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敏感肌用スキンケア製品について考える

こんにちは。スキンケアは心の潤い。DSRのたかおかです。

敏感肌用スキンケア製品は数多く市販されていると思いますが
中には首をかしげてしまうような成分のものも・・・
そこで敏感肌用スキンケア製品の開発者として
処方開発のポイントを簡単にまとめてみたいと思います。
また、敏感肌の方にとっては、製品を選ぶ際の指標になれば、と思います。


敏感肌ってどんな状態

敏感肌の方は、次の2つのタイプがあると考えられます。

  • 体質的や疾患などでアレルギー物質や刺激性物質に過敏に反応しやすい肌

  • 紫外線や化粧品の使用などで皮膚トラブルを起こしやすくなってしまった肌

いずれにしても、皮膚のバリア機能が低下しています。

バリア機能の低下とは?

皮膚には、バリア機能と呼ばれる外界からの物理的、化学的、生物学的な刺激の侵入から生体を保護し、また体内の水分や血漿、栄養分が体外へ漏出するのを防ぐ機能があります。
主に皮膚の角質層が、そのバリア機能に寄与しています。
下記にそのバリア機能の重要な3つの要素をあげます。

  • 皮脂:トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、遊離脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステルなど

  • 天然保湿因子(NMF):アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、ミネラルなど

  • 角質細胞間脂質:セラミド、コレステロール、脂肪酸、コレステロールエステル、糖セラミドなど

皮膚のバリア機能が正常な状態(左)と壊れた状態(右)の模式図

バリア機能が正常な状態であれば、左の図のように微生物やアレルゲンなどの刺激が肌の内部へ侵入するのを防ぎ、また水分の喪失も防いでいます。
一方、バリア機能が壊れた状態では、右の図のように微生物やアレルゲンなどの刺激が肌内部へ侵入し、水分も喪失してしまいます。

さらに、神経線維はバリア機能が正常であれば(左図)通常は真皮までしか伸びていませんが、バリア機能が壊れて刺激が表皮内部まで侵入してくると(右図)、その刺激によって神経線維が表皮の表層まで伸長してきています。

炎症性サイトカインが分泌されるとどうなる?

バリア機能が壊れて、外界から微生物やアレルゲンなどの化学物質などが侵入することによって、表皮の細胞には免疫的な刺激が加わることになります。
その結果、細胞から様々な炎症性サイトカインが分泌されます。

炎症性サイトカインとは、炎症反応を促進する働きをもつサイトカインで、免疫に関与し、細菌やウイルスが体に侵入した際に、炎症を起こすことで体を守る働きを持ちます。
(※サイトカインとは細胞から分泌される免疫や炎症を調節するたんぱく質で細胞間の情報伝達を担います。)

炎症性サイトカインは、かゆみを誘発したり、炎症を起こしたり、それによって肌荒れを引き起こします。

また、同様に侵入してきた刺激や分泌された炎症性サイトカインに反応して、細胞から神経成長因子(NGF)という物質が分泌され、これによって神経線維が刺激され、伸長して表皮の中まで伸び、表皮の表層近くまで達しています。
そのため、かゆみや痛みを感じやすい状態となっています。

敏感肌用スキンケア製品の処方設計のポイント

敏感肌用スキンケア化粧品の処方設計の主なポイントは次の2点になります。

  • 刺激を感じさせない低刺激処方

  • バリア機能を保護および積極的に回復させる処方

この2つのポイントは、ひとつの製品の中で両方のポイントを併せ持つ必要はなく、刺激を感じさせない低刺激処方の製品、バリア機能を保護・回復させる製品、とわけて考えてよいものです。

刺激を感じさせない低刺激処方とは

化粧品原料は、その安全性が確認されていることが前提ではありますが、その一方でラウリル硫酸ナトリウムのように、皮膚刺激や肌荒れを生じさせることが知られている原料も存在します。

敏感肌用化粧品では、より一層きびしく安全性の評価を行うべきで
慢性毒性や急性毒性、皮膚刺激性、眼刺激性、感作性などの情報から選択していきます。

また、同じ原料名でも規格によっては、不純物の量が異なるものもあります。できるだけ不純物の少ない規格の原料を選びたいものです。

防腐剤は、化粧品の品質を維持するうえで必要なものですが
敏感肌用化粧品では敬遠されがちです。
特にパラベンは、もっとも広く使用されている安全性の高い防腐剤ですが
市場では敬遠されています。
パラベンのパッチテスト陽性率は2%前後との報告があります。
最近では一部の多価アルコールやエチルヘキシルグリセリンのような保湿剤のカテゴリーでも防腐効果の高い原料が市販されています。
これらをうまく使用することで、防腐剤フリーもしくは防腐剤の使用量を減らすことが可能です。

オーガニックや天然系のコンセプトがもてはやされる中、植物エキスのような天然物は安全性が高いと誤解されがちですが、実は植物エキスにはタンニン、フラボノイド、カロチノイド、サポニン、ポリフェノールなど様々な化合物が含まれていて、薬効的な作用をもつ成分もあれば、有害な作用をもつ成分も雑多に含まれています。
それらの中には炎症性サイトカインの分泌を促したり、アレルギーを引き起こすものもありますので、敏感肌用の化粧品には、あまりお勧めできません。

バリア機能を回復させる処方とは?

敏感肌ではバリア機能が低下しているので
バリア機能の3つの要素(皮脂・天然保湿因子・角質細胞間脂質)のいずれか、またはすべてが欠乏しています。
そのため、これらを効果的に補うことが重要です。

皮脂の代替成分としては、油性のエモリエント成分、例えば植物油やスクワラン、ミネラルオイルなどです。

天然保湿因子(NMF)としては、アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸、糖類、有機酸などが挙げられます。
尿素も天然保湿因子として配合されることをよく見ますが、刺激があるので私はあまりお勧めしません。

角質細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、脂肪酸です。
これらがラメラ構造を形成しているのが最も効果的です。
ラメラ構造というのは層状の構造で、親水性の層と疎水性の層が交互に何重にも重なっている構造で、例えるならミルクレープのような構造です。

また、天然保湿因子の体内での生産を促す成分や、角質細胞間脂質(特にセラミド)の生体内での生産を促す、といったコンセプトの原料も最近では数多くみられるようになってきました。
そういった原料も効果的だと思います。

先ほどは、植物エキスは敏感肌用化粧品にはおすすめしない旨を書きましたが、実はおすすめしたい植物エキスもあるのです。
植物エキスの中には、炎症性サイトカインの分泌を抑えたり、神経成長因子の分泌を抑えるものなどもあり、植物エキスのメーカーさんがデータを集めています。
そのような植物エキスであれば積極的に使用しても良いのではないかと思います。
ただしアレルギーの懸念は考慮しておきましょうね。

今回は上記のような積極的に敏感肌を改善する成分について具体的にご紹介していませんが、それは追々ご紹介していきたいと思います!