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【タイ】沈みそうな台船型フェリーは1日に何十便も運航しているのに事故を聞いたことがない【プラプラデーン郡】

 タイの乗りものといえば、代表的なものでトゥクトゥクがある。ほかにも、タイ特有というわけではなくとも、いかにもタイといった乗りものは少なくない。長距離バスなどは日本で痛車が登場する以前からかなり痛めな塗装をしていたし、バイクなら昔からスポーティーなカブが走り回っている。

 それからバンコクは東洋のベニスなどとも呼ばれたほど水路が多い。中央部は特に水辺が多いので、船も特徴的だ。手漕ぎの木造ボートは水上市場では定番だ。ルア・ハーンヤーオはトラックのエンジンなどを転用して、プロペラを長く後ろに突き出した形状をしていて、タイ以外では見ない気がする。

 そんな船の中でボクの興味を以前からそそられているのが、サムットプラカン県プラプラデーン郡のフェリーである。

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 サムットプラカン県はバンコクと同じで、チャオプラヤ河で県が分断されている。BTSのスクムビット線をオンヌットを過ぎていくと、サムローン駅から現状の終点までがサムットプラカン県内に入る。

 ちょうどその辺りに横たわるチャオプラヤ河の対岸もまたサムットプラカン県だ。プラプラデーン郡になり、この辺りは自然公園や日本製の軍艦が展示される海軍の公園などがある。

 プラプラデーンで有名なのはソンクラーンだ。ソンクラーンはタイの旧正月のことで、別名を水かけ祭りといえばわかる人も多い。この地域のソンクラーンは特に珍しい水かけ祭りというわけではなく、簡単に言えば、通常のソンクラーンよりも1週間ほど遅れて開催される。

 タイの旧正月の日程が中途半端なのは、大昔にタイで採用されていた正月が今の4月13日に当たる時期だったため。その後、4月1日が正月になり、さらに1月1日に新年を合わせたので、微妙なタイミングで正月になるというわけだ。

 ソンクラーンは基本的にはタイ族の文化に基づいた正月だ。しかし、プラプラデーンは昔はモン族の居住区だった。そのため、旧正月の文化がちょっとだけタイ族と違い、今でもここのソンクラーンは1週間ほど遅い。ただでさえ中途半端なのに、さらに遅い日程で開催される。ただ、ソンクラーンの時期を逃した観光客も水かけ祭りを楽しめるので、おすすめではある。

 それだけでなく、プラプラデーン郡の中心地は昔ながらの街並みを残していて、見どころも少なくない。日帰り旅行で散策して帰ってくるにはちょうどいい場所でもあるのだ。

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 そんなプラプラデーン郡にプラプラデーン船着き場がある。上記のマップだと第2プ-ミポン橋のたもと辺りに対岸へと渡る点線がある。ここを渡し舟が往来しているのだが、単に渡し舟というと、チャオプラヤ河沿いには無数に渡し舟の船着き場がある。

 このプラプラデーン船着き場の渡し舟はほかと違う。ほかは人を運ぶだけのボートであるのに対し、ここは自走式の台船のようなフェリーなのである。今にも故障しそうな雰囲気の台船が車とバイクを満載して行き来している。

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 毎日何十回も往復しているからか、停泊時に流されないようにしている柱の間にうまい具合に滑り込んで着岸する。このテクニックたるや。

 ボクは若いときに浅草橋の屋形船でバイトしていたことがあった。川という流れがある場所で岸に着けるのは結構難しいことを知っている。特にこのフェリーは流れに直角に入ってくるので、船長はなかなかの腕前なのだ。

 だからなのか、1日に何十も運航しているのに、事故を聞いたことがない。単にニュースにならないだけなのかもしれないが、少なくとも死傷者が出るような重大事故はほとんどないのではないか。

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 乗っている側も慣れたもので、船が完全に停止する前には動き出して、走り去っていく。画像を見てもわかるが、船の乗降口よりも桟橋が狭い。しかも、桟橋にはガードレールみたいなものはない。よくもまあ、落ちないで行けるもので。

 見ていると、どうも徒歩でも乗ることはできるようだ。歩いて乗る人もいた。対岸は製鉄工場などがあるので、おそらくそこで働く人が乗り降りしているのかと思う。

 逆に言うと、プラプラデーンにも製鉄所辺りにも用事がないとなかなか行く場所ではない。だから、存在は知っているのに、ボク自身、このフェリーをいまだ利用したことがない。

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 一応ルールがあって、当たり前だがまずは降りる方が優先だ。乗る側は到着前から手前で並んで待つ。すべてが降りたら、待っていた車やバイクが乗り込んでいく。

 上の画像を見てもやっぱり桟橋の幅が気になる。普通の道路1車線分しかないので、ビビったらそのまま転落コースであろう。まあ、浅瀬ではあるので溺死することがないと思うけど。

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 日が沈むとこのフェリーの運航が終わるはず。さすがに暗い中では離着岸は困難だし、上流にあるクロントーイ港に向かう大型船からも見えなくなるので危ないからでしょう。

 船はともかく、プラプラデーンは夜もいいかもしれない。郊外のエリアなので治安に不安があるけれど、夜間は川沿いの公園からプーミポン大橋のライトアップが観られるはず。

 余談だけども、ちょうどこの画像の辺りに、この撮影からしばらくして大型船が衝突事故を起こしたことがある。荷物を満載したコンテナ船で、この桟橋型の遊歩道をえぐるように破壊した。それにしても、どうやったらここに突っ込んでくるんだろう。河は曲がってはいるけれど、操船を誤るほどのカーブじゃない。事故というのはときに理解不能な状況で起こるんだ。ホント。

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