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AI信仰への警鐘:本当にあった怖い話〜果たしてAIはスポーツ分析の救世主となるのか?〜

これは スポーツアナリティクス Advent Calendar 2020 8日目の記事です。

こんにちは。HudlのTKB84(たかばやし)です。
今年もお誘いいただきまして、スポーツアナリティクスアドベントカレンダーに参加させていただくことになりました。

どんなことを書こうか今年も迷ったのですが、刺激的なタイトルで筆をとることにしました。ビジネス界においてAIがバズワードになって久しい今日この頃ですが、その波は着実にスポーツアナリティクス業界にもやってきております。

自分たちもAIカメラを販売している手前、非常に書きづらいトピックではあるのですが、ここ最近不幸(に見える)事例にそこかしこで遭遇するようになり、どこかで一度伝えなければ、そしてどんな反応が返ってくるか見てみたいと思っていました。燃えないことを信じています。笑

この記事では、AIの中でも特に最近ブームのAIカメラに関して、仕事柄たくさんのプロクラブや学校の方々とお話する中で見聞きした、不幸だな、と自分が感じたケースを紹介しようと思います。

AIカメラ
固定のカメラユニットを設置することで、試合を自動で撮影してくれるカメラ。日本国内でも多数の海外メーカーが展開。

AIカメラはつい先日、スポーツ関係無いテックメディアのギズモードにまでこんな記事が出てしまいましたからね…

これは、クラブ内、施設側、自治体側の意思決定者の皆さんへのお願いでもあります。ぜひ一度ご自身が関わっていらっしゃるプロジェクトを振り返ってみていただけたらと思います。

※あくまでも個人の見解です。

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不幸なケース1:クオリティの欠如

実際撮影してみたら使用するに耐えないレベルの撮れ高であった

これは本当にそもそも論ですが、こんなこともあったりします。会社側が提供しているハイライトだけ見ると良さそうに見えるけど、1試合通して見たときにかなり苦しかったり…

実際にAIカメラで撮影したフルゲームの映像を、現場のスタッフに確認してもらいましたか?

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不幸なケース2:目的との不一致

新しい練習施設の目玉としてAIカメラを設置。しかし、そのカメラは自動撮影しかできないモデルであった。

このケース、なにが問題かおわかりでしょうか?

AIの自動撮影は、少なくとも現在は試合を想定して作られています。練習でよくある、いくつかのグループに分かれてのセッションが行われている際、マニュアル操作ができない(もしくはピッチ全体の映像を取り出せない)と、ほしいところを録画したり、取り出したりできませんよね。

導入する場所でのスタッフが必要とする使い方の洗い出し、AIカメラの機能との整合性の確認はしましたか?

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不幸なケース3:使い勝手の悪さ

導入したしたはいいものの、毎回使う際に様々なセットアップが必要で、徐々に使用されなくなっていき、現在はホコリを被っている

これも冗談のように聞こえるでしょうが、たまに聞きます。塩漬けになっているAIカメラ…

毎回の使用の際のセッティング、映像の取り出し方などが不便だと、スピード命、の現場サイドからするとストレス以外の何物でも無くなってしまいます。

日々の運用のワークフローは確認しましたか?

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さいごに

経営陣「こんなに高額な投資をしたのになんで使わないんだ!」

現場「…(だって、使えるクオリティじゃないんですもん…)」

こんな事例、もう聞きたくありません。誰もハッピーにならない。悲しすぎます。

AIという響きだけで「いいね、買おう!」と思っている皆様、いま一歩立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。残念ながら、通常のマニュアル撮影のIPカメラのほうがいい場合も多々あります。AI使います!というニュースバリューのために数百万円〜数千万円をドブに捨てるのは誰もハッピーにならない気がいたします…

ちなみに、AIを否定するつもりは毛頭なく、ワークフローの効率化やコスト削減に大いに貢献しうるものだと思っております。さらにはコロナ禍の中、トレーニングや試合に参加するスタッフの人数を絞る必要が出てくるわけで、そういったときに自動撮影は重要なソリューションだと思います。

ただ、現場に必要なことをすっ飛ばし、「自動撮影」「AI」というワードの響きだけで決めたようなミスマッチ案件が散見されるので、書かずにはいられませんでした。

AIカメラを扱う立場として、用途にそぐわない時はNoと言える人間でありたいものです。さらには、ネガティブなこともきちんと伝えた上で判断してもらう。そんなスタンスです。それがひいては業界の発展、ユーザーの皆さんからの信頼に繋がると思うので。

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なお、HudlのAIカメラはこちら。昨年末から販売開始、日本国内では5台が納品済みです。

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