ストラテジックイノベーション4

さて、これでストラテジックイノベーションの本も最後、学習の課題。これまで、忘却の課題と借用の課題について学んできた。忘却の課題については、あちこちで過去に立ち上げた新規事業の振り返りがあちこちに見られた。借用の課題についても、いくつか見受けられたけど、自分自身の業務範囲の外が多く思い当たる節はあったけど推測の域を出なかった気がする。(僕自身はエンジニア。)

しかし、今回は自身の業務に直結する内容が多そうな気がする。ワクワクする。

学習の課題

そもそも学習の課題について改めて言及しておく。①仮説、計画を立案して、②実際に試して現実とのギャップを計測して③仮説を修正する。そしてこれを④素早く回す。この繰り返しのことを学習と呼ぶが、①〜④の何れかが機能不全に陥ることを学習の課題と呼ぶ。

①仮説、計画を正しく立案できない
そもそも仮説、計画は社外との関係や社内政治の影響を多分に受ける。例えば、1000万円を目指そう、といった丸められた値になる。正しく見積もって算出するのではなく多くの場合、政治的な影響を受ける。

②現実とのギャップを計測できない
新規事業の実績評価は、忘却の課題の際にも述べた通り非常に曖昧。そして、多くの場合、初期にはかなりの赤字を出すものである。新規事業のリーダは、ここに注目をされて社内政治で敗れると予算はおろか自分の首も危うくなるという疑心暗鬼に陥る。その結果、業績データの出し渋りや遠い未来の話や良かったニュースを流して意識を逸らせたり、そもそも業績データの算出の仕方に難癖を付ける等、現実の計測を困難にさせてしまう。その結果、いよいよチームは学習できなくなっていく。ここで怖いのは新規事業のリーダだけではない。新規事業に関わる全てのメンバがこの様な疑心暗鬼に陥る可能性があるという事。その様な状態になってしまうと例え、誰かが現実を見ようと声高に叫んでもそのチームから排除されてしまう。

③仮説を修正できない
目標必達の文化がこれを阻む。その為、仮説を修正することができない。別の言い方をするとピボットすることができない。現実には達成できないのだから結局どうなるのかと言うと「○○をすれば到達できる」「○○の想定外の外乱が発生した為、目標未達。」共に厄介な言い訳だが、前者に関しては仮説が間違っている事を認められないために、ただただ先へ突き進むことになる。後者に関しても、想定外の外乱を想定外のままにしておくので学習が進まない。

④素早く回せない
うまくいっている既存事業の時のように長い期間、詳細な計画を作成してしまう。作成する事自体が悪いわけではないが、新規事業の際には計画と現実は当然変わるのでどんどん乖離が大きくなり、計画修正ばかりで時間がなくなるか若しくは計画見直しを全く実施しない、と言う事が発生する。結果的に学習することができなくなってしまう。

この様に学習の課題を各プロセスごとに振り返ってきたが、そもそもの大きな問題に学習を成果と見做さない文化、と言うものがある。先ほど目標必達の文化という表現をしたがこれの事である。仮説・計画通りに事が運んだことを成果として見做して、それ以外を成果とは見做さない、という事だ。

終わりに

本書ではこの後に、学習の課題を克服するための計画法、TFP(理論型計画法)なるものを紹介している。この長いブログを読んでくださった方のためにそのステップだけ、最後に付録として追記しておきます。しかし、自分自身が試した訳でも大企業の中で新規事業を進めるにあたって重要なポイントではないので詳細は割愛し、ストラテジックイノベーションについてはここで止めておきます。

しばしば愚痴の様な箇所も出てきてしまったけど自分自身の経験を振り返る良いきっかけになった良書でした。今回の振り返りの中で確かに大企業で新規事業を成功させるポイントが見つかってきた気はするけど、まだまだ要素はたくさんある気がします。特に本書では経営、マネジメントに関する話が多く一個人としてどうあるべきなのか、にはあまり触れられなかった気がします。今後もそういったものが見つかれば今回の様に学びと振り返りをまとめていこうと思います。

そして、本ブログを書き下してみて気付いた事として僕は大企業で新規事業を成功させたい、が目的ではなく僕の様に苦しんだ人を一人でも減らしたい、が目的なのだなと気付かされました。ちょうど、年末。来年から新しい組織で働く事になりました。もっともっと成長していって、僕のように苦しむ人を減らせる様な組織を作っていきたい。

付録;TFPの8つのステップ

①事業がどう動くかを表現する;どんな行動が成功や失敗につながるか?
②測定基準を決める;何を測る事ができるだろう?
③目標を立てる;何が多面的に成功をもたらすのか?
④支出の基準を作る;成功するには、いくら使う必要があるか?そしていつ?
⑤パフォーマンスを予測する;既に組んだ予算でどんな結果が期待できるか?
⑥重要変動要因を洗い出す;事業の成功や失敗を決めるどんな仮定を立てたか?こうした仮定をどうすれば検証できるか?
⑦予測と結果とのズレを分析する;どんなエビデンスが集まったか?ロジックの各部分は正しかったか、それとも誤っていたか?重要変動要因は得られたか?
⑧計画を改定する;学習に基づいて、計画を改定する必要があるか?もしあるならどう変えるべきか?

ほら?順番はどうあれ、普通のことにしか見えないでしょ?これを阻むさまざまな要因があるから大企業で新規事業を始めるのが大変、ってことだと思うのに。(スタートに戻るw)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?