ストラテジックイノベーション1

僕自身は大企業に勤めている。そして、新規事業創出のために10年弱を投じた。ロボットを使った事業だったので、企画、開発、設計、生産、アフターサービス、そして更なる新規ビジネスの開発、と多くの分野を経験してきた。お客さんからは感謝の声をたくさん頂いたが、とてもじゃないけど成功したとは思えない。

ストラテジックイノベーションとは

スタートアップにも興味はあるけど、社内起業という形にはもっと興味がある。大企業の中で起業というと、ベンチャー企業よりも有利なことばかりで成功率は高いと思ってた。それでも社内企業なかなかうまくいかない。なぜなのか。この疑問に答えてくれる書籍がストラテジックイノベーション。読み進めながら自分なりにポイントを整理して行きたい。今回は1章分。全部で10章。

イノベーションの種類

まずは、イノベーションとは何かを企業リサーチによって4つに分類する。
①継続的プロセス改善:GEとか多分、トヨタ
②プロセス革新:ウォルマートのスマートタグを使った商品管理
③製品やサービスのイノベーション:玩具やゲームメーカ
④戦略的イノベーション:新しいビジネスモデルを伴う、イケアやサウスゲート
この4つのイノベーションは番号が大きくなればなるほど、費用や時間が多く掛かり、結果が出るまで時間がかかる。だから①をやろうという話じゃない。このVUCAと呼ばれる時代には最終的には④を実施しないといつかは行き詰まる。もちろん①〜③をやらなくていいという訳ではなく、それらを実施しながらも④をやる必要がある、ということ。

企業が若いうちはたいてい、経営資源はそっくり成長の原資と既存事業の拡張に投じなければならないと考え、④は成長が鈍るまで後回しにされる。物事が思ったより上手くいけば、「どうしてわざわざリスクを冒す必要がある?」と考える。状況が厳しくなると「経営資源を集中投下して、中核事業の立て直しを図らなければ」だ。
そして④を複数回関われるマネジャーはいない。成功すれば、そのイノベーションを継続成長させるし、失敗すれば去っている。そのため、以下のような難しさが更に追加される。
・職業生活でただ一度の挑戦になるかもしれない
・技術や創造性に比べて、経営手法が頭打ちになりやすい事
・社内に自分の直接経験で指導してくれる人はまずいない事
だからこそ、他社の事例を分析して学ぶ意味がある。
多くの企業でイノベーションに失敗するのは、アイディアを創出できないからじゃない。アイディアを実行できないから。優秀な人が素晴らしいアイディアを思いつき、素晴らしい行動力で実行しようとすると、初期の頃はうまく進み始める。しかし、成功の兆しが見え始め、より資源を消費し始めると組織レベルのあちこちで衝突が始まる。その結果、多くの場合失敗に終わる。

大企業でイノベーションが失敗する仕組み

つまり、イノベーション能力というものは、実行力と創造性の積で表される。そして、実行力・効率性を重んじる組織(コードA)に求められる事は
・自分の職務に専念する
・得意分野を追求する
・現在の顧客ニーズを満たす
・物事を計画する
・説明責任を要求する
・物事のやり方や組織構造を押し付ける
一方で、創造性を求められる組織(コードB)では
・枠にとらわれずに発想する
・未知の領域に挑戦する
・将来の顧客ニーズを予測する
・あるがままに委ねる
・自由と柔軟性をもたらす
・手続きを廃し、組織構造を超えた交流を促す

大企業では多くの場合、コードAが主流。そうじゃなきゃ、多様な人間の集まりの中で成果を最大化できない。一方で、起業の第一歩として求められる事はコードB。コードBの組織で成功を収めた後にいきなりコードAに移ろうとしてもうまくいかない。一方でコードBのままでもうまくいかない。ちょうどその間となる組織形態(仮にコードX)が必要となる。コードXが存在すればきっと、大企業内起業の成功率を高めることができるはず。コードXは、一つの企業内に新規と既存の事業が共存するという不自然さが生み出す課題に応えるためのもの。大企業がベンチャー企業に対して優位に進めるための課題は大きく三つ存在する。
新規事業は①既存事業の成功した理由の要因をいくつか忘れる必要があり(忘却)②同時に既存事業の資産のいくらかを借用する必要があり(借用)③不確実な新興市場で成功する方法を学ばなければならない(学習)。これらの課題をクリアすることで、ベンチャー企業に対して圧倒的な優位な立場を作ることができる。ここで一度、忘却もしくは借用すべきものを列挙してみる。

忘却すべきもの:
・既存事業の事業定義(顧客、提供価値、それをどのようにもたらすのか)
・既成概念(既存事業の競争力は、役に立たないかもしれない)
借用すべきもの:
既存の顧客、流通チャネル、供給網、ブランド、信用、製造能力、さまざまな技術

これらは、ケースバイケースで忘却すべきものと借用すべきものが入り混じっている。おそらくこの事が、事を難しくしている要因と思われる。また、これらはそれぞれ独立ではなく連関している。例えば、既存事業と顧客が類似しているが流通チャネルが異なる場合が存在する。紙媒体のメディアが新たにウェブメディアを発信したいような場合がそのケースに該当するように思える。どこまでを顧客と見做すのか、最終ユーザ?それとも本屋さんやコンビニを含める?印刷業者? ウェブメディアが当たり前となった今では何となくイメージも湧く。しかし、全く新たなビジネスモデルを生み出すような時にどこまでが想定できるのだろうか・・・。

大企業でイノベーションを成功させる為の組織形態

まずは、忘却、借用、学習という3つの課題に取り組みやすい組織形態を考察する。組織をその組織の所以とするものを分析するにあたっての方法論として、マッキンゼーの7Sが存在する。すなわち、System、Structure、Staff、Style、Strategy、Shared Value、Skills。
新たな価値を創出していくのであれば新規事業の7Sと既存事業の全て一致する事はない。必ず異なる部分があるはず。どうすれば、忘却、借用、学習の3つの課題を解決しやすい組織に出来るのかを書籍より抜粋する。

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※コアコ=既存事業、ニューコ=新規事業のこと

第1章の終わり

本記事はここまで。この後、第二章以降、忘却、借用、学習の課題について実例を踏まえて説明されるそう。とても楽しみに読み進めよう。

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