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投球障害予防チェックポイント ー肩関節ー

投球障害を予防するためには現在痛みが無くても日々全身の状態をチェックする必要があります。今回は肩のチェックポイントについて説明していきます。

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■可動性・柔軟性評価

①CAT(Combined Abduction Test)

②HFT(Horizontal Flexion Test)

|方法

CAT:仰向けになり肩甲骨を固定した状態で上腕骨を他動的に外転させます。

HFT:仰向けになり肩甲骨を固定した状態で上腕骨を水平内転させます。

|評価ポイント

CAT:投球側の肘が顎のラインを越えれば正常です。柔軟性が高いと投球側の手の  ひらで対側のベッドを触ることができます。

HFT:投球側の上腕骨が体幹と平行なラインまで外転するのが理想です。

③上肢挙上運動

ボールを投げる以前に上肢が正常に挙上できるかを見ることはスクリーニングに有用です。胸郭、肩甲帯、肘関節などのどこに問題があるかを大まかに把握します。

バンザイ


④2nd 内旋

外旋筋群の柔軟性や肩甲上腕関節の求心性を評価します。

野球選手では投球側の肩内旋制限が頻発します。

⑤2nd 外旋

肩外旋制限はMER(Maximun External Rotation:最大外旋)での肘障害のリスクを増大させるためチェックが必要です。

|方法

2nd内旋:仰向けの状態で肩90°外転位、肘90°屈曲位から肩を内旋させます。

2nd外旋:仰向けの状態で肩90°外転位、肘90°屈曲位から肩を外旋させます。

|評価ポイント

回旋可動域の左右差と疼痛の有無をチェックします。

肩甲骨の代償が出ないように注意して実施します。

野球選手では一般的に外旋可動域が拡大、内旋可動域が減少することが言われておりますが、TRM(Total Rotational Motion:内旋+外旋の総和)が5°減少することにより肘障害のリスクが2.6倍になることが報告されています。

Kevin E Will et al. Deficits in glenohumeral passive range of motion increase risk of elbow injury in professional baseball pitchers: a prospective study. Am J Sports Med. 2014 Sep;42(9):2075-81.

⑥広背筋テスト

広背筋の柔軟性低下は上肢挙上制限に繋がり、肘下がりを引き起こします。

また、肩甲骨の挙上や上方回旋の制限にも繋がります。

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■筋機能評価

①三角筋

|方法

立位で肩90°屈曲位、肩90°外転位のそれぞれのポジションからMMTの方法に準じて抵抗をかけます。

|評価ポイント

投球側上肢の出力が十分発揮されているか左右差をチェックし、その際の疼痛の有無も併せて確認します。

腱板機能

投球動作では上腕骨が高速で回旋するため、どの投球相においても上腕骨頭が求心位を保つ必要があります。求心位保持には腱板機能が重要です。

基本的に左右差や疼痛の有無をチェックします。抵抗をかけた際に肩甲骨の代償が生じないかを確認し、肩甲骨を他動的に固定して腱板出力が上がる場合は肩甲骨に問題がある可能性があります。

|full can test(棘上筋)

|1st 外旋テスト(棘下筋

|belly press test(肩甲下筋)

|挙上位外旋テスト(棘下筋・小円筋)

外旋

外旋角度が50°以下の場合、投球障害リスクが4.4倍高くなる事も報告されています。

●CYBER BASEBALL. 「【高校生~】投球障害予防!もっとも重要なのはインナーマッスル」.https://www.cyber-baseball.jp/high/182/

③僧帽筋

僧帽筋の筋出力は減速期における肩甲骨の安定性に影響し、出力低下があると結果的に肩後方筋群の柔軟性低下を惹起する可能性があります。

僧帽筋

前鋸筋

肩甲上腕関節、肘関節の筋出力を十分に発揮するためには土台となる肩甲骨の安定性が必要不可欠です。

肩甲骨安定性を確認する方法としてEPT(Elbow Push Test)を使用します。

|方法

座位で肩90°屈曲位、胸の前で腕を組んだ状態をとります。そのまま肘を後方に押し込みます。

|評価ポイント

脱力が生じ肩甲骨の安定性が維持できない場合に陽性となります。


以上が投球障害予防のためのチェックポイント-肩関節-になります。

トレーナーやセラピストだけでなく選手同士や指導者、親御さんでも日常的にチェックできると有用だと思います。

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