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【神門レポート 猿払FW編】 日本最北端の村、北海道猿払村を知ろう!

10/28土、えぞ財団で知り合った、北海道猿払村の公務員をされている、新家拓郎さんにご案内いただいて、猿払村の色々な場所を巡ってきました。

今年の2月に行く約束をして、それが達成できました。
イェイ٩(>ω<*)و

このnoteでは、猿払村の概況を解説したのち、実際に見てきた猿払村の様子をご紹介していく形でお送りしていきます!



猿払といえばホタテですよね。

相席食堂で飛び出た「くってみな、飛ぶぞ!」で全国的に知名度が爆上がりしました。それまでも、月曜から夜ふかしではホタテ御殿が特集されたりと、ホタテとお金のテーマで取り上げられたりしています。

有名なアレ


ただ、こういうのはイメージだけが結構独り歩きしてしまうこともあるということで、実際に様子を見てみたいなとずっと思っていました。

さて、神門レポートといえば、まずは現状把握。
客観的な数字をみていきましょう!

〇 猿払村について

面積と人口

猿払村は、道北地方に位置しており、札幌からだと車で5-6時間。鉄道で行くのはかなり難しいです。かつて猿払村には石炭産業があり、そのために鉄道も走っていたのですが、1988年にその役目を終えました。かつて、村内には6つもの駅があったようです。

その後は、戦後のモータリゼーションもあり、車なしでは生きていけない地域に。生活交通問題もこれからは顕在化していきそうです。


猿払村役場HPより

猿払村の面積は、東京23区とほぼ同じ大きさ。そこに、2683人の住民が住んでいます。めちゃめちゃ人口密度が低い。

なぜなら、80%ほどが丘陵地だからです。実際に行ってみて感動したのですが、標高の高い山はほとんどなく、小高い丘がほとんどで、この地形を利用した酪農が猿払村では盛んです。なので、植生も全く異なり、異世界に来た気分でした。

ちょー綺麗

では、人口について詳しくみていきましょう。
以下、猿払村の「猿払村人口ビジョン」を参照していきます。

現在、猿払村では2600人ほどの方々が生活しています。
約70年前には4倍にあたる8800人もの人々が住んでいました。
以下のグラフを見ても明らかなように、全炭鉱が閉山したS42(1967)年を境に人口が急減していることがわかります。この現象は、北海道の産炭地ではよく見られる現象です。

しかし、この後詳しく書いていますが、S46(1971)年にホタテ漁を天然から養殖に切り替えたことが功を奏し、人口減少に歯止めをかけたことがよくわかります。

大体、人口減少のスピードが止まらない地域によくあることは、石炭産業や企業立地がなくなると、産業が空洞化し、生産年齢人口が急減少することにより、年少人口の減少と老年人口割合の拡大が急スピードで進み、気付いたらヤバイ、みたいなことですが、猿払では養殖ホタテ業の育成により、その現象をかなりの早期段階でストップできたことが、大注目ポイントです。

つまり、かつての猿払の産業は、「石炭と天然ホタテ漁」だったようですね。

次は、年齢3区分の推移です。
特筆すべきポイントは、やはり生産年齢人口の減少が緩やかなこと。
雇用を支え続ける産業がなければこうはなりません。

以下は、2010年の人口ピラミッドですが、20-24歳の女性の多さが際立ちます。この形のピラミッドは見たことがないので、かなりの衝撃です。

これは地区別の人口推移です。
最も多い鬼志別エリアは役場や公共施設が立地する、村内の中心エリアなので、人口集中地区となっています。

また、漁港がある「浜鬼志別地区」、「知来別地区」、「浜猿払地区」の 3 地区は人口維持がなされていることも注目ポイントです。というか、むしろ10年前よりも増えてますね、すごい。

ということで、猿払の人口動態はこんな感じです。
大体、各市町村には人口ビジョンがあるので、自分の住む地域のも見てみてください!


〇 猿払のホタテの謎

猿払のホタテはもちろん美味しいのですが、とにかくでかい!
デカすぎる。

「猿払のホタテがすごい」とよく聞きますが、一体なにがすごいのでしょう?猿払のホタテに関する疑問が多くあったので、新家さんに色々と伺ってみました。

実は、地形による影響がとても大きいとのこと!

そして、猿払のホタテには、以下のようなストーリーがありました。

いま、猿払のホタテは養殖ですが、昔は天然でした。

昭和39(1964)年頃に天然ホタテ漁の水揚げ高が0になった年があり、これを境に養殖へと舵を切りました。そして、昭和46(1971)年、猿払独自の養殖(稚貝の放流)が始まりました。「猿払独自」とは、養殖用のカゴを用いずに「ただ海に稚貝をまく」というやり方です。猿払の地形であればカゴを用いない方が大きく立派に育つんです。大体、4,5年かけて成貝にまで成長させてそれを水揚げする形です。

つまり、実際にとれてるホタテの大きさは天然の時と養殖はほぼ変わりません。大きく変わった点は、養殖によってホタテの大きさや取る数を「管理」できるようになった、ということだと思います。

ただ、この養殖が可能なのは、猿払独自の地形によるところがほとんどなので、他地域で猿払モデルを真似しようとしても、成功可能性はかなり低いです。

いま、世界水産業のトレンドは、管理ができる養殖業に向いています。その先端を1964年頃には始めていたということも驚きです。当時の漁協組合長と村長の英断が、その後の村の経済やまちを形づくっていることは、なんとも感慨深いです。

より詳しくは、こちらの猿払村公式noteをご覧下さい。

ただ、今年に入ってから世界的に海水温上昇が問題になっており、ホタテも例外ではありません。特に稚貝への影響が大きいとされており、実際に北海道噴火湾でのホタテ養殖はかなりのダメージを受けたようです。

猿払村のホタテに関しては、まだ影響は出ていないとのことですが、出荷までは4,5年かかるので、もしかすると4,5年後にその影響が顕在化するかもしれません。


〇 ホタテ以外の猿払

さて、猿払=ホタテ、というイメージがついていますが、実際それだけではありません。

地形を利用した酪農が盛んであり、ホタテと並ぶ2大産業です。
それを加工した製品が、この猿払バター、猿払牛乳、猿払アイス、です。

アイスには、この後ご紹介する猿払イチゴ味もあります。

アイスは全部で5種類(?)だったはず


お風呂の後にのむ猿払牛乳は美味い

この牛乳、恐らく乳脂肪分の割合がとても少なく、とてもあっさりとした牛乳でした。そのためバターも油っぽくなく、アイスも何個も食べられるくらい、抵抗感がほとんどない、すーっと食べられる感じです。

そしてアイスですが、味は6種類。特にオススメは、バニラとイチゴですね。イチゴは、猿払産イチゴを使っています。しかも、デザインも統一されていてオシャレ。

猿払では、ホタテ・酪農の次の産業を育成している最中で、その中でハウスでのイチゴ栽培を行っています。


このイチゴの一番のポイントは、「夏イチゴ」という点です。
春イチゴの旬は名前の通り1-5月で、この市場にはもう既に強いイチゴたちが君臨しています。かなりのレッドオーシャン。

だから、ブルーオーシャンであり、春市場よりも単価の高い夏イチゴ市場に狙いを定めて、猿払イチゴは栽培が始められたようです。

では、なぜ夏イチゴの栽培がブルーオーシャンなのか。それは、夏イチゴに適した栽培場所がないためです。

イチゴは暑すぎると生育に多大な影響を及ぼしてしまうのですが、猿払の冷涼な気候はそれをクリア!そのため、夏イチゴ栽培が可能なのです。

天の利と地の利(ホタテ)を活かした第一次産業、スゴイです!

また、このイチゴ事業は行政主導で行われており、現在は実証実験中です。当時、この事業推進をご担当されたのが新家さんで、これを進めるにあたり、5年の歳月をかけて議会を通したとのことです。

そして、現在いちご栽培を主導して進めているのは、地域おこし協力隊の方々ということで、行政主導による産業育成が着々と進んでいます。

また、現在は2つのハウスのうち、片方では葉物野菜の栽培も始めているようです。


〇 実は、「イトウ」の聖地


今回、北海道猿払村に行くにあたって、宿泊場所を調べていたのですが、どこもかしこも満室で、ギリギリ滑り込めました。
猿払には、以下のようにお宿が結構あります。

何が起こってるんだ、という感じでしたが、猿払に行って合点がいきました。この時、猿払では2つのビックイベントがあったんですね。

1つは、「猿払村開村100周年記念式典」で、結構な人数が来ていたようです。

猿払村は、大正13(1923)年に宗谷村(1955年に稚内市に編入)から分村したのがきっかけで、現在に至ります。宗谷周辺は漁村がたくさんあるので、分村や合併がよくあります。

2つは、幻の魚「イトウ」のラストシーズンだったことです。

僕は全く釣りをしないので全く知らなかったのですが、猿払は全国的にもイトウの聖地だそうで、釣り人にとっては一生に一度は釣ってみたいというほどの存在だとか。(白石麻衣に一度は会ってみたい、みたいなことなのだろうかw)

特に、猿払村を通る猿払川や、北海道の朱鞠内湖が有名だそうで、10月末はイトウのラストシーズンだったそうです。

車から見えたイトウ釣りの方たちは、見えただけでも10名ほどいたので、トータル30名はこの日にいたのかもしれないです。

〇 猿払の素敵な場所の数々

最後に、新家さんから教えていただいた猿払の素敵な場所の数々をご覧下さい。フィンランドに1年間住んでいた友人は、「まるでフィンランドみたい!」と写真をみて興奮してましたw

では、最後にどーぞ!


地平線まで続く


王子製紙が所有する、「王子の森


カムイト沼


なんだか、北欧や欧州でみる景色みたいな感じですよね。


◯ 最後に

最近「厳しい言い方にはなるけど、風景には1円の価値もない。ただ見るだけなら誰もお金を落とさない。それに付加価値をつけて、お金を稼ぐのが大事なんです」ということをおっしゃっている方がいて、とても感心しました。

猿払のみならず、北海道の景色や自然にはお金を払う価値のある場所が数多くあります。そういった場所で、お金を稼げるようになることが、景色を売りにしている場所ではこれからより一層求められていくのだと感じます。

最後にちょこっと宣伝!

新家さんが毎年作成している、猿払カレンダーの予約がスタートしたようです。今回ご紹介した猿払の景色を中心に、四季折々の猿払をカレンダーの形で楽しめるので、ぜひこの機会に。


サポートお待ちしております!(笑) いただきましたサポートは、次の記事を書くための本や資料などに遣わせていただきます。