ストラテジックイノベーション2

前回のストラテジックイノベーション1に続き、第二章についてのまとめ記事を作成。現在、通ってるビジネススクールの事務局の方に紹介してもらった本なんだけど、確かに僕の興味のドンピシャでとても興味深い。そして、これまで新規事業を立ち上げてきた時にぶつかった壁について丁寧に解説(第1章)されていて強く共感。今後は、既存ビジネスの成功体験の忘却、既存ビジネスでの強みをどう生かすのか(借用)、そして新規ビジネスで如何に学びを得るのか、が語られていく。きっと、僕の知りたい核心に迫ってくれるはず。

忘却問題

原因の前に、忘却問題についておさらい。
戦略的イノベーションとは、新しいビジネスモデルの有効性の検証である。それは検証開始までにお金も時間もかかり、検証結果が出るまでにもさらに時間が掛かるという特徴を備えている。しかし、既存事業で成功してきた人は、確度の高い予測を立てそれに従って愚直に業務を進めてきた人たちだ。そして、それを投資家らも求めている。その仕事の進め方をそもそも見直さねばならない。

戦略的イノベーションは、マネジャーに対して大きな重圧とあいまいさを課す。そのような環境の中で人は知らず知らずの内に、馴染みのある方へと引き寄せられていく。安心できる考え方(既存事業の進め方)に頼ろうとする。個々の仕事の進め方はこのように引っ張られがちだ。
仕事は一人で進めるものではない。マネジャーはこれまで培ってきた人間関係を使って相談しながら業務を進める。そうするとなおのこと、既存事業の仕事の進め方に引っ張られてゆく。
また、昇進システムなどの人事評価システムは既存事業のままであるケースがほとんど。そして、既存事業での働き方へどんどん加速していく。忘却などできっこない。
最後に、社内システムも既存事業を進める為に最適化されている。そうすると、もう・・・。

失敗の具体事例

本書ではCMTという米国企業での事例が紹介されているが、私の経験を踏まえて一部デフォルメして紹介する。

・希望的観測に過ぎない事業計画が予定通りに進まないことに、トップが失敗のレッテルを貼った結果、数えきれないくらい役員が入れ替わった
・希望的観測に過ぎない事業計画が予定通りに進まないことが、計画の甘さだという反省に立ち、遅れる度に計画の策定を繰り返す。しかも本業と同じような5ヵ年計画を。
・従業員は、すぐに変更される計画を信じなくなり、計画策定を繰り返す上位陣に対する不信感が募る
・新しい技術的課題を解決できずに、ズルズルと開発費ばかりが増えていく
・開発費をダラダラと使い続けてしまうことで、従業員の自己肯定感の低下
・顧客が要求する以上の品質基準にこだわる
・本業で市販品を購入して使うという事をした事がなかったため、購買から部品管理の仕組みが分からなかった。結果として、市販品なのに図面を作成するというムダを発生
・本業で使われている調達システムを使うため、ただのネジを購入するだけでも2週間近く掛かる
・メカ、電気、ソフトとそれぞれに対して別系統のチームが組まれていた為、チーム間での反目が生まれた

そもそも戦略的イノベーションの事業計画には、根拠となる事実などほとんどない。現場のメンバが現実的な計画を立てようものなら、経営陣から理由を問い詰められ、不確実性について説明出来なければ、楽観的すぎる計画が立案される。つまり、経営陣の期待の表れでしかない。しかも悪いことに、その事業で活躍できるはずだった専門職の人材は計画策定と経営陣への説明に追われるのである。生産性はどんどん悪化し、更に計画が遅れるという悪循環。

なんだかだんだん愚痴が混ざってきたのでここらでストップさせてこれに対してどうやって忘却の課題を乗り越えるのかについてまとめていく。

忘却の課題解決のために。

・現場にも管理職レベルにも外部の血を入れる
本書では具体的に社外出身者を入れよ、とあるがおそらくそうではない。既存事業のやり方に陶酔している、もしくは抵抗できない社外出身者を入れても仕方ない。社内外、問わず新たなやり方を厭わない、失敗を厭わない、人材を入れるべき。それは現場にも管理職レベルにも。

・評価基準を変える
きっと、これが1番重要。いくら現場や管理職に失敗を厭わない人材を入れたところで、失敗をマイナス評価するような評価基準ではいつしかその活力は失われてしまう。つまり、計画に対する達成度で評価していてはいけない。管理職レベルでは、良い判断をしているか、変化に対応できているか、学習しているか、現場レベルでは更に変化に対応して努力して前に進めているのか、といった判断を加えるべき。その様な定性的な判断では評価できない、と言う声も上がるかもしれない。しかし、エクスポーネンシャル思考が叫ばれているような今においていわゆる成長しているかどうかを定量的には測れないのだと思う。むしろ、最初はなかなか成功の芽が出なくて定量的には何も見えなくてもやり続ける事を許容できる環境を準備することが重要。その為には評価基準を見直す必要がある。

・評価基準を変える(特に事業評価)
新規事業を評価する際にすぐに思いつく案としては、収益性がある。しかし、収益性には曖昧さの余地が残る。例えば、日産の例が思い出される。当時、ゴーン社長赴任直後、収益がV字回復をしたと新聞では騒ぎ立てられていたが実際には設備償却の評価方法を変えた事が大きな要因の一つに過ぎずキャッシュフローが改善された訳ではない(※)。直後に回復なので、よく考えたら当然だけど。この様に経営資源のコスト計算には常に恣意性が生じる。従って、新規事業の場合は少なくともビジネスモデルが確立するまではキャッシュフローが少しでも増えているかどうかで評価されるべき。
※日産が嘘をついたわけでも何でもない。騒ぎ立てる側がセンセーショナルなタイトルをつけただけ。
ビジネスモデルの確立ってなんだっけ?ってなるが、それはまた別途。

・新しい社内文化を築き上げる
これまで上げた内容と重なる部分が多分に存在するが、綱領やクレドにあたる様な内容は受け継げる事もあるが、それ以外は基本的に全て受け継がない。品質第一など、顧客を思えば当たり前に思えるかもしれないが新しい事業ではそうではないかもしれない。全て1から築き上げていくことが重要。

これで一旦忘却の課題は終了。次は借用の課題。ここだけ見ても、反省したい部分がたくさんあって難しいですねぇ・・・。

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