアに行くと感激する。案外、観光名所じゃなく、車だけを見る旅行も楽しいかもしれない。

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