10年目記念にリリースされたV6「Orange」
節目に現れる意味深な曲
華やかしい節目にそれっぽくない曲をリリースする。
そんな作品はどうしても印象に残る。
わたしにとっての筆頭は、子供の頃に出会ったKANのベストアルバム「めずらしい人生」の、冒頭に収められた同名の曲である。
このアルバムは「愛は勝つ」がヒットして、彼の曲がシングル曲がTV番組やCMに沢山起用されていた頃に発売された。
「めずらしい人生」は、ピアノを中心に構成された軽やかなメロディ・アレンジと対称的に、KANの曲によくみられるユーモアと軽妙さが途中から抜け落ち、生々しい心境が顕になっていく。(この曲だけで長々と語れるほどに好きな曲だ。)
V6は10周年の節目に似たようなことをかましていた。もちろんKANとは異なり、作家に提供された曲でのことだ。
それが「Orange」という曲である。
この曲の1つ前には「UTAO-UTAO」という、10年目に浮かれ気味のハッピーな楽曲がリリースされている。こちらの方がよほどお祝い向きである。
そこはアイドルグループ・V6の、ゴールなのか、経由地か
「Orange」は作詞・作曲・編曲HIKARIの作品である。ジャニーズへの提供曲が多い方なので、名前だけで察する方はいるかもしれない。
V6楽曲ではこの辺りから(正しくは「UTAO-UTAO」作曲から)節目節目に登場する名前だ。
歌詞をみると、取りようによってはV6の終わりを示唆しているととられてもおかしくはないのだ。
時が経ち「大人に成りすぎた」彼らには、アイドルであれという声(圧力ともいう)が聞こえなくなってしまった。
ともとれるし、
迷い続けた10年から先も、そんな自分達を愛しく思いながら同じ道を進んでいく。
という意味にもとれるのだ。
彼らの乗る船が向かう「ここから先」とはどこなのだろう。
長く続いている他の先輩グループはあれど、まだまだアイドルグループが10年続けば長寿といわれた時代だ。彼らと入れ替わるように解散した光GENJIの活動年数は、とうに過ぎていた。
この10年後に6人で作った曲が「〜此処から〜」っていうんだよね
結果的に「Orange」は「大人のアイドルグループの幕開けを宣言した曲」になったといえる。
この辺を境に、ワンナイトラブや別れ歌のような大人故にハマる作品が際だって増えたように思う。
グループの存続が目に見えて危うい時期もあった。しかし今では、個人の活動もV6としての活動も並び立って(時には影響を与えあって)いる。
10周年コンサートの1曲目を飾った「Orange」には、荘厳なイントロダクションがV6の歴史を振り返る映像とともにつけられた。
20周年コンサートで、このイントロが第6楽章からなるシングル曲メドレー「39 Symphony」の始まりを告げた。そしてステージに現れたのは、大人アイドルグループとして出来上がったV6であった。
…そういえば、V6が20周年のベスト盤「SUPER Very best」に収録した新曲のうち、6人で作った作品の名前が「〜此処から〜」だった。
あの時彼らの乗った船は、時にユラユラ流れているようにみえながら、ちゃんと20年の船着き場に到着した。
そして「此処から」乗り継いだ船も今、同じ様に航海をしているところなのだろう。
今、彼らの船は25周年を目指している。
この節目には何かをやる気でいるらしい。25周年はジャニーズでは縁起が良くないらしいのだが、彼らの場合いきなり「Sexy.Honey.Bunny!」でこちらの度肝を抜いてきた過去もあるだけに、油断できない。
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