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カップルの離婚や破局を予測する4大要素とその克服について

結婚や恋愛関係の改善や修復についての助言は世の中に溢れており、ネット記事や自助本、信頼できる身近な人達からのアドバイスは、多くの場合、「こういう新しい習慣を取り入れたら良くなるかも」「こうしたほうが良い」など、「現状に何か新しいものを取り入れる」という前提があります。

これはいわゆる「欠損モデル」であり、つまり、欠損がその事物の問題なのだから、その欠損を補えば問題は解決する、という前提です。
 
しかし、「何か新しくて良いものを既存の関係性に加える」ということが常にそのカップルの関係性の改善や修復において最も効果的であるとは限らず、また、必ずしもそれが最優先事項とも限りません。
 
なぜなら、多くの場合、問題のある関係性には「取り除くべき有害なもの」、「やめていくべきこと」が存在し、これらが2人の関係性を蝕んでいるからです。
 
これらの「有害なもの」の除去に向けて取り組まずに、何か新しいものを取り入れようとしても、あまりよい結果は望めません。もちろん、何も試さないよりはましですが、それは例えば、私のカップルセラピストの師であるAdam Sheck心理学博士がかつて仰っていた例えをお借りすると、「家が燃えているのに庭の花に水やりをしている」ようなもかもしれません。

今回のテーマは、まさに、これらの「関係性から除去すべき有害なもの」についてのお話です。具体的には、離婚や別離に至りやすい4大要素です。
 
ちなみにこの有害な4大要素は、結婚関係や恋愛関係に限らず、親子関係や友情など、あらゆる親しい関係性において言えることであり、パートナーシップ以外の関係性にも即応用できるものです。パートナーシップ以外の親しい関係性でお悩みの方にも役に立つ内容であると思います。
 
カップルセラピストの権威である心理学者、ジョン・ゴットマン(John Gottman, Ph.D)は、結婚しているカップルの将来の関係の方向性や離婚などの正確な予測において有名ですが、その彼が発見した、「離婚・別離が予測される最も有害な4つの要素」が、ヨハネの黙示録の四騎士(Four Horsemen of the Apocalypse)と呼ばれるものです(脚注1)
 
ちなみにこの「四騎士」とは、クリスチャンの間では、「未来の苦難の予言」の象徴とされていて、我々カップルセラピストの間では、カップルの離婚、破局の危険性の査定などにしばしば使われています。
さて、そのカップルの将来の破局を予測する最も有害な4つの要素とは何でしょう。
 
それは、1)「批判」(Criticism), 2)「軽蔑」(Contempt), 3)防衛的な態度(Defensiveness), 4)無視・無反応などによる話し合いの阻害 (Stonewalling、直訳すると、石垣を作ること)、の4つであると言われています。
 
4つ目はちょっとわかりにくいかもしれませんね。Stonewallingとは、石垣や石の壁を作るというもともとの意味から派生して、「(相手の話に)返答しない、協力しない、(沈黙などで)妨害する」という意味の動詞でもあります。とりあえずは、無視・無反応と覚えておけば良いと思います。
 
本題に入る前に、いくつか注意していただきたいことがあります。
 
まず、これらの4つの要素は、あくまで離婚や破局との「相関関係」であり、「因果関係」ではない、ということです。相関関係とは、変数Aの変動に連動して変数Bも変動する、というまでのことで、多くの場合、変数Aが直接に変数Bに影響を与えているのではなく、変数Aと変数Bを媒介する「第三変数」の存在があります。たとえば、こうのとりの多い街では出生率が高いという事実がありますが、これは当然、こうのとりが人間の赤ちゃんを運んでくるわけではありません。こうのとりの数と、出生率を繋げるであろう、いくつもの第三変数が仮説として挙げられます。このように、批判・軽蔑・防衛的な態度・無視が、直接的に離婚と結びついているというよりも、これらの4大要素それぞれと離婚を結びつける第3の変数について考えてみた方が有益であると思います。
 
また、これらに因果関係があるとしても、因果関係は往々にして円環しています。例えば、離婚の危機にあるカップルは、不仲ゆえに、互いを無視することが多い、という可能性があります。この場合、因果関係が逆であり、互いに無視をするから離婚の危機が生じているのではなく、離婚の危機というレベルに仲が悪く、お互いの存在が不快であるため、互いに無視することが多い、ということです。
 
このように、多くの場合、これらの4つの要素と破局の危機の因果関係は、円環的であり、相互に影響しあっています。
もうひとつ、これらの4つの要素は、便宜上、4つに分類されていますが、互いに重複している部分も少なからずあります。例えば、防衛と無視の重複している部分は多く、また、軽蔑と無視の重複部分も多いです。パートナーを軽んじていれば無視しやすいですし、また、相手の話に対して防衛的になっていると、貝になったりして、その結果、無視や無反応も起こりがちです。この場合、防衛的な態度に無視が含まれています。

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