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陰謀論にひっかかりやすい人、その理由を考えてみた

「陰謀論」の煽り方

「この動画観て!」
ある日、食事をともにしていた相手にこう言われた。

初めに言っておくと、その人物はバカではない。頭の回転はむしろ速いくらいである。強いて言えば、その速さだけで前に進み過ぎる方である。

その動画は、ある政治家の真の姿を暴く動画、らしい。

実はその政治家を論じた書籍を、私はちょうど読んでいたところだった。ベストセラーになっていたので電子書籍で買ってみたのだが、面白いものの次第に心がささくれ立ってきたため、中盤で投げ出しつつあった。

動画の内容だが、実はほぼその書籍をまとめたような内容であった。
名前を偽名でぼかしつつも、内容はまさにその書籍の前半をうまいことまとめてあった。

その政治家には学歴詐称疑惑があり、某国最高峰の大学を卒業したことになっているが、元同居人が話す真実は…?
ここまではほぼ原典通りであった。

なんと、某国のスパイになって日本に帰ってきた!

( °Д° )

いや、きっと現象としては大きくズレてないのよ。
当該政治家に某国が恩を売ってるようなので(大学を卒業したと答えてるのは事実)、それに見合う利益供与もあるのだろうとは、私も思う。

そのうえで、このくだりで私は「ん…んー???」となった。
なんといえばいいのか。
「恩を売られたので日本の情報を売る」のと「スパイという国家機密として動く」のとの間には、わずかながら深いズレがあるように思った。

動画にはオチがついてしまうので、前半のその辺で話が終わってしまう。

私は動画を見せたその人に対し、
「(;´∀`)今読んでる本の前半をうまくまとめてるねー…」というのがやっとだった(これは本当なので)。

本音。
頼むから元ネタの本読んで。

…ただ、こうやって陰謀論って煽るんだということがわかったのは良かったかもしれない。

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バカじゃない相手ほど引っ掛けやすい

陰謀論は結構身近にあるし、よほどあたまおかしい言説でもない限り、知らず知らずのうちに何かを信じてる可能性はある。
(私の中にもきっとあるだろう。私の根っこは、たぶん陰謀論を信じやすい方だ。)

そのうえで、頭がおかしい、誰しも「( ゚д゚)ポカーン」となるしかない陰謀論については、時に世の中の害悪にもなるなら叩いておいた方がいいんじゃないか?というのが今の自分の気持ちになっている。

前章の動画は、内容こそ書籍から大きくズレてないから「ま、いっか」だったけど(笑)、気になったのは動画の作りの巧みさだった。

ストーリー展開は整理されていてわかりやすい。
導かれる結論も端的だ。
「あなただけに真実をうちあけます」という情報提供者は元ネタにも存在するので、リアリティの演出もしやすかったろう。(そのため、当該書籍にも陰謀論に近似したところはあるし、「ノワール小説」という書評は最も適切なものかもしれない。)

「だいたいあってる」で済ますのは普段の意思決定にはとても良い能力だ。でも、99%の真実にほんの1%の嘘を入れられても簡単に気付かない、ということでもある。

ここに「誰が言ったか」などのバイアスがかかれば、非現実的な嘘が10%でもある程度突破できてしまうだろうと思う。
特に「(コソッ)あなただけに特別にお教えしますよ」といわれたら、自尊心も満たされる分多少の無理筋も通ることだろう。

人は心理的安定を求めると陰謀論に走りたくなるらしい。
そもそもわからないことを「わからない」にしておくことは精神的にキツイものだし、特に今のような世界同時不安な状態ならば、陰謀論になびく人が増えるのは当然なのだろう。

世の中にはなかなか解決できない、でも解決していかなければならない問題が数多くある。
では、何故簡単に解決しないか?

・その問題の真の正体に誰も気付いていないから
・誰もやろうとしないやり方が正解だから
・正しい解決を拒む輩がいる
・なんなら世界中が真の解決を拒んでいる
・最初からそんな問題などない

…などなど、陰謀論の作り方のパターンはいろいろ作り出せそうである。

最初のは本当に正体を見誤っているケースもあって、地道に解きほぐしていけば問題の核がみえてくる場合もある。
でももちろん、ここではそういう意味では挙げていない。
「実はこうだったのだ!」「な、なんだってー!?」
的なものだ。

地道に調べるより識者から情報を得るのが手っ取り早い、というタイプの情報の得方をする人々がいる。
彼らが不安な時は、こういう陰謀論やデマを何の疑いもなく吸収してしまうのではないかと思う。

文字情報であっても、TwitterやInstagramの短文では噂話と大差はない。なまじ画像がついてくる分、それっぽさを増して迫ってくる厄介さがある。

他人の話を吸収するには、相応の頭の良さは必要だ。
真実の99%の説明中に「ごめん、意味わかんない」となるならどうにもならないからだ。

その次の段階に、「怪しい1%をそのまま信じるか、他の知識と照らし合わせてから信じるか」がある。
前述の通り、「だいたいあってる」は素早い意思決定には便利で、たった1%のために決定を止めるとその分決定スピードは鈍る。脳の処理の遅い部分を使うからだ。かつ知識量も必要。

人から聞いた知識を自分の知識と照らし合わせて取捨選択し、なおかつ一定のスピードを保っている人は、真の意味で頭の良い人だと思う。
でも、凡人の意思決定は、速いだけか、頑張って取捨選択して遅くなるか、のどちらかなので、速い方の人は遅い方の人よりも小さな嘘を溜めていきやすいだろう。
表向きは「理解力が高い」と評されながら。

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人の世、いうほど頭良くできてない

もう一つ、陰謀論について触れておきたいことがある。

人間1人が企んで実現できる陰謀は、さほど大きくない。

あるいは、

世の中、運が左右する要素が大き過ぎる。

例えば就職。
私はバブル不況の就職氷河期世代にあたるが、就職氷河期世代は大卒ですら就職口が無く、新卒が保護されるのはその後の世代になる。

リーマンショックの氷河期世代も、ほんの数年だけ苦しめられていたわけだから、やはり理不尽に感じているのだろう。
現在就職活動中の方々もきっと。

就職活動がほんの1年ずれていたら、正社員就職でちゃんとした新人研修受けて、順調にキャリアを積んでいけたかもしれない(今は第二新卒という概念もあるけど)。正社員になるための口も無いのに、本人の努力も才能もあったもんじゃない。

それほどまでに運や偶然が人生を分けるのに、ごく一部の人間が陰謀でコントロールするのは非常に難しいのだ。

独裁者になろうとしても、全てのイベントを知って転生したなろう系キャラでもない限り、そこまでの困難を簡単にクリアすることはできない。
また、仮に独裁が成立しても、当の政治家としての能力がなければ恥を晒すだけだ。
かの毛某は、農家を兵士として仕立て戦うことには長けていたものの、いざ国ができた時には当てずっぽうの計画を連発して農業をボロボロにしてしまったという。

「でも実際に国を好き勝手に動かしている奴らがいるじゃないか?」

そこは否定しないが、ここで良く見てほしい。

国を好き勝手に動かす人々は、

深謀遠慮も何もなく、力任せにやってることの方が多い。

つまり、陰謀だ何だというのは勝手に相手の頭を良いように見立ててしまっている、ということになる。
解決にむけて動くにあたって、無理にハードモードにしてどうするのか。

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陰謀論を口にする人を、周りはどう見るか

「自分しか知らない真実!」
は、それがあるだけで気持ちが良い。

一方、その真実に皆が気付いてくれなければ、問題の解決は無い。
だから陰謀論は積極的に広めたくなる。広めれぱ自分はきっと感謝されるだろう。

…と、陰謀論者本人は思うのだろうけど、それを冷ややかに見ている人々もいる。今度はこちら側から陰謀を唱える人に対する見方、を考えてみる。

「何言ってんだこいつ」度合いが大きくなるほど、陰謀を叫ぶ人は面倒な存在にみえてしまう。
もちろん「それでも地球は回っている」ケースもあるっちゃあるが、あれは科学の立場が弱い時代に科学(地動説)を唱えたからという理由があってのことだ。

「そんな問題などなかった」ほど極端な例でなければ、陰謀論とて今みえている現象から出発していることが多く、事実は共有できると思う。意見が分かれるのはその先だ。

1.今さら何を言ってるんだろう

「実はこうだったのだ!」(ばばーん)
「………知ってるよ?で?」

敢えて言わないだけで問題の核はみんなわかってる、ということは、案外ある。

だからといって解決のための行動をしているわけではない、ということの良し悪しはあるけれど、実際は地道に、ミリ単位でも解決にむけて進み続けている人々がいるものだ。
また往々にして、敢えて地道にやっている理由もある。

誰かの思いつきで「誰もやってないこんなことをしたら即解決だぜ!」とかやっちゃったものなら、最悪そこまで作り上げた解決の道を崩壊させることもあるのだ。

2.思考停止

「陰謀」という単語は、これをいうだけで自分がめちゃくちゃ深く考えている気分になるマジックワードだ。
前述の通り、ただの好き勝手な行動でさえ深謀遠慮があるようにみえてしまうのだから、これは思考停止を引き起こしてるといえる。

また、仮に陰謀が働いているにせよ、その陰謀「だけ」の要因では成り立っていないことが多い。
その構造を多面的に分析する必要があるのに、「陰謀」で思考停止するとそれだけ解決方法がみえにくくなる。

3.自分が賞賛されたいんでしょ?

ここは前述の通り。

また、逆張りが好きな目立ちたがり屋にみえる、もあるだろうな。

4.自分の仲間だけで固まり、周りを敵視する

だって、自分らの主張を理解しない奴は敵認定するんだもん。

陰謀論者「自分たちの真実を受け入れない人々は、陰謀による問題を無批判に受けているか、陰謀企んでる側だ。」
…と認定された側はたまったもんじゃない。

まして、その「陰謀」を巡って敵対する立場に立っている者は(その人はたまたまそこにいただけかもしれなくても)敵認定は待ったなしである。

陰謀論が嫌われる一因には「こいつらと繋がりたくない」もあると思うよ。

5.(※重要)
「自分は騙しやすいです」アピールになっている

反ワクチンカルト「神真都Q」の設立者達が参加者の個人情報を集めていた真意は、恐らく高いものを売りつけやすい奴リストを作ることにあろう。ついでに、足抜けをさせにくくするというもう一つの目的も叶うのがさらに厄介だと思う。

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陰謀論に陥ることを防ぐには

陰謀論に陥ること自体は誰しもあるだろうと思う。
特に、本気で調べるほど興味がないものなどは「雑に仕入れた情報がたまたまそういう情報だった」ということがあると思う。

でも、周囲からみて迷惑となるような陥り方をしているとなれば、問題だ。

個人的には、前章に書いた「思考停止」に本人が気付きにくいのが問題かと思っている。
本当は理解が薄いのに、まるで自分こそが真実知ってて頭良いと思っちゃう。
「目の前の鳥は空から落ちないから、地球は丸くない」だ。

現代はスピード感が必要という厄介な時代ではあるのだが、時にはスピードを緩めて仕入れてきた情報をじっくり見直すことが必要といえるだろう。

(2022/04/30追記)
この陰謀論者論は「頭のいい愚か者」を指して書いているのですけれども、かのQ界隈は全方向的に知力が劣る方も混ざっている節があるため、買いかぶり過ぎなのではないか?という指摘を受けても仕方がないと思います。

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