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【ミュージカル解説】『ターザン』:ディズニーアニメとの違いと舞台の魅力

ミュージカル『ターザン』は、1999年のディズニーアニメ映画を基にしていますが、舞台版には独自の魅力やいくつかの重要な違いがあります。
2006年にブロードウェイで初演されたこのミュージカルは、フィル・コリンズの感動的な楽曲とダイナミックな演出によって、観客に新たなターザンの物語を体感させました。
私自身も、2024年にFPAC(Franklin Performing Arts Company)で、ブロードウェイ初演オリジナルキャストジョシュ・ストリックランド氏が再演した公演でターザンの父親およびアンサンブルとして出演しました。


ディズニーアニメ版との違い


ミュージカル版とアニメ版の最も大きな違いの一つは、キャラクターの役割や性格にあります。たとえば、ゴリラのリーダーカーチャック(Kerchak)は、アニメ版よりもさらに厳格で、ターザンを家族として受け入れることに対する葛藤がより深く描かれています。
ミュージカル版では、カーチャックとターザンの関係が、物語の中で大きなテーマとして扱われており、家族の絆とアイデンティティの探求が強調されています。
特に第1幕で彼の歌うNo Other Wayはショーの終盤でサイドとても大切な役割として再登場します。

また、アニメ版でコミカルな存在だったターザンの友人タークは、ミュージカル版では男性のキャラクターとして登場します。
アニメ版では女性でありながら活発でお茶目なキャラクターでしたが、ミュージカル版では男性としての友情と絆が描かれており、物語に新たな深みを与えています。

さらに、アニメ版で登場した象のタントーは、ミュージカル版では登場しません。タントーの不在により、物語はよりターザンと彼の周りの人々に焦点を当てた、より深刻なトーンで展開されています。

楽曲

ミュージカル版では、フィル・コリンズの楽曲がアニメ版から引き継がれ、新たな楽曲も追加されています。これにより、舞台上のキャラクターの感情や物語がより豊かに表現されています。

代表的な曲目

1. Two Worlds
オープニング曲であり、ターザンが人間と動物の世界をつなぐ存在であることを象徴しています。

2. You'll Be in My Heart
映画でも有名な曲で、ターザンの母親カーラが歌う愛情溢れるナンバーです。

3. Son of Man
ターザンが成長し、ジャングルでの生活に適応していく過程を描いた楽曲です。

4. Who Better Than Me?
タークとターザンの友情を描いたコミカルで元気なナンバーです。これは第一幕と第二幕で歌われます。第一幕はタークとヤングターザン、第二幕ではタークと大人のターザンによって歌われます。

5. For the First Time
ターザン
ジェーンが初めて出会い、互いに興味を抱くシーンで歌われます。

6. Everything That I Am
ミュージカル版で追加された楽曲で、ターザンの自己発見とアイデンティティの探求が描かれた感動的なシーンです。

ジョシュストリックランド氏との共演と舞台での経験

2024年にFPAC(Franklin Performing Arts Company)で上演された『ターザン』の公演で、私はターザンの父親役およびアンサンブルとして出演しました。
この公演では、ブロードウェイオリジナル初演キャストジョシュ・ストリックランド氏ターザン役を再演しており、ミュージカルファンの間でとても話題になっていた公演でした。

ジョシュ・ストリックランド氏は、彼のパフォーマンスでターザンの野生的な強さと繊細な人間性を見事に表現していました。
彼はアクロバティックな動きや圧倒的な歌唱力で、観客を物語に引き込み、舞台を圧巻しました。ストリックランド氏はターザンを演じるにあたり、そのキャラクターの内面的な葛藤をリアルに表現し、彼との共演は私自身にとっても多くの学びとなりました。 

また、この公演では従来のディズニーミュージカルとは異なる斬新な演出が施されました。
この公演では、ターザンの舞台であるジャングルとロックンロールの要素が組み合わさり、まるでロックコンサートのようなエネルギッシュな体験が提供されました。

ゴリラたちの衣装も通常の動物を模したものではなく、ロックアーティストのようなステージ衣装を着用し、観客にとって新鮮なビジュアルが印象に残るものとなりました。
また、舞台上の音楽は、フィル・コリンズによる名曲がロックバンドの生演奏で再現され、ダイナミックなパフォーマンスと相まって、観客を一瞬たりとも退屈させない演出が際立ちました。

そして振付はブロードウェイで活躍するクレイ・ライス=トムソン氏が担当し、ダンスシーンのエネルギーも最大限に引き出されました。このような現代的で大胆な演出は、日本でも新たな観客層を引きつける可能性を持っています

ジョシュストリックランド氏と打ち上げパーティーにて
クレイ・ライス=トムソン氏と
ストリックランド氏からの差し入れドーナツ
キャストとステージマネージャーとの集合写真


視覚的演出

ミュージカル『ターザン』は、そのダイナミックな視覚的演出が大きな特徴です。
特に、アクロバティックな演技が多用され、ターザンのツタを使ってのフライングシーンは圧巻です。
観客はまるで自分自身がジャングルの中にいるかのような感覚を味わいます。

日本での上演の可能性


ターザン』の日本での上演は、他のディズニーミュージカル作品と同様に、多くの観客を惹きつける潜在力があります。
例えば、劇団四季が手がける『リトルマーメイド』や『アラジン』などのディズニーミュージカルは、日本でも非常に高い人気を誇っています。『ターザン』も、こうした成功を追う形で上演されれば、多くの観客が集まることでしょう。

特にターザンの物語は、家族、自己発見、自然との共生といった普遍的なテーマを扱っており、日本の観客にとっても共感しやすい内容です。
ターザンが自分のルーツを探りながら成長していく姿や、愛する者のために戦う姿は、文化を超えて人々の心を打つものです。

また、フィル・コリンズの音楽は、感情に訴えかける力が強く、言語を超えて響くメロディーが特徴です。日本で上演する際も、音楽の持つパワーが言葉の壁を越えて、多くの人に感動を与える可能性が高いです。

なぜ『ターザン』を見るべきなのか


ターザン』は、音楽、アクション、そして感動的なストーリーが融合した作品です。特にフィル・コリンズが手がけた楽曲は、映画版で使われたものに加え、ミュージカル版のために書き下ろされた新曲も含まれており、観客をより深く物語に引き込む役割を果たしています。

代表曲である「You’ll Be in My Heart」「Two Worlds」は、家族や愛のテーマを強調し、ターザンが自分のアイデンティティを見つけ出す過程を音楽で表現しています。
さらに、このミュージカルの特徴的な点は、ターザンのアクロバティックなフライングパフォーマンスです。ダイナミックなアクションは、観客に大きなインパクトを与え、ステージ全体を活用した立体的な演出が魅力的です。

この作品は、ただの「子ども向け」の物語ではなく、大人も楽しめる深いメッセージが込められています。家族や仲間との絆を通して成長するターザンの姿は、自己探求の物語として、誰もが共感できるものです。

結論



FPACの公演のようなロックンロールとジャングルの融合という斬新な演出は、日本の舞台においても新しい風を吹き込むでしょう。
伝統的なミュージカルの枠を超えて、ロック音楽やダイナミックなアクションを取り入れた演出は、特に若い世代の観客に強く訴える力を持っています。
また、ゴリラたちの衣装やステージングが、まるでロックコンサートを観に行くかのような視覚的なエンターテイメントを提供することで、観客に新しい体験をもたらします。日本の舞台でも、こうした斬新な演出が受け入れられることでしょう。

ターザン』が描く自然との共生や異なる文化との融合は、現代社会の多くの問題にも共通するテーマです。
日本においても、環境問題や多文化共生の課題が注目されています。ターザンの物語は、これらの課題に対する新たな視点を提供し、観客に考えさせる要素を持っています。
自然と人間の共存を描いた物語は、現代日本においても時代を超えて共感される普遍的なテーマです。

日本で『ターザン』が上演されることは、単なるミュージカルの上演にとどまらず、日本の観客に新しい文化的体験を提供する重要な機会となるでしょう。
この作品は、若い世代を中心に幅広い観客に受け入れられる可能性があり、特に斬新な演出や音楽がその魅力をさらに引き出します。
また、家族で楽しめるミュージカル作品として、親子で観劇する機会が増えることで、日本のミュージカル文化がさらに発展することが期待されます。

最終的に、『ターザン』はその壮大な物語、感動的な音楽、そして舞台演出を通じて、日本の舞台でも大きな成功を収める可能性が高い作品です。このミュージカルが日本でどのように受け入れられるのか、そして観客にどんな影響を与えるのか、非常に楽しみです。

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