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事業のネタ帳 #19 Verticalサービスの進化と深化 Vol.2

皆さま、お元気ですか。初めましての方も宜しくお願い致します。
ジェネシア・ベンチャーズ鈴木です。
またもや久々のnoteとなってしまいました。

ジェネシア・ベンチャーズのキャピタリストで継続的に発信をしている事業のネタ帳シリーズですが

引き続き、個人的に考えを深め続けたいテーマとしての「Verticalの未来」に関して、「Verticalサービスの進化と深化」として僕が主戦場としている新興国スタートアップの具体的な事例を交えて紹介していきたいと思います。
皆様の事業を考える際の思考の補助線となれば嬉しいです。

何故、新興国スタートアップを取り上げるのか?

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進化の過程を飛ばしたLeapFrogな成長

何故、新興国スタートアップの事例か、と言うと日本では既存産業のデジタルトランスフォームが進行しているが、既存産業とのカニバリゼーションが発生してしまうこともあり、歩みが遅くなってしまっている一方で、新興国では既存産業がオペレーション含めて未成熟な分、デジタルを基盤として基幹産業がスピーディーに立ち上がっており、結果として、LeapFrogな成長が実現している為、日本のスタートアップにおいても何かしらの思考の補助線となるようなヒントが多いようにも考えているからです。

インドネシアの保険市場のDXを仕掛ける急成長スタートアップ

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インドネシアの保険市場の保険普及率(=保険料の対GDP比)は約3%と言われています。日本などの先進アジア太平洋域諸国の保険普及率は平均して10%弱と大きなギャップがあり、インドネシアの保険市場の成長ポテンシャルは広大です。

今回は、インドネシアの保険市場のDXを仕掛ける2018年に創業したインシュアテック企業である「QOALA」を紹介します。

当社は2022年5月にシリーズBラウンドで65M米ドル(=日本円 80億円強)の調達をアナウンスしております。 
Sequoia backs $65m round of Indonesian insurtech firm

なお、我々、ジェネシア・ベンチャーズは、アイデアのみの創業最初期から支援をさせて頂いております。

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Qoala FounderであるHarshet / Tommy (Tech in Asiaより)

従来の保険プロダクトではない新しいプロダクトで保険市場の成長に貢献

当社は、TokopediaやShopeeと言った大手EC事業者を通じて返品補償保険や、Traveloka、Pegipegiと言った大手オンライン旅行代理店を通じて、格安航空会社の飛行機が一定時間遅延した際に航空券金額の一部がキャッシュバックされるようなマイクロ保険を様々なパートナーシップを通じて販売する事業からスタートしています。

インドネシアはまだまだ保険普及率が低く、従来の生命保険や損害保険だけでは先進アジア太平洋域諸国のような保険普及率と同等規模に成長するには長い時間が掛かってしまう為、より特定ニーズに沿ったマイクロ保険を企画し、保険会社と共同で保険商品を開発することを通じて、インドネシアの消費者に保険を気軽に利用してもらうことで保険市場の成長に貢献しようとしています。

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当社の強みはパートナーシップ企業が保有する大量のデータを元に消費者ニーズに合ったマイクロ保険を設計するプロダクト企画力や、販売した保険の保険請求を当社のテクノロジーを通じて処理することで保険会社へのオペレーション負荷を軽減することで、急速に成長しているます。

保険会社のオペレーションに入り込むことで生み出される強みと新規事業

当初は、データやテクノロジーを通じたマイクロ保険の企画、パートナーシップを通じた販売、保険請求の処理業務の負荷軽減だったが、保険会社側のオペレーションに深く入り込むことで現在は新しい事業も立ち上がっています。

従来のインドネシアの保険市場の販売チャネルの約半数がエージェント経由での販売となっており、保険エージェントの大半が個人事業主となっています。またエージェントのほとんどが特定の保険会社の商品のみの販売を行なっていました。

当社は、マイクロ保険の販売を通じて、数多くの保険会社とパートナーシップを組むことに成功していたことで、保険会社の従来の保険商品の販売、保険請求処理などの業務のDX支援事業を立ち上げ急速に成長しています。

保険の販売、保険請求の現場では膨大なペーパーワークが存在している

具体的には、保険エージェント向けに顧客に対して複数保険会社の保険商品の比較・販売機能を有したアプリや、顧客管理サービスを提供し、顧客に対しては保険請求を簡単に出来るサービスを提供しており、販売から保険請求、そして保険会社の請求処理までを一貫してテクノロジーを通じて処理出来るようにしています。

Verticalサービスの進化と深化への学び

以前のnoteの中では少なくとも特定産業(Verical)の課題を解決するスタートアップの未来において山の登り方として以下の2点を挙げていました。

1.業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ
2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

HorizontalからVerticalへ。そしてVerticalの未来。

また以下のように考えをまとめています。

顧客セグメントや産業によって異なる中で、融合していく未来を考えた際に大事な視点の一つが
・どのように参入することで面を広く(かつ素早く)取れるか?
であり、その上で山の登り口を検討していくのが良いと考えています

HorizontalからVerticalへ。そしてVerticalの未来。

今回取り上げた「QOALA」に関しては、

2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

保険会社が提供する従来の保険商品と競合しない、新しい収益可能性を見出せるマイクロ保険の企画・販売から参入することで多くの保険会社と有効なパートナーシップを締結していきました。

またマイクロ保険の販売後の保険請求が発生する際の保険会社側のオペレーションにもテクノロジーを用いて拡大することで

1.業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ

にも滲み出すことに成功しています。
また新しいマイクロ保険の企画・販売、オペレーションだけではなく、従来の保険商品の販売、保険請求のオペレーションにまで拡大することで、更なる

2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

を実現していることで、保険会社、保険エージェント、消費者にとって価値あるサービスを提供することが可能となっています。

今後も面白いアプローチをしている新興国スタートアップを不定期に紹介出来ればと思うので是非、感想など教えて頂けますとnote執筆のモチベーションが上がるので宜しくお願い致します!

終わりに

この記事に共感いただいたVertical領域にチャレンジされる起業家の方(起業を検討している方)、あるいは別のアプローチの方が筋として良さそうという仮説をお持ちの方(自身の仮説が正しいとか唯一解だとかいう考えは一切持っておりませんmm)、まずはぜひカジュアルに事業ディスカッションさせてください!

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