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【コラム#1】大企業を破壊する技術「ブロックチェーン」の将来性

近年、日本でも外国でも富の格差が深刻な社会問題となっています。

現在の資本主義経済ではお金を持っている人がよりお金を稼ぐことができるような仕組みになっています。もちろん、この意見に異論がある人もいるとは思いますが、実際に私の周りを見てみても家庭が裕福な人ほど勉強できる環境が整っており良い大学へ行き、給与の高い大企業への入社ができている人が多いと思います。

忍 博次さんの研究「貧困環境とパーソナリティ: 都市貧困家庭の問題をめぐって」でも貧困という環境要因は学力の低下をもたらすと述べられています。

また、トーマス・ピケティー「21世紀の資本」という著書でも資産から得られる富は労働によって得られる富よりも大きく、富の格差は広がり続けると述べられています。

もちろん、大企業の中でも倉庫で作業する人と新たなサービスを開発するエンジニアでは天と地ほどの給与格差があるため、一概に大企業に勤めているから給与が高いわけではありませんが、市場を独占している大企業にはお金が集まるためより高い給与を支払う力があるのも事実なのです。

そこで、この大企業の独壇場を破壊する技術として現在注目されれている技術こそが「ブロックチェーン」なのです。


■ブロックチェーンとは何か

ブロックチェーンとは簡単に言うと複数人で正確に管理(データの追加/更新/削除)できるデータを保存するための仕組みです。
※「正確に」とは、データが一部の管理者にて改ざんされないことを意味します。

ブロックチェーンと聞くと多くの人が仮想通貨やビットコインのことだと思ってしまうと思います。しかし、ビットコインを含む仮想通貨(暗号通貨)とはブロックチェーンの仕組みを利用した一つの製品に過ぎません。ブロックチェーンとはデータを管理するための単なるプラットフォームなのです。

このブロックチェーンが持つ特性とは大きく以下の3つになります。
 ・特定の管理者がいない
 ・データが保存でき、改ざんできない
 ・第三者を介さない当事者同士の直接契約が可能

詳細な仕組みの説明は省略しますが、これらの特性を表す言葉として「分散型取引台帳技術(DLT)」「コンセンサスアルゴリズム」「ピアツーピア(P2P)」「スマートコントラクト」などというワードがありますので気になった方は調べてみてください。


■ブロックチェーンの現在と未来

ブロックチェーンはサトシナカモトという人物によってビットコインと共に発表されました。そのため、発表当初はビットコインを始めとした仮想通貨(暗号通貨)でブロックチェーンの技術が発達してきました。しかし、徐々にこのブロックチェーン技術のセキュリティの高さに注目が集まり、「通貨」以外のサービスにも利用され始めました。

例えば、大手小売企業のウォルマートでは、ブロックチェーンの仕組みを利用した配送システムを構築し、荷物の現在位置や商品情報など保管環境情報などを管理している。配送に関わる全ての情報を全ての関連事業者で管理・共有することにより、何か問題があった場合の責任の所在を明確にしたり、データの改ざんによる虚偽報告を排除することができるのである。

また、スペインにあるスタートアップ企業のRobot Cache社では、デジタルゲーム販売プラットフォームをブロックチェーンの技術を用いて開発している。彼らはデジタルゲーム売買時にゲームデータが改ざんされていないことを保証する仕組みとしてブロックチェーンの技術を用いており、世界でも類をみないデジタルゲームの中古販売を実現している。また、マインニング報酬としてゲームの購入に利用できる独自のコイン(IRON)を配布することで独自のエコシステムを構築している。

<Robot Cache社 ホームページ>
https://robotcache.com

日本でも、ビットキー社というスタートアップ企業でもブロックチェーンの技術を活用したスマートロック(bitlock)を開発し、クラウドファンディングによって多額の投資を集め話題になりました。このサービスでは高セキュリティが必要となるデジタルID認証やデジタル鍵情報の管理を分散技術やスマートコントラクトなどのブロックチェーン技術を用いて行うことでデータの改ざんを防ぎ、本人や本人が承認した人以外には解錠できない仕組みを実現しています。

<ビットキー社 ホームページ>
https://bitkey.co.jp


このようにブロックチェーン技術の活用によって仮想通貨以外にも多くの産業やサービスにおいて今まで実現が困難だったサービスを創造することが可能になりました。

さらに、こうしたサービスは今までのサービスには依存しない新たなエコシステムを構築することができるため、GAFA(Amazon、Apple、Facebook、Alphabet(Google))やアリババ、テンセントなどといった中央集権型サービスを提供している超大企業による市場の独占や生活の依存による格差からの脱却ができるかもしれません。


では、なぜブロックチェーンで作る新たなエコシステムが超大企業の市場独占やそれらが提供するサービスへの依存脱却の鍵となるのかを説明します。

それを説明するためには、なぜ我々がAmazonやApple、Facebookなどのサービスに依存し、市場を独占させてしまっているのかを理解する必要があります。

答えは簡単で、「便利だから」です。

例えば、ユーザはAmazonで買い物をしたり、映画を見たり、音楽を聞いた離する事が1つアカウントを作ればできるようになり、決済情報などの個人情報も各サービスで共有しているため何度も入力する手間を省けます。

さらには、買い物履歴や映画閲覧履歴などの利用データが彼らのシステムに蓄積することによって、それらの情報や類似のユーザの情報を解析する事ができ、ユーザの趣味・嗜好にあった欲する「情報」へ簡単にたどり着けるようなサービスを提供しているため、よりユーザの心を掴んでいるのです。

このため、今後彼らが多少値上げしたり、粗悪なサービスを提供したとしてもこうした「便利さ」から抜け出す事ができなくなってしまい、他の優良なサービスを淘汰してしまうのです。

しかし、そんな彼らにも唯一の弱点があります。
それは、自分たちだけでそれらのサービスやデータを管理しているという事です。

最近でもFacebookやAmazonで個人情報を流出させてしまうセキュリティ事故を起こして世間をにぎわせていますが、これがまさにユーザにとって最大のリスクなのです。

データは各企業によって集中管理されているため、悪意を持った従業員がデータを改ざんされてしまったり、ハッキングやシステムのバグによって個人情報が流出してしまうなどのリスクがあります。

また、中国のようにAlipayやWechatPayの決済情報でその人の信用をスコアリングする「芝麻(ごま)信用」などのように、サービスに依存してしまうと利用者が意図しない方向へ個人情報が利用されてしまう可能性もあります。

このやり方については基本的人権や倫理観の問題であるため、単純に良し悪しを判断する事はできませんが、少なくとも人の信用を左右するデータが一つの企業によって管理され、盗まれたり改ざんされたりしてしまう可能性があるということは問題です。

しかし、ブロックチェーンを活用したエコシステムによってデータが管理されていた場合には、悪意のあるデータの改ざんやハッキングによる情報漏洩が防げ、1社による独占的なデータの管理からも脱却できるためデータの悪用もできなくなります。

また、ブロックチェーンの技術では第三者を介さない契約が可能なため、Apple Storeでゲームを販売したときに売り上げの30%をAppleへ手数料として取られたり、メルカリのようにサービスを使っただけで手数料として10%も取られてしまうようなこともなくなります。

こうしたブロックチェーン技術を活用した安全で安価なサービスが生まれることによって大企業の市場独占を破壊する事ができるのです。

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