ストラテジックイノベーション3

さて、第3回。今回は、借用の課題について。第2回は忘却の課題でした。簡単に振り返ると大企業で新規事業を起こす時に、大企業での仕事のやり方や文化に捉われると失敗するよ!って話でした。にも関わらず、今回は大企業の資産を借りようって時の課題です。資産には仕事のやり方や文化も含まれるかもしれないし、資金だけかもしれない。様々なものが考えられるがいずれにせよ、何でも借りればいい、って話ではないはず・・・。

借用の課題

これは、大企業の持つ資産のうち、必要なものが何かをどう見極め、そしてそれをいつ借用すべきか、を問うている。

1.いつ

本書ではできるだけ新規事業が生まれたばかりの間が良いとしている。忘却の課題を懸念して、後で繋がりを作った方がいい、という考えもあるが新規事業が成長するに従って、ますます孤立を深め、従来事業との統合が難しくなる、と。
これは確かにその通り。成長するに従って、つまりうまくいくようになると、だんだん新規事業は従来事業の仕事の進め方をバカにし始める。一方、従来事業側からは金食い虫なんだろ?という目で新規事業を見なす。どんどんと溝は深まるばかりで、人材交流をしたいという気運も失われるし、孤立を深めるばかり。忘却の課題は念頭に置きつつも、お互いに応援し応援されやすい状態の時から、接点を持つべき。

2.何を

その前にまず分かりやすい借用すべきではない相手から紐解いていく。
利害対立が明確な所からは借用するべきではない。まぁ、何となく明確だとは思う。私の経験では、カニバリズムを起こすような事業ではなかった。本書ではニューヨークタイムズ(紙媒体)とニューヨークタイムズデジタル(ウェブメディア)の例が挙げられているが販売部門と協調すべきではない、と語られている。
そして、支援部門(人事、IT、財務、法務、購買など)は共有するべきではない。こちらは、、、もうその通りですね。私の経験上も絶対やめた方がいい。この辺りは組織文化を形作っている根源。人事一つとってもどの様な人が評価されるのかは、従来事業と新規事業では大きく異なるはず。また、ITに関しても重点投資対象は絶対異なるし、財務、法務、購買も言わずもがな。当初はコスト削減、と考えていたとしても間違いなく新規事業の勢いを削ぐ事になる。

では、何を借用すべきなのか? それによって新規事業が決定的な競争優位性を得られる時にのみ借用すべき(本書では3つ程度までと言っている)。先に挙げたようにちょっとしたコスト削減くらいなら決して借用すべき理由にはならない。私たちの場合、実際に借用して価値が高かったと思えるものは、綱領、資金、ブランドだけだったと思える。未だに借用を続けているサプライチェーン、購買システム、IT、人事システム等は正直、足を引っ張っていると思う。ちなみに企画開発、要求開発に長けていた私が、この様な「経営」に興味を持ったが為に人事評価が下がり結果的にはその新規事業を追い出されてしまった。(いつか力をつけて見返して返り咲いてやる!w)

3.どのくらい

借用できる環境を作った後も事業本部長クラスに後を任せっきりにするのではなく、本社上層部クラスでの関与が重要。そしてそれを事業本部長クラスではなく現場レベルでの協調を促すことが重要。その為には次の4つのポイントがある。
① 共通の地盤を強化する
これは綱領やクレドをきっちり再認識する事。確かに先ほど、お前らは金食い虫だ、なんだと言うのは偉い人だった気がする。むしろ現場クラスの人たちに僕らの思いを伝えると、綱領が一致していたので共感してくれる人が多かった気がする。
②物理的に遠からず近からずの場所にオフィスを設置
リモートワークが多い今の時代ではアップデートされた考え方が必要になってくるが、本書では独立したオフィスを1.6km程度離れた箇所がちょうど良いとしている。要は普段の通勤や、ちょっとした用事があればすぐに顔を出せる距離、という事だろう。現在の様なリモートワークで言えばバーチャルオフィスを行き来できる状態にしたり、Teamsでお互いに参加出来ている状態かもしれない。
③従来事業のマネジャーのインセンティブの再考
これは、、、想像もしてなかった。つまり新規事業へ力を貸した事を評価対象に入れるべき、という事である。そうですね、きっとその通りだと思う。今、自社でそのようなインセンティブが働いているかは知らないが、「誰かの笑顔のために」という事を社長がひっきりなしに言うようになってその様に「力を貸す事」が当たり前になってきて以前よりも仕事を進めやすくなった気がする。
④従来事業の経営資源の確保
とは言え、ってやつですね。新規事業のために、「今うまくいってる」従来事業がコケたら元も子もないですもんね。従来事業のマネジャーたちはそれこそ強い責任感を持っているので経営資源を確保して安心させるのはとても重要、と言う事ですね。

そしてこれらのポイントを踏まえて建設的な協力関係が築けているかをモニターし続けるダイナミックコーディネータ(DC)の存在が必要。そして、DCは事業本部長から等しく報告を受ける一人の上級幹部であるべき。そして、当然DCは新規と従来事業の違いを理解し、強く大きい従来事業の影響を過度に受け過ぎないように心を砕く必要がある。

6つの借用戦略

上記の課題を踏まえて、既存事業から借用するものを6つに分類している。

1.既存の仕事のやり方のアウトプットを借りる
例えば自動車製造会社からレンタカー事業を新たに始める際に、自動車を借りる、等。
2.新規事業と既存事業との共同事業
販売事業の法人顧客を、再掘削してレンタカー事業に回す、など。その逆もまた然り。
3.両者ともにメリットのある仕事の開始
(うーん、ここはよく分からない。。。)
4.ブランドの共有
これは分かりやすい。レンタカー事業を始めるにあたって、自動車製造会社のブランド名を借りるって手法。トヨタレンタカーなんてのはそのまま。
5.ナレッジの借用
これも分かりやすいですね。ただ、ナレッジと共に既存事業の文化も一緒に入ってくるので忘却の課題との棲み分けが重要となる。
6.設備の借用
これもとても分かりやすいので割愛。

これらは特にベンチャーと差を生み出す事の出来る所なので意識的に進める必要がある。というかここをしっかりとやらないのであれば、大企業で新規事業を立ち上げる意味はない。

終わりに

これで、忘却の課題、借用の課題についてまとまってきた。そして、次回は学習の課題。学習の課題に触れるとストラテジックイノベーションの全体像が完成する。しかし、こちらは大企業ならではの課題って何だろう?スピード感?企業イメージを崩さない様な学習サイクルの回し方?

なんでしょうね?あまり思い浮かびません・・・ので、読み進めるのが楽しみです。では!

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